浅井久仁臣 『今日の中東』

1971年のパレスチナ初取材から、30有余年中近東を見続けてきたジャーナリストが独自の視点をお届けします。

「イスラエルはドイツかオーストリアに移せ」イラン大統領

2005年12月09日 | Weblog
 イランのアフマディネジャド大統領は就任以来、過激発言で欧米社会に波紋を起こしていますが、8日、サウディ・アラビアのメッカで開催中のイスラム諸国会議に出席した後、またまた「問題発言」をしました。
 発言は、イランの国営衛星テレビ局に対して行なったものでしたが、最近の注目度の高さの表れでしょう。欧米やイスラエルからすぐに異論が唱えられました。
 同大統領は、これまでにも何度かイスラエルの建国の矛盾に言及して欧米の反発を買っていますが、今回さらにそれをヴァージョン・アップした感があります。「ユダヤ人が迫害されたからといってなぜその代償をパレスチナ人が払う必要があるのか」と、第二次世界大戦でナチス・ドイツに大量虐殺されたユダヤ人とその後に建国されたイスラエルの歴史に触れ、「だったら、(虐殺に手を下した)ドイツとオーストリアが1つ2つの州を提供してそこにイスラエルを移せば全てがうまく行く」と提案したのです
 この「イスラエル建国の矛盾」は、欧米では「理屈では分かっていても現実問題としては仕方のないこと」とされてきたことです。だから一連の同大統領の「イスラエル発言」はまともに取り合いたくない問題なのです。
 発言に対して、名前を挙げられたドイツとオーストリア両国政府は、発言を、「核開発問題に関わる国際的な批判をかわすことを狙いとしている」と批判しました。また、イスラエルの外務省報道官は、「(大統領の)これらの常軌を逸した発言が、イラン政府に幻想を抱いている人たちへの警鐘となるよう希望する」と述べています。
 いずれにしても、これからパワーアップすることはあっても低下することは考えられないイスラームのこの「大義(第三の聖地エルサレムを取り返すことはイスラーム教徒の役目)」への思いは、欧米諸国が矛盾点を「臭い物にふた」の状態に放置すれば、やがては今まで以上の対立を生み、軍事的衝突を招くことになるでしょう。

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