浅井久仁臣 私の視点「第二次湾岸戦争」

ブッシュ政権が始めたイラク戦争は、ブッシュ・シニアが仕掛けた『湾岸戦争』の完結編になる予定でした。しかし、その結末は…

撤退か残存か 悩む在イラクのNGO

2004年09月09日 | Weblog
 イラクで活動中の人道援助団体のスタッフ達4人が拉致された事件は、私にとっても大きな衝撃です。この人たちを拉致した武装グループは、血迷っているとしか思えません。一部の評論で、高遠さんや今井さんの例を引いて、同列に置く見方もありますが、二つのケースには、大きな違いが見られます。
 それは、4人の拉致が所属する事務所で行われたということです。日本人2人の場合は、「ヤバニ(日本人)」であれば、誰でもいいというところがありました。そして、野外で拉致されました。ところが、今回は、「バグダッドへの架け橋」という関係者であれば誰でも知っているNGOの事務所で襲われたのです。
 これは、明らかに、反米活動が「新たな展開」を迎えたと取るべきでしょう。これまでは、現地で活動する外国人平和活動家の所属する団体の姿勢、活動家個人の考え方や住民への視線といったものが、反米勢力側にも考慮されていました。宗教や人種の違いがあっても、「人道主義」がある種の信頼関係を保っていたように思います。しかし、今回の事件は、そういった「あいまい」な関係は一切関係なし、「敵国イタリア」の国民は敵、といった頑迷な姿勢が感じられます。
 昨夜お伝えした「バグダッドにいる全てのNGOは撤退」との情報は、NGOのまとめ役の情報でしたが、今朝になって、国境なき医師団に問い合わせたところ、今後も変わらず救援活動は続けて行くとの返事でした。国境なき医師団は、イラクで100人近くのスタッフを抱えていますが、そのほとんどはイラク人とのことで、外国人スタッフは数名だそうです。また、アルジャズィーラTVによると、拉致されたうちの1人が所属するイタリアの「INTERSOS」の事務局長などが撤退せずに活動を続けるとの意思表示をしたとのことです。
 彼らの勇気と粘りには頭が下がりますが、ここは現地スタッフに頼っていったん引き揚げて状況を見極めた方がいいように思いますね。かつて、レバノンでは同じような状況で多くの人道援助団体のスタッフが犠牲になりましたから。
 イタリア政府は8日、「二人の救出のためなら、軍隊の撤退以外なら何でもする用意がある」と、先日の伊人記者2人の殺害事件で懲りたらしく、ベルルスコーニ首相が珍しく弱気な発言をしていました。前回のてつを踏むことなく、無事4人が救出されることを願って止みません。
 読者の皆さんの周りにいるNGO関係者で、近くイラク入りを考えている方がおられたら考え直すようにお伝え下さい。高遠さんや今井さんたちが誘拐された時期よりさらに状況は悪化しています。