マユがうちの店に来たのは1月くらいだったろうか。
第一印象は「派手なファッション、太め、肌荒れ、病的なハイテンション」
そして風俗歴4年のベテラン。
素人がウリのうちの店では、『いかにも』な彼女は明らかに浮いていた。
それでもまあ、周りの女の子はつかず離れず打ち解けて軽い馬鹿話をするようになった。
気がつくと待機室は彼女の荷物で埋まっていた。
聞けば、実家が遠くの県なのでなかなか帰れない、いつも待機室で泊まりなんだそうだ。
マユはよく得意げに周りに言った。
「あたし、うつ持ちで、分裂病質性人格障害で、不眠症で、過食嘔吐で、自傷癖持ちだから!」
自分の戦歴を自慢するように楽しげに言っていた。
思えばこの時から関わらなければ良かったのかもしれないが。
マユの両腕にはひじを越えるほどの灰色の傷跡が何十と走っていた。
マユは常に、十袋近い白い薬の紙袋を手にしていた。
わたしは嫌な予感がして、聞いた。
「そんなに飲んでるんだ」
「うん!リタリンとかね!すごく元気になるよ!」
嫌な予感が当たった。わたしは胸が黒くズキリとした。
リタリン。
中枢神経興奮剤。使用によって爽快感や多幸感が得られる場合があり、また、離脱作用として、やめるとパニック状態や中等度または重度のうつ状態をひきおこすことから、乱用依存につながる原因になっている。乱用によって覚せい剤乱用と同様の幻覚妄想などの副作用をひきおこす。
薬理作用からは覚せい剤、アンフェタミン類に分類されるが、医療薬として処方される薬物であり、法律上も覚せい剤ではなく、向精神薬として扱われる。ただし向精神薬として認めているのは日本のみ。
二度と聞きたくない単語だった。また聞かされるとは思ってもいなかった。
過去、この薬物で、わたしは三人もの近しい人間が廃人にされかけたのだ。
「…!いますぐやめなさい!」
わたしは彼女の横っ面を引っぱたいていた。
軽い衝撃だったが室内に良く響いた。
「もうわたしはコレで廃人になっていく人間は見たくない!」
普段大人しいわたしの豹変振りに待機室が無言になった。
驚いて声も出ない彼女を尻目にわたしは問答無用で薬袋を取りあげた。
マユにインターネット等でリタリンの悪影響、自分の目で見てきた副作用を説明すること数時間。
「ありみちゃーん仕事だよ~」
「じゃあ、もう飲んじゃ駄目だよ!」「うん………約束する」
わたしはリタリンの薬袋全部を待機室のゴミ箱に突っ込んで出かけた。
わたしが仕事から戻ると、マユは居なくなっていた。
「マユは?」「友達のところに行くって」「そう…」
「…ありみちゃん、アイツ、何言っても無駄だよ。さっきゴミ箱からリタリン漁ってまた持っていったもん」
嬉しくはないが、予想の範疇だった。何せ「合法覚醒剤」なのだから。
マユにメール。
「リタリン、ゴミ箱から持っていったの知ってるよ。約束破ったね、かなしいよ」
すぐに返信。
「ごめんなさい、だってリタリンないと、ウツになるもん。マユ、仕事できないよ」
過去にも何度も聞かされたセリフだった。
予想の範疇なのに、わたしはまたズキリとした。
つづく。
参考ページ:リタリン乱用について
第一印象は「派手なファッション、太め、肌荒れ、病的なハイテンション」
そして風俗歴4年のベテラン。
素人がウリのうちの店では、『いかにも』な彼女は明らかに浮いていた。
それでもまあ、周りの女の子はつかず離れず打ち解けて軽い馬鹿話をするようになった。
気がつくと待機室は彼女の荷物で埋まっていた。
聞けば、実家が遠くの県なのでなかなか帰れない、いつも待機室で泊まりなんだそうだ。
マユはよく得意げに周りに言った。
「あたし、うつ持ちで、分裂病質性人格障害で、不眠症で、過食嘔吐で、自傷癖持ちだから!」
自分の戦歴を自慢するように楽しげに言っていた。
思えばこの時から関わらなければ良かったのかもしれないが。
マユの両腕にはひじを越えるほどの灰色の傷跡が何十と走っていた。
マユは常に、十袋近い白い薬の紙袋を手にしていた。
わたしは嫌な予感がして、聞いた。
「そんなに飲んでるんだ」
「うん!リタリンとかね!すごく元気になるよ!」
嫌な予感が当たった。わたしは胸が黒くズキリとした。
リタリン。
中枢神経興奮剤。使用によって爽快感や多幸感が得られる場合があり、また、離脱作用として、やめるとパニック状態や中等度または重度のうつ状態をひきおこすことから、乱用依存につながる原因になっている。乱用によって覚せい剤乱用と同様の幻覚妄想などの副作用をひきおこす。
薬理作用からは覚せい剤、アンフェタミン類に分類されるが、医療薬として処方される薬物であり、法律上も覚せい剤ではなく、向精神薬として扱われる。ただし向精神薬として認めているのは日本のみ。
二度と聞きたくない単語だった。また聞かされるとは思ってもいなかった。
過去、この薬物で、わたしは三人もの近しい人間が廃人にされかけたのだ。
「…!いますぐやめなさい!」
わたしは彼女の横っ面を引っぱたいていた。
軽い衝撃だったが室内に良く響いた。
「もうわたしはコレで廃人になっていく人間は見たくない!」
普段大人しいわたしの豹変振りに待機室が無言になった。
驚いて声も出ない彼女を尻目にわたしは問答無用で薬袋を取りあげた。
マユにインターネット等でリタリンの悪影響、自分の目で見てきた副作用を説明すること数時間。
「ありみちゃーん仕事だよ~」
「じゃあ、もう飲んじゃ駄目だよ!」「うん………約束する」
わたしはリタリンの薬袋全部を待機室のゴミ箱に突っ込んで出かけた。
わたしが仕事から戻ると、マユは居なくなっていた。
「マユは?」「友達のところに行くって」「そう…」
「…ありみちゃん、アイツ、何言っても無駄だよ。さっきゴミ箱からリタリン漁ってまた持っていったもん」
嬉しくはないが、予想の範疇だった。何せ「合法覚醒剤」なのだから。
マユにメール。
「リタリン、ゴミ箱から持っていったの知ってるよ。約束破ったね、かなしいよ」
すぐに返信。
「ごめんなさい、だってリタリンないと、ウツになるもん。マユ、仕事できないよ」
過去にも何度も聞かされたセリフだった。
予想の範疇なのに、わたしはまたズキリとした。
つづく。
参考ページ:リタリン乱用について
続きがとても気になります。
実は、友達に軽うつと摂食障害とアルコール依存症の一歩手前になったコがいます。
リスカもしていて何度、怒ったことか…。
病院へ行き始めた頃から彼女は変わっていきました。
妙にテンションが高くなり、飲み会へ行けば男の人に媚を売ったり、女友達には自分の自慢話ばかり。
調子がいいかと思えば、いきなり引きこもりになって連絡が取れなくなり、約束をすっぽかされたり。
今思うと「リタリン」を服用していたかのかな…と。
その後、彼女は躁うつ病の彼と結婚しました。
友達としては少し不安でしたが、その彼が一番、親身になって、症状がヒドイ時を支えてくれたのだそうです。
そして今朝、彼女は男のコを無事出産しました。
彼女がもう二度と薬を服用せず、ずっと幸せに暮らしてくれることを願うばかりです。
(※初めてなのに、私事をいきなり長文でコメントしてしまいゴメンなさい!)
私も過去に自傷をしたことがあります。今でも大きな不安で眠れない時があり、正直「なにかいい薬でもなきゃやってられない」なんて考えてしまいます。
だからマユさんのことも人事には思えませんでした。薬って本当にコワイんですね。
maroさん>
お友達…たしかにそれは、リタリンもしくは近い効能の薬を服用していた可能性が高いですね…。でも、病を克服してのご出産おめでとうございます。私も(面識はありませんが)心から彼女のとそのご家族の幸せ、ご健康をお祈りしたいです。
しぃもぁさん>
私も現在神経性にかかり、安定剤を服用しています…神経科の薬は、一歩間違えれば本当に毒(麻薬)になります。でも、辛いときはちゃんとお話を聞いてくれる先生のいる、病院に行った方がいいですよ。今は安全で良いお薬もありますし…軽い睡眠導入役と安定剤等からはじめれば、大丈夫だと思います。「UTU-NET」などを是非一度ごらんになって下さい。