AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

耳鳴治療と舌咽神経ブロック針

2006-03-15 | 耳鼻咽喉科症状

1.浅野周先生の耳鳴り治療
 私は長年、耳鳴の鍼灸治療をしてきたが、効果あった例は殆どなかった。しかし浅野周先生の「北京堂」ホームページ記載の方法を応用して追試してみると、たしかに効果が出て非常に驚いた。浅野先生には敬意を表したい。
 私の以前の方法と、浅野先生の治療の違いは、主に次の2点であった。
 a.浅野→40分間(短くとも20分)置針
   私 →せいぜい10分間程度の置針(ときにパルス併用)
 b.浅野→項針(翳風、風池、完骨)への刺針は、しっかりと耳の中にズシンと響かせる。
   私 →響きには無頓着

2.私の耳鳴治療
 とりあえず耳介周囲(聴会、角孫、翳風など)に寸6#2の針で6~10本、20分間置針した。これで耳鳴はかなり改善する。ただし耳中に響かすという方法がよくわからかった。ある日、柳谷素霊の「秘法一本鍼伝書」を調べてみると、耳鳴には、下歯痛と同じ治療で、頬車を使うと記載されていた。「下歯痛に対する場合はそのように刺入し、この時もし耳中に響いた場合には針先を下方に向ける」とある。これですっかり謎が解けた。

 下歯に響くのは、下歯槽神経を刺激した結果であり、耳中に響くのは舌咽神経を刺激した結果である。下歯に響かすのが目的ならば、頬車穴から下顎骨の内側の縁に沿って針を進めればよいであろう。しかし頬車から耳中に響かすのは解剖学上は難しく、その2~3㎝耳垂に向かった部から直刺深刺することで舌咽神経を刺激可能なのである。舌咽神経に針を当てるには、私考案の下耳痕穴(筆者命名、奇穴の耳痕の5ミリ下方にある)を使用するのがよく、ペインクリニック本の通りやっても、うまくいかない。

 下耳痕穴は、耳垂が頬に付着しているその接合線の中央にとる。刺針は耳垂の前からでも後からでもよい。直刺1㎝で顔面神経幹に命中し、ここにパルス刺激を与えると顔面表情筋全体が攣縮する。問題の下咽神経はその深部にあり、2㎝深刺で刺針転向法により耳中に針響を与えることができる。舌咽神経は本来的には中咽頭知覚を支配するが、その枝の鼓室神経は中耳~鼓膜の知覚を支配している。すなわち耳中に響くというのは、中耳~鼓膜に響かせるということなのである。
 このことを知った後、私の耳鳴治療時の使用穴は下耳痕穴を中心とした少数穴への20分間置針へと変化した。




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