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月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

京都・嵯峨野の夏緑を追いかけて。

2014-09-07 00:21:39 | どこかへ行きたい(日本)
夏の想い出(その1)


またまた雨が降る週末となった。
先ほど、宝塚の図書館へ車で行って、TSUTAYAでビデオを借り、
カフェで珈琲を飲みながら、借りてきた本を読む。
それにしても、9月は、人恋しい季節だ。

車に乗って走っている最中も、
ヘッドホンをしてウォーキングしている最中も、
人恋しい感情が湧いてきて、離れてくれない。
机にいたらいたで、夏の旅のことなどをふつふつ思いだし、
原稿がちっとも進まない。しまいに大焦り、大慌てで仕上げる始末…。

それにしても涼しいなぁ~。あまりの過ごし良さにぼんやりとしてしまう。
さあ、少しづつシリーズで夏の想い出を書いてみることにいたします。

集中豪雨が続いた夏の後半。
ゆく夏を惜しんで、京都嵯峨野の夏みどりを愉しんできました。
夏の太陽の下で輝く夏の楓を随分前から見たかったのですが、
いよいよ決行である。

渡月橋からみる黄土色の河は、タイでみたチャオプラヤー川を思わせる、どーどーと大量の川の水。
もう少しで橋を乗り越えそうな勢い。生き物みたいに。
こんな力強い川の流れを始めてみた気がした。
ここはアジア!と改めて思う。


阪急の嵐山駅から、渡月橋をわたって、周囲をみながらテクテク歩いて、
まず向かったのは和菓子の老舗「老松」。


カンカンの暑さだったので、しばし休憩して計画をたてる。

小さいながら品のいい店で、散策前の立ち寄りには絶好の場所だ。
ここの「夏柑糖」(夏みかんと本葛でつくる涼味)が好きで
梅雨が終わると毎年のように食べたくなるのだが…。この日は、夫婦連れの客、それか中年のグループが多い。
ほとんどの人が名物の「わらび餅」か、夏柑糖」のグレープフルーツバージョンの「晩柑」をオーダーしている。

私は、「みつ豆」。連れは名物の「わらび餅」。






コリコリッとした固めの寒天。
求肥はもっちもち。
蜜は甘くはなく爽やか。お豆も歯ごたえを残して固めに仕上げた、実に和菓子屋さんらしい、上品なみつ豆だった。



それから一気に大覚寺まで行く。




ここは嵯峨御所といわれるだけあって、
静かで趣のある寺院。
なにが好きかって、寺を支えている躯体の存在感。それに村雨の廊下から見える寺院の小さな庭がきれい。
黒光りするほどに磨かれた廊下、黒くうねった華奢な柱、深い庇。
何度ここを訪れただろうか。









歩くたびに廊下の床は「キィキィッ!」鳴いて
そして、舞台装置さながらに美しいみどりを沢山、見せてくれる。松の緑、明るい苔の緑、桜の葉…遠くには夏の山々。
掃き揃えられた玉砂利の広縁。

寝殿、御影堂、正寝殿を見て歩き、襖絵を丁寧に見て、
うぐいす張りの廊下を、1歩1歩、味わうようにして渡っていくうちに汗がひいて、静かな心情になっていく。







夏の寺院はやっぱり壮大だ。
趣のある古木と眩しい太陽、そして鮮やかな明度の高い緑。
とても、とても上等なものを間近でみるような緊張感がある。

この日は、大沢池が見渡せる舞台で、「茅の輪くぐり」をしていた。
京都ほか近隣の方ならご存じのとおり、茅の輪をくぐるこによって、半年間の汚れを祓い清めて無病息災等を祈願するもの。

池のほとりにいるだけで、なめらかな風が頬をなでる。気持ちいい!
京都の夏なのだな、、、としみじみ思う。全身で木々の色を感じる。








それから、歩いて25分という祇王寺へ…。
この日は、タクシーを使った。

祇王寺は、竹林に囲まれた参道と、苔庭、草庵、吉野窓など。
こぢんまりとしたなかに見どころの多い寺だ。

いつも思うのだが、まず迎え入れてくれる寺門までのアプローチがとても好き。








一面ふっかふかの苔の庭には、まだ新芽のものもある。
小さな葉を擦り合わせてサラサラと揺らす楓、楓、楓…。夏はもみじではなく楓と呼びたい。
この青々とした楓が覆い被さってくるように自分の存在を包んでくれている。
まるで小宇宙だ。
しかし、こんなにめまいがしそうな美しい光景のなかにいるのに、
孤独、、、寂しさの空気が充満していて、胸が締め付けられて痛くなってくる。そんな不思議な草庵である。

祇王の哀しみが、この地と草の1本1本に沁みているようだ。

このゆかりの寺。
『平家物語』にも登場し、平清盛の寵愛を受けた祇王が清盛の心変わりにより都を追われるように去り、母と妹とともに出家、入寺した悲恋の尼寺。

嵯峨野全体が、こういった伝説を残す地なのであるが。ここをキャッキャッといいながら歩く気には私はなれない…。

どうしても明るい気持ちになれない時、
ただ無心に1人静かに
自然の風景を対峙したい時には、
野趣あふれる田舎っぽい空気が漂う嵯峨野(平日、閑散期)が良いのかもしれないと思う。









それからテクテクと、
祇王寺から、あだし野の念仏寺まで歩く。
ますます寂しい小道が続く。山が近くなる。濃い森の緑が近くなる。
山と野の、素朴な匂いに癒される。

帰り際に瀬戸内寂聴さんがいらっしゃる寂庵も少しのぞかせていただいた。瀬戸内と大きな文字で書かれていた表札が印象的だった。
もちろん、中には入れなかったが帰り畑の庭や茅葺き屋根の農家をみながら小道を歩いている時、






風に流れて、とても美しいクラシック音楽が聞こえてきた。
オペラ?
なんだか、寂聴さんが聴いていらっしゃるのではないかしら、と1人勝手に想像をめぐらせる。



それから。本当はお土産など買うつもりはなかったのに、
小さな窯元があったので、日本酒をつぐ杯をひとつ買った。
外側は金色にも似た土の色、内が瑠璃の杯になっている。

夜は、念願の廣川でうなぎ料理。
これまで3度も予約したのに、いずれも席を確保できなかった店だ。
この日も5時50分頃~8時近くまで待ってようやく入店できた。





(京都ごはん、へ続く)



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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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秋のイイネ! (しろくま)
2014-09-07 13:08:21
秋…急に涼しくなりましたね~
私のところでも虫の音楽家たちがさて何か練習でもしているのか?
昼夜問わずいろいろと奏でております。
昼間、影も長くなって同じ風景でもなんとなくちがって見えてくるよう…
日の入りも早いからなのか、なんとなく秋は寂しい感じがしますね。でも好きな季節です。
京都の寺院や庭園落ち着きますね…
歩くっていいネ!
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旅の記憶! (アンデル)
2014-09-11 22:54:51
最近、蝉は少なくなりました。
今は秋の虫が心地よい。昨日は、うちの地域で植林の消毒の日で、虫たちがだいぶご臨終したと思うと、
胸が痛くなりました。
京都や奈良を散策するのに、ホントにいい季節ですよね。デスクの前で原稿を書いていても、心は飛んでいってしまう時があるわ。
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