心が満ちる山歩き

美しい自然と、健康な身体に感謝。2019年に日本百名山を完登しました。登山と、時にはクラシック音楽や旅行のことも。

北緯45度の島の頂点へ 利尻山(3)

2017年12月10日 | 北海道の山


利尻山(1,721m) (つづき)


 ぎりぎり午前中に山頂まで到達することができました。当たり前ですが、登り切った!という気持ちです。
 頂上はほとんど雲に覆われ、時々切れて青空がのぞき、日本海が広がっているのが見えました。ここにいられるだけで満足でした。オーバーに言うと、今この時間だけでも利尻島の人になれたという気がするほどです。
 利尻山は、北峰・南峰2つのピークがあります。南峰の方が2m高いのですが、登山道は北峰までで、南峰への道は崩れて歩くことができません。北峰から見た南峰はすぐそこで、簡単に歩けそうな感じがしますが、行くことはできません。


 利尻山は個性的な山で、北海道の、いや日本中のほかのどの山にもない雰囲気を持っていますが、唯一比肩し得るとすればそれは屋久島の山々でしょう。日本百名山は、利尻島の利尻山から始まり、屋久島の宮之浦岳で終わるのです。百名山の中ではこの二座以外に、離島にそびえる山はありません。屋久島の面積は504.88㎢、利尻島(182.11㎢)の3倍近くありますが、利尻島が屋久島より小さいとは感じませんでした。しかし違う点があります。宮之浦岳に登った時は、島にいることを忘れてしまうほどの大きな眺望がありましたが、利尻山にはそういうことがなく、そのうえウニの漁の合図やフェリーの汽笛が聞こえてきたりして、自分が利尻島にいることをずっと実感することができたことです。



 山頂で眺望がほとんどなかったのは残念ですが、それは次の機会にとっておきたいと思います。長い人生、あと2回は登るチャンスがあるでしょう。先週利尻山に登ったばかりという人もいました。夏休みに北海道登山を企画し、まずここ利尻に登った後芦別岳などいくつかの山をめぐり、最後にもう一度利尻に来たということに驚きました。それだけのものがこの山にはあります。
 今日は海外から登りに来ている人と何回か出会いました。日本在住の人もいたかもしれませんが、登山のために日本へやってきたという人もいました。海外から、利尻が選ばれて登られているのですから、東京から利尻まで遠いなどと言っていられません。


 世界各地の旅行ガイドを出版しているLonely Planet社という会社がありますが、”Japan”も出ており、そこでは利尻山が40行以上にわたって紹介されています。この本のほとんどは説明文で占められており、広告はなく、よくある写真だらけの日本の旅行案内書よりもよほど詳しいです。そこでは、

 Rishiri-zan is also known as Rishiri-Fuji as its solitary and perfect cone resembles famous Fuji-san. The hike to the top can be incredibly rewarding, with amazing views of Rebun-to and even Sakhalin, but requires serious fitness.
(『lonely planet/Japan』(Lonely Planet Global Limited)Rebecca Milner著・619ページより)

 という、”利尻富士”にかけた説明から始まります。利尻山は、富士山よりずっと厳しい山で、famous Fuji-sanにresemble(似ている)ところばかりだとは思わなかったです。しかし、利尻を知らない人にとってイメージはしやすいでしょう。そして、頂上へ歩くにはserious fitnessが必要だということです。重みのある言葉ですが、この日海外から利尻に登りにきた人たちはserious fitnessの持ち主ばかりでした。例えば、9合目を少し下ったところで会ったニュージーランドの人はそのまま山頂へ向かい、下りは7合目で早くも追い抜かされました。とても大きな山だった、北海道の陽射しはとてもきつい、というような話をしました。お互い充実感に満ちあふれていて、とてもいい時間だったと思います。
 このガイドでは、利尻山の南峰には安全上の理由から行けないこと、また8合目と9合目の間の”unstaffed emergency shelter"以外には施設がないこと・最低2リットルの水を携行することが薦められること・” 'mobile restroom' kit(¥400)”の購入が必要なこと、など、実用的な説明まで盛り込まれており、登山の専門書ではない旅行ガイドにしては十分すぎるほどです。利尻山には確かに管理人のいない避難小屋があるものの、その造りは立派で、扉を開くと”emergency shelter"にしては立派だと思う人が多いのではないでしょうか。

 
 午後遅くなるにつれ、青空が増えてきました。しかし、山頂だけは雲に覆われたままでした。今日もう一つ見逃したものがあります。それは”Sakhalin”です。14年も前、宗谷岬から見えて感動したサハリン島の眺望を求めて、絶対にもう一度利尻山に登りたいです。
 5合目からさらに下り、樹林帯に下るとリスに出会いました。彼らはとてもすばしっこく、あっと言う間に登山道を横切っていきます。利尻島のリスのことは、詳細なことはよく分かっていないと聞きました。ここには、北海道にはよくいるクマもシカもいません。


 (登頂:2017年8月上旬) (つづく)



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