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石洞美術館『館蔵 漆器展-根来と漆絵- 同時開催:ブータンの漆器』 サイト
※8月4日(日)まで
以前、ある女性の塗師さんにお話を伺ったことがある。
その中で「梅雨の時季が一番作業がしやすい」と仰っていたことが印象深く心に残っている。
ジメジメした湿気のおかげで漆の乾きがとてもいいのだとか。
湿気ているのに、乾く?でも、ウルシは樹液だから。
と、わからないなりに一生懸命理解しようと頭を働かせていた。
そのせいか、梅雨の頃に漆器を鑑賞すると、漆器も心なしか調子がいい。。。というかより美しく見える、ような~
気がする。
そのことを考えながら、堀切菖蒲園からの帰り、上野側へ2駅先の千住大橋で下車。
駅前の再開発中の住宅地と2棟並んだ六角形の建物を見上げる。
まずはブータンの漆器から。
実は私自身、幾つか持っている。
11年前に旅行した折り、「見立てに使えないかな」と思って購入したのだ。
結局、使わずに戸棚にしまったままだけど![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0162.gif)
素朴で単純な一度塗り。
胎となる樹木も日本にはない種類なのか、日本のものとは全く異質な物。
主にバター入れだったり、農作業に使うものだったり、あるいは仏教儀式関係だったり。
年代も20世紀のものから現代のものまでとごくごく最近のもの。
外にも織物(女性用の衣服であるキラ)や竹籠もあり。
私は旅行した経験から現地を思い浮かべて鑑賞できるけど、
現地の、とくに漆器を使っている写真を添えて展示すればわかりやすいだろうに、と思った。
自宅に眠っているブータン漆器を実際に使ってみようかな、という気にもなった。
*
螺旋状のスロープを昇りながら、日本の漆器をみる。
こちらは時代古く、室町時代のものから桃山時代を経て、江戸時代のもの多し。
いずれも生活の中でかなり使いこまれたもの。
江戸時代のものは中心に絵替で草花の漆絵が施された折敷。
一枚一枚、独立の展示ケースに納まっている。
まるで紙芝居を見ているような印象。(といっても、連続性はないんだけど)
こちらは折角の漆絵が剥げ落ちてくらいに使い込まれている。
使っていたのは、おそらく裕福な商家の人々、それとも吉原とか島原の遊郭の料亭料理か。
どんな生活空間だったのだろうかと想像しつつ、
逆によく廃棄されずに現代まで残ったものだと感動。
使い込まれたという天では室町時代から桃山時代にかけての朱塗漆器もすごかった。
朱塗りなんだけど、使いすぎて朱の部分が剥げて下地の黒漆が出ちゃっている。
つまり、自然に根来塗になったもの。
現代では村瀬治兵衛さんが文様としてわざとこすって黒漆を出して根来塗にしているけれど、
ホンモノの根来は“景色”じゃないから、とかく凄まじい。
中心が痛々しいくらいに黒漆が出ちゃったお盆とかね。
おそらく、日本各地の寺院から出た漆器類なんだろうけど、修業の厳しさが垣間見れた。
朱塗りの四重椀も興味深い。
重ねてコンパクトに納まるようになっている。
これも僧侶の食器だったのだろう。
四つとも上を向けて、料理を盛るもよし、小さい2つを大きい2つの蓋として用いるもよし。
椀の深さはいずれも平たい。
だけど、現代の懐石道具の黒塗り四つ椀の原型はコレなのだろうな。
懐石道具という点でいうと、折敷もそうだし煮物碗にあたる「一の椀」もあった。
桃山時代の秀衝椀。桐文と竹文。
形も文様も現代のものとほぼ一緒。
へぇー。数百年も変わることのないフォルムなのかぁ。。。とこれまた感動。
あとね、桜花文散螺鈿椀~つまり明月椀もあった。もちろん桃山時代。
螺鈿の技術は鎌倉時代からあったのだろうけど、
日常の食器に用いられたのがおそらく信長・秀吉時代の頃からなのだろうなぁ。
あの2人の派手趣味はやはり画期的かつ大きな変革をもたらしていたノダ。
江戸時代の富裕層が用いていたであろう華麗な蒔絵の漆器もよかった。
扇面散蒔絵太鼓重。
四つに区切られている弁当箱(変わり重箱)。一番上はお酒を入れていたらしい。
秋草蒔絵螺鈿火鉢は保存状態も超およろしく![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0139.gif)
「本当に使っていたのかなぁ」と背伸びして内側を覗き込んだら、確かに使っていた形跡あり。
でも外側は本当に美しい秋の七草。
桔梗の花弁が螺鈿細工でキラキラ![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0150.gif)
どんな人がこの上に手をかざして暖をとっていたのだろうか。
あっと、忘れちゃいけない茶道具。
黒漆中棗(桃山~江戸時代)。 「篠井秀次作」。
塗師の秀次の苗字って「篠井」だったんだぁ。。。苗字ががあったんだぁ![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0144.gif)
と、妙なところに感動。
鈴虫蒔絵棗は江戸時代。谷庄さんで見かけそうな感じ。
独楽中次は意外にも「明~清時代」。唐物なんだぁ。
唐物の漆器もいくつか。
堆朱や堆黒、屈輪(←「倶利」と書くよりわかりやすい
と気がついた)
最後に古い漆器を用いた取り合わせ。
仁阿弥道八の狸香合がカワイイ。
茶道具展ではないので、夏の展覧会リストには入れなかったけど、
まぁ、参考にはなるかな。
個人的には漆器が好きなので、けっこー楽しめた。
※前回の石洞美術館の訪問記→2010年2月
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※8月4日(日)まで
以前、ある女性の塗師さんにお話を伺ったことがある。
その中で「梅雨の時季が一番作業がしやすい」と仰っていたことが印象深く心に残っている。
ジメジメした湿気のおかげで漆の乾きがとてもいいのだとか。
湿気ているのに、乾く?でも、ウルシは樹液だから。
と、わからないなりに一生懸命理解しようと頭を働かせていた。
そのせいか、梅雨の頃に漆器を鑑賞すると、漆器も心なしか調子がいい。。。というかより美しく見える、ような~
気がする。
そのことを考えながら、堀切菖蒲園からの帰り、上野側へ2駅先の千住大橋で下車。
駅前の再開発中の住宅地と2棟並んだ六角形の建物を見上げる。
まずはブータンの漆器から。
実は私自身、幾つか持っている。
11年前に旅行した折り、「見立てに使えないかな」と思って購入したのだ。
結局、使わずに戸棚にしまったままだけど
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0162.gif)
素朴で単純な一度塗り。
胎となる樹木も日本にはない種類なのか、日本のものとは全く異質な物。
主にバター入れだったり、農作業に使うものだったり、あるいは仏教儀式関係だったり。
年代も20世紀のものから現代のものまでとごくごく最近のもの。
外にも織物(女性用の衣服であるキラ)や竹籠もあり。
私は旅行した経験から現地を思い浮かべて鑑賞できるけど、
現地の、とくに漆器を使っている写真を添えて展示すればわかりやすいだろうに、と思った。
自宅に眠っているブータン漆器を実際に使ってみようかな、という気にもなった。
*
螺旋状のスロープを昇りながら、日本の漆器をみる。
こちらは時代古く、室町時代のものから桃山時代を経て、江戸時代のもの多し。
いずれも生活の中でかなり使いこまれたもの。
江戸時代のものは中心に絵替で草花の漆絵が施された折敷。
一枚一枚、独立の展示ケースに納まっている。
まるで紙芝居を見ているような印象。(といっても、連続性はないんだけど)
こちらは折角の漆絵が剥げ落ちてくらいに使い込まれている。
使っていたのは、おそらく裕福な商家の人々、それとも吉原とか島原の遊郭の料亭料理か。
どんな生活空間だったのだろうかと想像しつつ、
逆によく廃棄されずに現代まで残ったものだと感動。
使い込まれたという天では室町時代から桃山時代にかけての朱塗漆器もすごかった。
朱塗りなんだけど、使いすぎて朱の部分が剥げて下地の黒漆が出ちゃっている。
つまり、自然に根来塗になったもの。
現代では村瀬治兵衛さんが文様としてわざとこすって黒漆を出して根来塗にしているけれど、
ホンモノの根来は“景色”じゃないから、とかく凄まじい。
中心が痛々しいくらいに黒漆が出ちゃったお盆とかね。
おそらく、日本各地の寺院から出た漆器類なんだろうけど、修業の厳しさが垣間見れた。
朱塗りの四重椀も興味深い。
重ねてコンパクトに納まるようになっている。
これも僧侶の食器だったのだろう。
四つとも上を向けて、料理を盛るもよし、小さい2つを大きい2つの蓋として用いるもよし。
椀の深さはいずれも平たい。
だけど、現代の懐石道具の黒塗り四つ椀の原型はコレなのだろうな。
懐石道具という点でいうと、折敷もそうだし煮物碗にあたる「一の椀」もあった。
桃山時代の秀衝椀。桐文と竹文。
形も文様も現代のものとほぼ一緒。
へぇー。数百年も変わることのないフォルムなのかぁ。。。とこれまた感動。
あとね、桜花文散螺鈿椀~つまり明月椀もあった。もちろん桃山時代。
螺鈿の技術は鎌倉時代からあったのだろうけど、
日常の食器に用いられたのがおそらく信長・秀吉時代の頃からなのだろうなぁ。
あの2人の派手趣味はやはり画期的かつ大きな変革をもたらしていたノダ。
江戸時代の富裕層が用いていたであろう華麗な蒔絵の漆器もよかった。
扇面散蒔絵太鼓重。
四つに区切られている弁当箱(変わり重箱)。一番上はお酒を入れていたらしい。
秋草蒔絵螺鈿火鉢は保存状態も超およろしく
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「本当に使っていたのかなぁ」と背伸びして内側を覗き込んだら、確かに使っていた形跡あり。
でも外側は本当に美しい秋の七草。
桔梗の花弁が螺鈿細工でキラキラ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0150.gif)
どんな人がこの上に手をかざして暖をとっていたのだろうか。
あっと、忘れちゃいけない茶道具。
黒漆中棗(桃山~江戸時代)。 「篠井秀次作」。
塗師の秀次の苗字って「篠井」だったんだぁ。。。苗字ががあったんだぁ
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と、妙なところに感動。
鈴虫蒔絵棗は江戸時代。谷庄さんで見かけそうな感じ。
独楽中次は意外にも「明~清時代」。唐物なんだぁ。
唐物の漆器もいくつか。
堆朱や堆黒、屈輪(←「倶利」と書くよりわかりやすい
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最後に古い漆器を用いた取り合わせ。
仁阿弥道八の狸香合がカワイイ。
茶道具展ではないので、夏の展覧会リストには入れなかったけど、
まぁ、参考にはなるかな。
個人的には漆器が好きなので、けっこー楽しめた。
※前回の石洞美術館の訪問記→2010年2月
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