東海岸 - 音楽、食、犬の娘など

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[おいしいもの] Die Oper kocht: オペラ歌手の料理本

2011-12-30 | おいしいもの

オリジナルのドイツ語版はたしか去年出版、英語版も今年発売されたオペラ歌手の自慢料理本。読まれた方も多いかも。私は自分で買うほど興味はひかれなかったのですが、これはもしかしたら今回一番楽しんでいるクリスマス・プレゼントかもしれません。音楽を楽しむこと、おいしいものを食べること、犬と遊ぶことが私の人生の三大快楽。それぞれ色々苦労もしつつ、あるいはそういう苦労があるからこそそこから得る喜びをより一層嬉しく感じます。そういうわけでブログもそういうタイトルをつけましたが、そういえば食については何も書いたことがありませんでした。もう読んだ方には何を今さらという話なので、是非飛ばしてしてください。



Die Oper kocht、これはどう訳したらいいのかな。kochenは英語のcookなので料理するという意味もありますが、怒りで腹が煮えくり返っている夜の女王の"Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen (復讐の炎は地獄のように我が心に燃え)" のように、食べ物がお鍋でくつくつ煮えている様子も指します。そんなごはんの仕度時は、いい匂いが漂ってきて、出来上がったらおいしいだろうなぁと待ちきれなくなります。そういえば日本語でも食べ物以外の使い方、素材を自分なりに解釈して面白く見せる、というようなときに「料理する」という言い方をすることもありましたっけ。オペラ歌手のお料理本なんてちょっと意外なコンセプトですが、家族やお客さまにおいしいものを食べてもらいたいと一生懸命料理をするのは、観客によりよいものを観てもらおうとプレミア日までにお稽古を重ねるオペラ歌手の普段のイメージとも重なっているので、上手いタイトルだと思います。日本語に訳すとしたら、オペラ調理中とか準備中、とでもなるんでしょうか。

オペラ歌手の食生活もちら見せするこの料理本、面白いです。鉄板焼き(ニール・シコフ)とか焼き魚(ジョセフ・カレハ)とか手巻き寿司(ライナー・トロスト)とか、料理としてはあんまり面白くないものもあるし、まあーったく料理をしないルネ・フレミングなんかはダニエル・ブールーに自分の名前を冠した濃厚チョコレートのディーヴァケーキを作ってもらったりしてます。

食にこだわりのありそうな人たちの料理はやっぱりおいしそう。フェルッチョ・フルネレットがお魚のつけあわせにしたわさびリゾットなんかは使えるかも。

ペルー料理屋に行くと、ピスコサワー片手にセヴィーチェとともに必ずつまむパパ・ア・ラ・ワンカイーナをフアン・ディエゴ・フローレスが紹介していて、あのピリッとした濃厚ソースのベースがクリームチーズだったことをわたしは長年知らないで食べてたのね、とびっくり。



「リッラおばあちゃんのお団子」を紹介したジュゼッペ・フィリアノーティ、「シシリア風ラザーニャ」のマルチェロ・ジョルダーニ、ともにお茄子とハムを使った気取らない家庭料理のおいしさ一杯です。

ヨナス・カウフマンの手作りパスタのかぼちゃソース。自分がこれを作るとしたら、かぼちゃの半分はクリームを少々加えて塩コショウをしてパスタに絡めるかなぁと思いますが、素材そのままの味を大切にしたこの一品は優しいパパの味がしそうです。

実家がレストランだというアンブロージョ・マエストリ。小山のような体形ですが、個人的にはすっかりひいき、東海岸での出番が少ないので残念に思っている人の一人。マエストリのソーセージ入りサフラン風味の「王様のリゾット」もおいしそう。

ルネ・パペの「サクソン人風牛のロースト、ジャガイモのお団子と赤キャベツ添え」なんかは、本格派です。

サイモン・キーンリサイドの「お魚パイ」は似たようなものを私もよく作ります。私が手に入れられる白身魚は日本のもののように身がしまっていなくて食感がぱさぱさしているので、このようにホワイトソースを使ったり、コロッケの身に混ぜたりしないとおいしくないです。私はキーンリサイドのように時間をかけずにちゃっちゃっか作っているので、そうかこれが本格派の作り方なのね、たまにはこんな優雅に作ってみないと、と反省。それにしてもスリムな体形を維持しているキーンリサイド、バレエダンサーの奥様と、サラダとか木の実をかじっているような食生活を送っているのかと思いきや、こんなしっかりとした昔ながらのおそうざいを出してきたのはちょっと意外でした。



うちの娘は基本はドッグ・フードですが、大人になってからは、その日の人間用の料理によっては、作りたてのものをちょっとだけもらえることもあります。うちでは犬にもおすそ分けしたい時にはお魚やお肉を焼く前に塩コショウするのは廃止。人間用にはあとでソースを作ります。豚のローストなんかもハーブとオイル少々のみでお塩は使いません。デボラ・ヴォイトも、ニース風サラダ用にマグロをグリルするのに、息子のようにかわいがっているヨーキーのスタンウェイくんも楽しめるように、塩なしでハーブで下ごしらえ。どこの犬好きも同じようなことしてるんだわ、と笑ってしまいました。とは言え、デビ姐さんはどこかのぐうたらママと違って、スタンウェイくんには毎食手作りごはんを食べさせているそうです。



同じく犬の家族持ちのルカ・ピザローニ。ゴールデンのレニーとダックスフントのトリスタンはツアーの際もいつも一緒だそう。レニーとトリスタンはヨーロッパ内で通用する犬用パスポートをちゃんと持ってるんでしょうね。しかし海外からの動物の入国には地獄のように厳しい日本での公演の時は一体どうするんでしょうか。人ごとながら心配になります。そんなピザローニの、にんにくとローズマリーの香りが効いた、トスカーナ風トマト味のヒヨコマメのスープもおいしそうです。



これは何時間でも飽きないです。洋書屋さんで入手して、オペラ好き・お料理本好き(注)の方にお誕生プレゼントに差し上げると、とおーっても喜ばれるかも。

(注)私には、お料理はめったにしないのにお料理番組を見たり、お料理本を買い集めて読むのが趣味の友達(女性)もおり、お料理好きとお料理本好きは微妙に違う場合もあります(笑)



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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お料理本 (galahad)
2011-12-31 16:42:26
この本のことすっかり忘れておりました。お土産に買ってきてもらおうかしら。
私も凝ったお料理はしないけど、料理本は好きです。読めもせんのにイタリア語のトスカーナ料理の本なども買ったり…。
最近はわんこのご飯も手作りする方が多いんですね。 ルカの犬、可愛いなあ。
Kinoxさんのふわふわ毛皮を着た娘さんのお写真などもまた拝見したいです。
オペラ歌手の食生活 (Kinox)
2012-01-01 03:28:11
思ったよりずっと楽しめたので、ぜひ特派員さまを通じて。たしかメトのショップでは入ってすぐの本棚にあったと思います。お料理自体はそんなに目新しくないですが、それぞれの人がどんな食生活を送っているかが垣間見え、自筆のレシピにはちょっぴり性格が現れているのが面白いです。
犬好きで、栄養のバランスを考えて毎食手作りする方々の愛情の深さは本当に尊敬してしまいます。日常的には食べて・遊んで・寝る、の娘と楽しくしていますが、ご指摘の通り(笑)シーズン中は他の関心事で娘の日記も滞ってしまっていますね(笑)
料理本マニア (レイネ)
2012-01-01 19:25:14
ブログ拝見しておりましたが、これが初コメントになります。新年明けましておめでとうございます。(東海岸ももう新年ですよね?)

特別、料理好きではないけど、料理本は揃えたくなる性分です、はい。特に、料理にまつわる思い出などが書かれてたりストーリー性のある本が好き。自筆レシピというのもいいですね。この本のことは寡聞にして知りませんでした。ご紹介ありがとうございます。探してみますね。
動画が楽しいから、ヴィデオも出てないかしら?

オペラ好き料理好きの本棚にはぜひ (Kinox)
2012-01-02 04:10:07
明けましておめでとうございます。コメントありがとうございます。レイネさまのサイトに先ほどお邪魔させていただきました。わたしにはとっても嬉しいお年玉でした。
これはやっぱりお料理をするオペラ好きにとってはとっても面白いと思います。下に情報を...

ドイツ語版
ISBN-10: 3950295607
ISBN-13: 978-3950295603
英語版
ISBN-10: 3950295615
ISBN-13: 978-3950295610
World´s best TENORS (けやき)
2015-07-09 10:47:28
という本が発売されるそうです。
グリゴーロも入っているので記事にしたんですが、著者がこのお料理本と同じなので、こちらの記事をリンクさせていただきました。
シリーズ化するかな? (Kinox)
2015-07-14 13:02:46
けやきさま、リンクありがとうございました。

まぁこの写真の展示会がどこぞであったような話は聞いていましたが、写真集が出るんですね! なるほどこの料理本と同じメンツが仕掛け人なのですね。

バリハンクなぞというサイト?、カレンダー?もあるようですけれど、次はバリトン写真集でしょうか?
(ドミンゴはもう一度登場してもいいかもしれないですね。冗談です)

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