abeckham@izakaya

飲んで食うなら家でも十分。
それなのになぜ人は居酒屋に行く。
その謎を解く旅が、ここから始まります。

誕生日には熱燗で

2007-02-26 15:10:49 | Weblog
11月15日は僕の誕生日。尊敬すべき坂本竜馬の生まれ日と同じであるのが僕の誇り。ちなみに竜馬は誕生日に刺客に襲われ命を落とす。僕も誕生日に天へ旅立つのか・・・そんなロマンを密かに持っているが、その日が来るのはまだまだ先であって欲しい。
さて誕生日祝いと言うことで、嫁さんと街に繰り出した。会社を早めに上がり、神楽坂で待ち合わせた。普通誕生日となれば、フレンチやイタリアンなどが主流か?はたまた寿司や中華、焼肉などが人気なのだろうが、今年の僕は居酒屋だ。しかもとびきりの居酒屋だ。
選んだ店はこの前紹介した、神楽坂「伊勢藤」だ。この前訪問して依頼、僕の頭の中から消えることの無い圧倒的な存在感。一度嫁さんを連れてこねばと思っていた。
さて人で賑わう神楽坂を登り、鳥茶屋の角を右に折れる。「この先、この先」と嫁さんを得意げに連れて、足早に角を曲がる。地下鉄の駅を降りてから、僕は何かに焦るかのように
している。それだけ早く伊勢藤に腰を下ろしたいのだ。
さて店の前に来ると、案の定嫁さんは二の足を踏む。その異空間・・・江戸の空気が漂う様相に怖気づいたか、僕に手を引かれて、ようやく江戸時代にタイムスリップだ。
店内に入るとカウンターはほぼ満席。やはりか・・・という感じでお座敷に通されるが、入ってみると座敷の居心地も悪くない。古きよき畳の臭いと、なんとも言えない安堵感が満たされ、ぼんやり燈る電球の灯りが落ち着く。座敷の席の中でも、僕がベスポジと思っていた所に偶然通してもらい、店の人に頼んで座敷とカウンターのある部屋を仕切る障子を開けてもらい、燗付け場が見えるようにしてもらった。これで嫁さんに日本一、二の燗付け場を見てもらえる。
さて熱燗を注文し、同時に嫁さんが楽しみにしていた「畳鰯」を注文した。僕らの燗酒がお燗されているのを眺めながら、それが届くのを待つ時間はもどかしくも幸せなひと時。静謐感に満たされた店内の雰囲気に少し飲まれながら、嫁さんはじっと目を燗場に注ぐ。丁寧に丁寧に暖められた酒が届き、お酌を終え、一言祝儀の言葉を交わして乾杯。ほどよい具合の熱燗が喉を落ち、体の芯がため息を漏らす。満足な顔が僕の目の前にある。やはりここは最高の部類に入る。
さて今日の1汁3菜を摘みながら、徐々に雰囲気に馴染んできた嫁さんと会話を楽しむ。もちろん小声でひそひそと。ここは独特の静けさが、客に大きな声を控えさせる。これもまた古い居酒屋の礼儀だ。「畳鰯」香ばしくて重みがあり、燗酒の肴にぴたりだ。酒が進むゆえ、熱燗のお替りと「冷奴」「めざし」を追加した。
カウンターで1人熱燗を楽しむ若い女性がいる。ここでは異質な存在か。なんとなく目がいく。話を聞いていると、静岡でバーテンダーをしているそうで、たまに東京に酒を楽しみに来るそうだ。つるつるの店主にこの辺のお勧めのバーを聞いている。勉強の為、寄り道する様子だ。
毎回毎回、丁寧に暖められる燗酒にうっとりする嫁さんは、いたくめざしが気に入った様子で、しきりにめざし→熱燗→めざしの繰り返しで、酒の味わいを楽しんでいる。僕は耳に入ってくる外の雨の音を聞きながら、酒をゆっくり楽しんでいる。外はどうやら土砂降りの雨らしく、通りの人通りも絶え、店にやって来る人も、出て行く人もなくなり、店全体がひとつの空気になった。僕はそんな中、雨の日に、雨の音を聞きながら飲む酒もいいもんだと1人ごち。外にも出れないなら酒でも飲むかの心境で、もう1本徳利を持ち上げること合計4回。二人で6合くらい飲んだ計算か。日本酒許容量を超えそうな嫁さんは、すでに布団があれば横になれる状態の様子。僕も熱燗と合わせていた「ドライ納豆」も無くなり、そろそろ腰を上げようかと考える。外の雨もやみ、さあ家路の時間か。
地下鉄の中で眠たそうな嫁さんに聞いた。「伊勢藤どうだった?」と。すると面白い答えが返ってきた。「どっしりしてていいね」と。そう、それが古い店の安定感だ。どんな客が来ても店の空気に馴染ませてしまう雰囲気。それは古い店にしかできない芸当だ。僕の中での良い居酒屋の第一条件は「古いこと」だが、そんなそこにしかない空気が吸いたくて、肌で感じたくて各地を巡り、暖簾を潜るのだ。嫁さんにはそれがよくわかった様子だ。褒めて使わそうと思い顔を見ると、既に夢の中・・・肩透かし・・・まあよしとしようか。
「誕生日には熱燗で」 僕がコピーライターなら、日本酒の宣伝にでも使いたい名文句。
日本人なら日本人らしく祝ってみるのも良いものですよ、皆様。

ハワイの日本酒事情

2007-02-23 15:53:42 | Weblog
さて、前回ハワイの居酒屋事情は紹介したが、今回はハワイの日本酒事情だ。
ハワイ、それもワイキキにはABCマートという非常にハイクオリティーなコンビニがある。観光客がお土産を買うのにも適しているし、水やお菓子などの日常品の買い物、地元の人の買い物にも多く利用されている。予断だが僕はABCマートのホットドックが大好きだ。保温器の中に、いつもアツアツで置かれているホットドックは、シルバーの紙に包まれ、18cmくらいのパンに、1本ソーセージが挟まれているだけなのだが、これに備え付けのオニオンのみじん切りと、ピクルスのみじん切りをこれでもかと乗せ、ケチャップとマスタードを塗りつけ、歩きながら頬張るのが、僕のハワイ流買い食いだ。これで99セント。110円くらいなもんだから素晴らしい。
話がずれたがABCマートは日本人向け商品も多く、キリンやサッポロ(日本では見かけない缶)のビールが売られているし、UCCの缶コーヒー(キングサイズ)や、ポカリスエットも売られている。そしてここにはもちろん日本酒もあった。銘柄は白鶴と月桂冠。それと見たことも無い日本酒の吟醸が冷で売っており、価格は600円前後と割高である。
これに合わせるつまみが見つからないため、日本酒を買うことは無かったが、さてこれはここで売れるのであろうか?
日本人向けの飲食店が多いハワイ。もちろん店の人間が仕入れをするところがあるであろうと、マルカイマーケットという日本人向けスーパーに出かかけてみた。ワードセンター近くにあるこのマーケットは、店の半分が野菜、肉、魚が売られる生鮮食料品コーナーで、ここでは多種多彩なお惣菜が売られており、マグロのサラダなど、とてもうまそうだ。そして店の半分は、そのほとんどが日本食材のコーナーなのである。見てびっくりだが、豆腐や海苔、お茶やジュースはもちろん。乾燥わかめ、ひじき、ごま、酢や醤油などの調味料、ちらし寿司の寿司太郎、ボンカレーにカレーに王子様・・・まるで日本のスーパーと同じだ。若干パッケージは異なるものの、ほとんどの食材が揃うと言っても過言ではない。
僕らは驚きの表情で店の奥へ足を進めるが、いよいよ僕の目当て、お酒のコーナーに足を踏み入れた。
これがその驚愕の棚なのだが、見よ!この品揃え!!うちの近所の酒屋よりすごいぞ。最近は焼酎ブームやら、安い缶チューハイ、発泡酒に押され、日本酒の勢いが弱まり、俄然売り場も縮小傾向な中、ここは素晴らしいの一声につきる!!
まあ北海道から福岡まで、東西南北各地の銘酒を取り揃えた姿は圧巻だ。
長野の真澄などは、醸造から吟醸まで、なんと5種類ほど置いてあるし、「あらばしり」並んでいたり、「久保田の碧寿」があったり・・・
数えてみたが、なんと日本酒52種類が揃っていた。いや~買う人がいるからこその品揃えなのだろうが、はっきり言って驚いた。僕も飲んでみたい酒がいくつもあり、思わず手が伸びるのを嫁から止められること数回。しかしここまで日本文化が染み付いている外国も面白いもんだ。
さて最後になるが、ハワイから帰国するJALの中、僕は機内食に合わせて日本酒を注文した。出てきたお酒は「白鶴」の醸造タイプ。小さなガラス徳利に入り、白鶴のロゴ入りのプラスチック製のお猪口がついてきた。久しぶりの日本酒だ。ゴマダレのサラダに合わせながらチビリチビリとやりつつ、僕は少しずつ日本に近づくのであった。
(ちなみに空の上で味わう日本酒・・・・・どうと言うこともない)

ハワイの居酒屋事情

2007-02-20 08:56:49 | Weblog
新婚旅行でハワイに行ってきました。
出国前に成田空港内の蕎麦屋で、最後の日本酒(大関・熱燗)をすすり、日本にしばしの別れ。
JALに乗り込み、ウイスキーを飲んで眠りにつけば、そこはハワイ。
ハワイで何をしたかを語るブログではないので、詳細は割愛するが、でかい肉を食べたり、サンセットクルーズで夕焼け見てたらクジラが潮を吹いたり、この木なんの木を見に出かけたり、水族館で夢中になったり、市バスに乗ってフリマに出かけたり、ホテルのプールで泳いだり、フラダンスのショー見ながら食事してたらいつのまにかステージに連れて行かれ、外人の前で踊らされたり、妻の買い物のお供をしたり。それはまあ楽しい旅行でした。
さて居酒屋研究家としては、日本人観光客が多いハワイの居酒屋事情が気になるところ。さっそくワイキキを探索。しかし今回は日本食を取らない事を前提の旅でありましたので、居酒屋には入店しておりません。
しかしここワイキキは日本料理の店が多いこと多いこと。寿司屋、そば屋、ラーメン屋、鉄板焼にしゃぶしゃぶと、日本にいるのと代わり映えしない。挙句の果てには牛角まであり、日本人が並んでいる姿は東京と同じ。
そんな中、純粋な居酒屋を探すものの、なかなかその様な店は見当たらず。しかし発見「居酒屋踊り子」。キングスタウン内にあった踊り子は、外見はりっぱな居酒屋。この通り暖簾もあり!しかしメニューはなんでもござれの状態。入ろうかなと迷いましたが、ロブスターやらリブステーキやらの品揃えに、尻尾を巻いた始末。
それにしてもこういう店が日本人観光客のみならず、現地の人にもうけているのが不思議。間違った日本の居酒屋文化が外国に伝わる悲しさを覚え、ワイキキをぶらぶらしたとさ。そのほかにも「将軍」「たこ」「菊」などなど。居酒屋の暖簾や提灯を数多く発見しました。
さて次回はハワイの日本酒事情をお知らせ致します。

営業 新規担当地域

2007-02-05 17:46:34 | Weblog
10月31日 
最近新たに営業エリアとして増やされた新宿区。新しいエリアが加わると胸がはずもものだが、新宿と言えばなおさらだ。いわずと知れた日本最大の繁華街。しかし僕には縁が薄い町だ。買い物で来るくらいしか用事が無い。歌舞伎町など外国同然だ。
さて新宿の東京都庁近くに大学病院があり、そこも新しい担当病院だ。その大学病院に夜出かけ、8時くらいに仕事を切り上げ、そのまま家に直帰することにした。というより最初からそのつもりでここに来ている僕。
大学から新宿駅までぶらぶら歩いて約15分。新宿新都心の高層ビル街を歩きながら、高層ビルを見上げふらふら歩き、新宿西口の繁華街に出た。新宿西口駅の前、かの有名な「カメラはヨドバシカメラ」のあたりだ。この辺は大型の電気屋やゲームセンター。またサラリーマン向けの飲み屋街で形成されており、なんとも言えない雰囲気と活気がある。
その中を、1人で飲めそうな店を探しながら歩いていると、立ち飲み屋が2軒並ぶのを発見した。よし、どちらにしようかと店内を眺め、人の入りの多いほうに瞬間的になだれ込んだ。
店内はコノ字型の立ち飲みカウンターがあり、それを囲む店の内壁にもカウンターが誂えてある。コノ字カウンターの角に場所を取り、カウンターの中にある調理場に向かって生ビールを注文した。調理場を見るとおでん鍋におでんがぎっしり詰まり、焼き場ではホルモン系中心の肉達が炭火で炙られている。客の入りは4分程度だが、若いOL二人組みや、先輩後輩のサラリーマンなどで賑わい、いい感じだ。
さて出てきた生ビールで喉を潤し、お品書きに目を走らせる。15種類くらいの内臓が焼いてもらえる様子であり、その中からレバーと豚タン、コブクロを注文し、おでんの厚揚げも追加した。目の前で自分の注文した串が焼かれるのを見ながら、それが出てくるタイミングはかり、酒の注文を組み立てる。1人飲みの時の数少ない趣向のひとつだ。
さてレバーがレアーに焼きあがるタイミングを見計らい、僕は「長龍」というお酒を注文した。レバーと同時に出された「長龍」は冷えたワンカップ。思わず冷蔵庫を、見ると日本酒は全てワンカップなのだ。これには驚き。なんと30種類近くのワンカップがずらりと並び、それはそれで圧巻だ。色取り取りの配色が美しくもある。
さてふたを開けてグビリ。やや辛口の純米酒。できれば燗で頂きたいが、今日やよしとしよう。ワンカップの良いところは値段が図りやすい所。量に嘘が無い所。薀蓄が全てラベルに書かれており、それを見ながら楽しめる所。逆に悪い所は、むなしい所だ。「長龍」はお品書きでは奈良の酒となっていたが、良くよく読むと灘の酒。どうりで辛い。
熱々とろとろのレバーを頬張り、厚揚げにカラシを効かせて口に運び、それを冷えた日本酒で胃袋に追いやる。立ち飲みはどこか野性的な食べ方、飲み方になる。グビリグビリと酒が進む。さてもう1杯。「まんさくのはな」「南部美人」「麒麟山」などの名前の通った酒もあるが、「決戦関が原」なる血の滾る酒もある。その中から今度はしっとり酒を楽しもうかと「銀盤・純米大吟醸」を注文した。
届いた「銀盤」はいわずと知れた富山の銘酒。一口グビリとやり、ラベルに目を落とすと、そこには興味深い記述が。この大吟醸に使う米は全て岡山県産で、浅越管理の小田さん、小野さん、坪井さんが責任を持って管理し醸造したとか。なんだか良くわからんが、ワンカップには面白い情報ありだ。
最近ワンカップを多数揃える立ち飲み屋が増えている。新宿の違う所にも僕はもう1軒知っているが、これはこれで悪くない。お土産にしたくなるようなかわいい絵の入ったグラスもあるし、女性に好まれるのも頷ける。今度お品書きを頼りに、北から南まで各地の地酒をワンカップで飲み比べる旅をしてみようか。もちろん立ち飲み屋の中でだが。
さて、お腹もだいぶ膨れたし、お酒もほどよく酔いを醸し出す。さて男は綺麗に切り上げようか。勘定を済ませて店を出る。今日はまだ10月。コートもなにも要らない気候。早く冬が来ないかな、と思いながら歩き始める。僕は冬が好きだ。寒いのは苦手だが暑いよりは何倍もましだ。なんといっても今年の冬は熱燗を楽しもう。寒い道を歩き、凍えながら暖簾を潜ると、暖かい空気と熱い燗酒が待っている。そんな出会いを思い、駅への足取りを早めた。