abeckham@izakaya

飲んで食うなら家でも十分。
それなのになぜ人は居酒屋に行く。
その謎を解く旅が、ここから始まります。

豊橋にて。大人の時間を感ずる。

2007-11-30 13:59:10 | Weblog
松本は既に冬の入口。でもブログの記事はまだ7月。でわ。

7月2日
名古屋出張の初日。今日は初めて豊橋に宿を取った。豊橋には大きな市民病院があり、我が社の製品も多く納入されている。時より仕事で寄るが、豊橋に泊まった事はなかった。
しかし豊橋にはキングカズ推奨の店がある。一度訪ねねばと思い、ようやく初めて豊橋泊まりとなった訳だ。
ホテルを出て、随分長くなった陽に照らされながら町をさまよう事30分。地図も何も持たず外出した無能振りを嘆きながら辿り着いたのは「千代娘」だ。何度も道を尋ねながら、汗だくになり辿り着いた感動もあるが、まずはその佇まいに心が動く。古い2階建ての一軒家が醸し出す静謐感と情緒に思わず入店をためらうほど。ここは居酒屋ではない、割烹だ。懐具合も考え、今日は遠慮しようかとも考えたものの、ここに来る為に来た豊橋。僕は意を決して扉を開けた。
さて薄暗い店内からかかる声に促され、店内右手にある「コの字」ならぬ「くの字型」カウンターに腰を下ろす。和服に白い割烹着で日本髪を結った女将さんがおしぼりをくれる。すいませんと一言返し、汗だくの顔を恥じらいも無く拭き、改めて店内を見る。7席ほどのカウンターの他には奥に小さな小上がりがあるだけ。非常に小さな店だ。
ビールを注文すると、カウンター下から氷水で冷やされたサッポロ黒ラベルが。女将さんにお酌してもらい、一息でぐびり。「暑いんでしょう、良い飲みっぷりで」と声をかけられ、今日ここに来るまでの経緯を説明した。
僕の目の前には料理台があり、そこに大鉢に盛られた小料理がある。「鰯煮」「おひたし」「煮しめ」「枝豆」とどれもおいしそうだが、その中から「煮タコ」をもらう。強くしてくれた冷房で心地よくなっていると先付けが届く。茹でたサザエを細かく切り、キュウリと合わせて赤味噌で合えてある。こりこりした食感と赤味噌の甘酸っぱさがうまい。レベルの高い先付けだ。
キングカズの本を読んでここに来たと話すと、なんと先月キングもここへ来ていたらしい。名古屋の取材の後にわざわざ寄り、偶然僕と同じ席に座り、同じ「煮タコ」を食べたらしい。
「煮タコ」は柔らかく煮込まれたタコにしっかり醤油の味が染みていて、芥子をつけて口に放り込むと、なんの抵抗もなく噛み切れる。これはうまい!!
常連と見える男性が一人入店し、女将のつけた熱燗をカウンターでやり始めた。しかしすぐにコンパニオンらしき女性が現れ、二人で二階の座敷に上がって行った。どうやら二階にはたくさん小座敷がある様子。一人でふらりと寄り、女性を呼んで一杯。いやはやさすがここは割烹だ。今の僕にはカウンターで一人ちびちびが等身大。これで良しとしようではないか。
さて僕も日本酒をと、この店の名前にもなっている「千代娘」をぬる燗してもらう。聞く所によると千代娘は浜松の酒。先代がこの酒から名前を取って店を始め、今では創業50年に迫る歴史だそうだ。「古いだけですよ」と謙遜する女将さんだが、「古い、変わらないものに価値がある」と僕も生意気な、どこかで聞いた事のある返事を返す。
竹の皮に書かれた達筆のお品書きは品数豊富。「よこわ」「みる貝」「烏賊」「真鯛」などの刺身から、「鯛あら煮」「鰈煮付け」などの煮魚。「鯛塩焼き」や「太刀魚」などの焼き魚。はたまた揚げ物に「卵焼き」や「月見」などの一品料理もたくさん並ぶ。僕はその中から夏の風物詩「鱧落とし」を注文した。
千代娘は甘さ控えめで飲み口はさっぱり。燗すると幾らでも飲めそうな味だ。女将さんに豊橋の事を色々聞いてみた。豊橋は愛知県第2の都市だが、人口では最近豊田市に抜かれたらしい。工業や造船業が盛んだが、工場が多いだけに外国人労働者が多く、2万人位の外国人が済んでいるそうだ。ある小学校では日本人生徒より多いらしい。小さな国際都市だ。豊橋の名産は何と言っても「ちくわ」。それと昔懐かしのオブラートに包まれた固いゼリーらしい。特に観光名所も無いが、豊川(とよがわ)が大きくうねる所にある吉田城跡からの眺めは中々らしい。吉田城を築城したのは戦国の雄、池田輝政。現在は櫓を残すだけだが、豊橋は城下町なのだ。そうそう豊橋と言えば東海道53次の宿場町のひとつ、吉田宿だ。カズの本でも出て来た。その名残なのか、豊橋は古い居酒屋は無く、料理旅館や割烹が多いらしい。
店内の生け簀からさらわれた大きな鱧が捌かれ、僕の目の前に登場。捌きたての鱧が食べれるなんて贅沢だ。奇麗に骨切りされた鱧の身を潰し梅に付けてパクリ。鱧の土臭さを梅が上品にコーティングし、旬の味わいが口に広がる。これは酒と合う。今日はいっその事贅沢してやれ。
追加で「鮎の塩焼き」を頼むと、店の玄関に控えめに男性が登場。女将さんと話している様子を聞くと、すっぽん漁師の様子だ。お品書きにもすっぽんはあったが、僕はすっぽんを食べた事が無い。子供の頃、亀を飼っていただけに、すっぽんは生涯口にしないと誓っており、その話をすると女将さんは大笑い。一気に打ち解けて行く。そんな話をしていると茹でたての赤い蟹が僕の目の前に。出入りの魚屋からもらった「もがに」と呼ばれる蟹らしく、店からのサービスだと言う。わざわざ女将さんが解体してくれ、僕はそれにかぶりつく。身は少ないが、凝縮された蟹の味がうまい。指までなめながら、蟹みそを甲羅の中で潰し、その中に酒を入れて飲み干した。
「鮎の塩焼き」は小振りな鮎が二尾。豊川の上流で取れた物らしく、頭から尻尾の先まで丸ごと食べれる。これも酒に合う。3本目のぬる燗を頼み、しっかり腰を据えてしまった。
その後も女将さんと話し、手伝いに来た娘さんと、時々奥から顔を出す大将と話をしながら、話はまたキングカズの話に。せっかくだから千代娘がニッポン居酒屋紀行で放送されたビデオを見ようという話になり、大将がビデオを流してくれた。お馴染みのテーマソングが流れ、お馴染みの赤ら顔が映る。先ほど話に出た吉田城跡を巡った後、カズは千代娘に到着。またまた偶然にも僕と同じ席に座るカズ。カズが訪れた店の、それも同じ席に座り、カズの映像を見ながら酒を飲む。きっとこの幸運を味わったのは僕だけだろう。店でお客さんがいるのにこのビデオを流したのは初めてだそうだ。この幸運に感謝。
レジ棚に飾られた大黒様に供えられた杯や、大きな熊手。古き良き日本の酒場の情緒が満載なこの店で、僕は幸せを噛み締める。大将お勧めの「鯖の刺身」を最後に注文。福岡育ちの僕に取って「鯖の刺身」は当たり前のもの。しかし東京には皆無に近いこの刺身。東京では新鮮であれどもすぐに酢で〆てしまう。それはそれでうまいのだけれど物足りない。そんな話を大将にしながら、奇麗に盛られた鯖をぱくり。福岡で食べるごま鯖とは違い、こりこりとした身の食感。九州の鯖ほど脂が乗らないらしいが、これはこれで旨い。最後の熱燗も空になったが、結局最後にもう1本つけてもらう。大将は跡継ぎがいない事を嘆いておられたが、確かにこんな店が無くなるのは悲しい。しかし同じように後継者に困る飲食店も多いのだろう。日本の職人が減り、跡継ぎが無く消えて行く伝統工芸は多いだろう。居酒屋だって立派な文化。跡継ぎの登場を心に祈り、最後の酒がお腹に入ったところで勘定してもらう。
皆さんに挨拶をし、この幸せを忘れないと誓い、再訪を約束して店を出た。夜も更け、風が涼しい豊橋の町外れ。もうこの辺は夜の帳が下りそうな感じだ。
初めての豊橋には素敵な出会いが満ちていた。今までも色んな店を回ったが、ここまで店の人と話し込んだ店は無い。なんだか大人になったんだなあと考えながら歩く32歳の大人がいた。

名古屋の実力

2007-11-04 13:10:45 | Weblog
松本に来てはや1ヶ月。季節は秋、いや冬の入口11月だが、ブログの記事はまだ7月。悪しからず。

7月5日
名古屋出張最終夜。梅雨時と夏の始まりとが交差した、じめじめした初夏の出張の最終日を飾る店を決めかねる僕。以前にキングカズの番組の掲示板で得た情報をおさらいし、そこから今宵の店を探そうとパソコンを、いやMACを立ち上げた。
ホテルを出て栄の町を歩く僕。ビルの影に隠れながら歩く事10分。名古屋のシンボルのひとつテレビ塔のすぐ脇を通り、やや人影のまばらになる街角へ進む。目指す店はそこにあった。
短い暖簾が下がり、店の奥まで外から覗けるのは、僕のようなビギナーにはありがたい。お客さんが既に腰を据えているのを確認して入店。
カウンターだけの長細い作りの店は、20名も座れば満席だ。既に5人ほどサラリーマンのおじさまが愉快に飲んでいる。僕は店入口に近い席に腰を下ろし、瓶ビールを1本注文。坊主頭の店員さんが無言でビールを注いでくれた。ありがとうと一言返し、ぐびりと一気にビールグラスを開ける。それを見越していたのか、ビール瓶を置く事無く、すぐさま2杯目を注いでから僕の前を去る店員。帰って来た時にはおしぼりとお通し代わりの生キャベツを山盛りを持って来た。この店の名前は「 久富」。栄の外れにある串カツ、どて煮の店で、名古屋の情報に詳しいある方から教えてもらった店だ。古いながらも、奇麗に保たれた大衆的空気が落ち着く。僕は小さなお品書きから、まずは名物「 スジ煮盛り」を注文だ。僕の目の前にある直径70cmくらいの鍋には大根、豆腐、厚揚げ、すじ肉などが味噌でぐつぐつ煮込まれており、その中にお玉をぶち込み、鍋底を探りながら皿に盛られた「 スジ煮盛り」が届く。まずはルックスに感激。つやつやしたスジ肉は見た目で柔らかさが伝わる。まずは経緯を表してそのまま口へ。とろとろぷりぷりのすじ肉が絶妙な味噌の味付けで高級感溢れる味に変身している。更に七味をかけて再度口へダイブ。ぴりりと大人のエッセンスがかけられた味がまたたまらない。ビールが足りなくなり、僕にしては珍しくビールをお代わりだ。
長いカウンター内に男性店員が三人。一人の坊主頭は僕の前で串に豚肉を刺し続ける。奥には洋食屋さんのコックコートを纏うイケメン風の店員が二人。真面目な顔して料理に余念が無い。男だけで営む潔癖さと清々しさが気持ちよい。
さてもうひとつの名物「 串カツ」を注文。お品書きには5本からとなっているが、何本でも良いですよと言ってくれるので3本をソースではなく味噌でお願いした。他にも砂肝やネギマなどが串揚げで食べれるようだ。
煮込みで甘辛くなった口の中を生キャベツで中和させ、ときどき生キャベツをソースに付けて口をさっぱりさせる。そしてまた甘辛い煮込みを口に入れ、すかさずビールで流し込む。この黄金式が素晴らしい。
届いた「 串カツ」は小振りで、ひとさし指程度の大きさだが、かじりつくと肉汁が溢れて柔らかく旨い。薄く纏った味噌味と、たっぷりつけた芥子が華を添える。旨い!!!
ビールも無くなり、ここは日本酒ではなくレモンチューハイを頼み、レモンをしっかりしぼって豪快にやる。追加で注文したおでんの「 豆腐」も味が良く染みて旨い。皿に残るスジ肉をまぶしてなんちゃって肉豆腐にして楽しむ僕。ここはいい店を知った。
テレビからは今日で閉会する国会のニュースが流れる。例の法改正でもめて期間延長を与党が強行した国会だ。開期延長を通達された扇千景参議院議長が苦言を呈した姿が、凛として印象に残ったが、その扇さんもこの国会で政界を去るらしい。昭和52年に政界入りというから、僕の2歳の年だ。お疲れさまと、女性初の参議院議長に声をかけたい。さあ来週から選挙戦だ。あまり関係ないが、世の中は選挙一色になるのだろう。そんな事を考えながらおどろくほど安い会計を済ませ、僕はもう一軒はしごしようと、伏見へ足を向けた。

久々のわけは

2007-10-14 16:22:43 | Weblog
皆様、お久しぶりです。
しばらくブログのアップが止まっておりました。
というのも私、転職をしました。更に配属地の関係で、信州は松本に転居致しました。
引越やら、新しい会社での研修やらで、パソコンを扱う時間がなかったり、ネットに
接続されてない時期があったりで。でもようやくネットもつながり、これからまた復帰
しますので、よろしく。
東京から引っ越すという事で、東京の居酒屋に行く事ができなくなるため、東京最後の
1ヶ月は仕事もそっちのけで居酒屋散策にがんばりました。
その様子などを中心に、また来週からブログアップを続けます。また松本の居酒屋情報
や、お酒と食事にまつわる話を載せて行きます。信州の蕎麦情報も。
ではまた今後ともよろしくどうぞ。

東京随一の銘酒居酒屋

2007-09-24 14:12:11 | Weblog
福岡から新人が研修で東京に来ている。僕の下についており、非常に明るい馬鹿な男で、いかにも九州男児と言う感じだ。その後輩を連れて、今日は東京の居酒屋の真髄を教えようと、虎ノ門へ向かう。今宵は久々のイザケンで、もちろんいつもの相棒もやってくる。新人はイザケン初のゲストとなるのだ。めでたいめでたい。(何がめでたい?)
さて地下鉄虎ノ門の駅を地上に出ると生憎の雨模様。傘をさしながらいつも営業で来る虎ノ門病院を目指し、その対面にある「鈴傳」の前に立つ。ここはキングも絶賛する東京屈指の銘酒居酒屋だ。意を決してガラガラと扉を開ける。
良い意味で飾り気のない店内は、入ってすぐ右側に燗付け器と酒の詰まったショーケースがあり、右側には変わった形のカウンター型テーブルがあり、店内にはテーブルが10個ばかり置かれ、奥が厨房だ。すでにサラリーマンのおじ様たちが熱気を発しているが、予想と反して満席ではない。入口近くのテーブルに腰を下ろし、まずはビールを注文。ドライ派の新人の意見など取り入れることもなく、サッポロ黒ラベルを酌み交わし、乾いた喉をまず潤す。いわゆる酒場の雰囲気に目が輝く新人に最初の料理の注文を任せると、「ポテサラ」「冷奴」を注文。なかなか良いセンスだ。
さて何やら話しをしていると、がらりと開いた扉から、いつもの相棒が赤ら顔を出す。にやけながら席につく相棒に新人を紹介。軽い雑談だけで打ち解けた様子の二人だ。
相棒がビールで喉を湿らす横で、僕は今宵最初の日本酒を物色。店中に貼られた酒のお品書きの中から好みの酒を探すのは、やはり最高の娯楽。まずは山口県の銘酒「雁木」の無濾過の生を冷で注文。僕は無濾過の生酒が大好きで、数ある日本酒の中でも特に好きな味わいだ。米の味が濃く、生なので少しアルコール度数が強い。店の大将も薦めてくれた酒であるが、やはり飲んでみると好みにぴったりくる。ようやく辿りついた好みの日本酒のタイプだ。相棒が注文した「くじらベーコン」に合う。くじらの脂濃さが綺麗に口の中で調和され、やさしく胃袋に落ちていく。
相棒と相談しつつ「とまと」「しゃこ刺」「くさや」を注文し、新人のリクエストで「肉じゃが」も追加。福岡から3ヶ月東京で研修中のかわいそうな新人は、どうやら家庭の味に飢えている様子で、ビール片手に肉じゃがを離そうとしない。
相棒も店の大将に話を聞きながら「手取川」を注文。ビール党の新人も日本酒が飲みたいと、大将が薦める日本酒を熱燗でもらう。手取川とは上杉謙信が織田信長に土をつけた、歴史的に重要な戦の場所なんだとうんちくを語る僕を尻目に、相棒は隣で日本酒にご満悦。新人と僕は非常に変わった形の、まさに歴史遺産的な燗付け器で付けられる熱燗を見守り、感嘆の声を上げる。そしてしゃこが大の苦手の新人に、強引にしゃこ刺を食べさせ、悲鳴を聞きながら笑い声を上げる。非常に良い時間が流れている。
しかし予想に反し、店は一向にお客さんでいっぱいにならない。むしろ早々と来たお客さんが席を立ち、店は閑散としていく。どうりで店の大将が僕らのテーブルに付きっ切りになり、いろんな話に興じてくれるはずだ。こんなに暇なのは初めて大将がと言うくらい、今日は静かな店内だ。イザケンが開催されると店がすくのだろうか?以前、根岸の鍵屋に行った際にも、連日満員の店ががらがらで、ほぼ貸切状態を味わえたもんだ。イザケンは店にとっては疫病神?それなら僕らが店の売上に貢献せねばと、僕は福島の「奈良萬」野山廃をぬる燗でもらい、相棒も新人も杯を重ねる。
料理もがんがん頼み、酒も大いに飲み、腹は膨れ、酔いは回り、大将も巻き込み、僕らのテーブルは盛り上がる。今まで「黒牛」を勝手に「こくぎゅう」と思っていた僕は、注文の際に本当は「くろうし」と読むことを大将に教育されたくらいまではまともな思考回路であったが、トイレに立ち、用を足す間に、久々に限界を感じた。今までの人生で数回体験した酒の限界。前触れも無くやってくる僕の限界は、今までの許容量を遥かに下回り、僕を襲う。これ以上飲むと危険と言う僕独特のシグナルを感じた僕は、テーブルに戻り、半ば強引に先に帰ると言い放ち、多すぎる会計をテーブルに置き、退散した。と記憶している。地下鉄を乗り継ぎ、かなりのロスをしながら家へたどり着いたのは11時。早い時間から飲んでいたが、この酒量にしてこの時間。いやはや僕も酒に弱くなったもんだ。
次の日、割れるような頭を抱えて会社へ出社した僕に、相棒から届くメール。強引に帰った僕を見送り、二人はその後も痛飲した様子で、相棒は謎の汗を背中にかきながら出社している様子。新人も僕の同僚に連れられ、朝早くから千葉に連れて行かれているらしく、人生初の二日酔いに直面していると、重たいメールが届く。
いやはや酒は怖い。しかし楽しい。飲んでる時は、後のことや明日のことを考えない。そう、一切考えない。やはり酒は麻薬だ。だからやめられない。朝起きたとき、今日はさすがに酒はいらないと決意したものの、やはり今夜も家で一杯・・・麻薬だ。

あこがれの元祖へ

2007-09-11 08:15:50 | Weblog
有楽町にある東京国際フォーラムで医療機器の展示会が開催された。僕の会社も展示会に製品を展示し、会社の虚勢を示した。
一応全国規模の展示会であり、新製品を展示したため我が社の工場からも人員が駆けつけた。工場の人員の中に僕の中の良い先輩がおり、その人を含めて数人で飲みに行くこととなった。
さあ場所は有楽町。足をひょいっと伸ばせば花の銀座だ。銀座に僕の行きたい店はたくさんあるが、その中から今夜は「樽平」をチョイスした。
有楽町から銀座の繁華街を抜け、夕暮れ時の銀座の雰囲気を味わいながら、これからご出勤の綺麗なホステスを眺めつつ、細い路地を潜り抜けること数回。ようやくビルの谷間にたたずむ樽平に着いた。
ビルの1階、谷間。立地はさほど良くないように感じるが、古くからある名店との評判だ。
一応予約したので堂々と扉を開ける。店は入口から左に長い作り。真ん中に大きなテーブルが二つ並び、それを両サイドから囲むようにカウンターと小さなテーブルが並ぶ。どうやら二階席もある様子だ。
真ん中の大きなテーブルに腰を下ろし、店の雰囲気を観察しながら即効で生ビールを注文だ。古い小民家風というのだろうか、落ち着きのある造作でくつろげる。長居してしまいそうだ。
さて生ビールで豪快に乾杯。乾いた喉が合計5本鳴る。やっぱり男は生ビールか。どのジョッキも瞬間的に空いていく。さあ、追加のビールの注文と同時につまみを頼まなくては。
ここは山形県の郷土料理が中心だ。店内に貼られているお品書きには山形から直送されたものがいくつも並ぶ。その中から名物「丸こんにゃく」を注文。他には特に目を引いた「しめ鯵」、「厚揚げ」などを注文した。
久々に顔を合わす工場の人と、また最近入社した新人を交えながら、営業と工場の現場の笑い話など中心に猛然と飲みのペースがあがる。今夜はビール派が多いため、日本酒へ切り替えるのは僕だけの様子だ。
この店の日本酒といえば「樽平・金印」。日本で一番辛い日本酒と言われているらしい。基本的に日本酒は全て甘く感じていた僕だが、日本酒のことがすこしずつわかり始めた今日この頃、ようやく甘いとか辛いがわかるようになっただけに、さてさて日本一の辛口が楽しみである。取り合えず熱燗にしてもらい、ユニークな徳利で届いた燗酒をお猪口へ。そして香りを確かめ口に含む。うん・・・日本酒特有の酸味と甘さが口の中に広がるものの、喉を駆け下りた後にしっかり辛さが残る。これは確かに辛口だ。味を確かめるようして何杯か飲み続けると、非常に喉が乾く。すかさず氷水をもらい、チェーサーを確保する。
しめ鯖と違い、あっさりした味わいの「しめ鯵」は中々のものだ。日本酒との相性もばっちりだ。外はかりかり、中はしっとりの分厚い「厚揚げ」も、醤油をかけ回し口に含むと、大豆の甘さを油濃さが包んだ絶妙な味わいだ。また名物の「丸こんにゃく」は卓球の球より少し小さめのまん丸のこんにゃくが甘辛く煮込まれており、からしをつけてかぶりつくと、なんとも田舎臭いんだがうまい。料理の味わいは少し濃い目。酒も辛いが料理も辛い。氷水も数回お替りしながら、徳利もすぐ空になる。
久々に工場の人と飲む機会に加え、新人二人も打ち解けてきた様子で、いろいろな話しが飛び出し、場は盛り上がる。みんなも次々にビールを空け、僕も徳利を空けていく。果たしてどれだけ飲んだだろうか?気がつけば夜も更け、そろそろ帰宅せねばならん。しかし工場のマネージャーは上機嫌で、これから面子を追加して更に飲みに出る様子だ。僕は営業の新人をいけにえとして押し付け、退散することに。
口の中に残る、日本酒の甘さと辛さに加え、何度か追加注文した「赤カブ漬物」のさっぱりとした残り味を楽しみながら、サラリーマンの街新橋から電車に乗った。
樽平は僕の尊敬するキングカズこと大田和彦氏が、自分の居酒屋の原点と語る店。銀座に勤めている間、毎日のように通った居酒屋だという。キングの原点に足を踏み入れ、更に心引き締まる僕であった。

真似して見やがれ!!

2007-08-28 08:22:34 | Weblog
仕事で東陽町へ来た。ここは江東区、東京23区の右の方。もう少し行けば千葉になる。営業部だけでなく企画部で仕事をする僕は、ここに仕事相手となる会社があり、そこを訪問した後、僕は前から行ってみたかった店に寄ることに決めた。東陽町から電車で二駅。ここは門前仲町、略して「もんなか」。地元の人は「なかちょう」と言うらしい。深川不動の門前なので門前仲町。ここには古い居酒屋や老舗の料理店が多いと聞く。
地下鉄から地上へ上がり、地図で頭に入れた方向を見渡す。あったあった今夜の目的地「魚三酒場」が目の前に。駆け足のようになりながら、僕はぷい?んと歩きだす。
表の開き戸が開放され、店内の様子は短い暖簾越しに全て見渡せる。顔に押し寄せるてくる活気が素晴らしい。躊躇無く暖簾をくぐり人差し指を上に指し、1人であることを主張。カウンターの中のおばあちゃんがこちらどうぞ、と席を示す。笑顔で着席し、ビールを1本注文。キリンラガーの大瓶が届き、メニューに横目を使いながら一人乾杯!!
さて店内に張り巡らされたお品書きは圧倒的。刺身に焼き魚、煮魚、揚げ物などなど、数えてはないが300種類はくだらない。刺身だけで50種類はあろうか・・・鮪、ウニ、はまち、鰯、鯵、鯛、いなだ、イサキ、アイナメ、ほうぼう・・・貝は鮑を筆頭にサザエ、ホタテ、平らぎ、赤貝、みる貝、北寄、とこぶし・・・さらにボタン海老、たこ、ヤリイカ、ホタルイカ・・・何を食べればよいのか呆然となる。本で読んだんだが、大量に仕入れ、大量に安く消費してもらうことがこの店のモットーであるらしく、まちがいなくそれは店の看板が示している。スター選手満載の中から、僕は限られた代表選手を選出する監督の気分で、「平らぎ刺身」と「エビフライ」を注文した。
店内は20人は座れるコの字型カウンターが2島あり、その中に料理を持って移動するだけの空間があり、僕のいる島は相当お年のおばあ様が、向こうの島は若い兄ちゃんが仕切っている。どうやらおばあ様はここの女将の様子で、常連さんと気さくに世間話をしている。下町の洗練された大人の空間が心地よい。ネットで見ると店員の態度は最悪だと書いている人が多いこの店だが、それはその人がこの店に合わないからだろう。他に1人いるおばちゃん店員はつっけんどんだが、別に気にならない。
僕の前に「平らぎ」が届く。僕の靴よりでかい貝殻の上に、身の厚い平らぎが10切れほど。これで480円は奇跡的だ。わさびを乗せて醤油にダイブ。甘くねっとりした貝の臭みがたまらない・・・涙が出そうだ。見ているとどのお客さんも席に着くなり気合を入れて飲み物を注文し、せわしなくお品書きを眺める。みんなここで飲んで食べることに気合を入れている。とても良い店と客の関係だ。店も一生懸命、客も一生懸命だ。
「エビフライ」は大ぶりのエビフライが3本。ソースとマヨネーズをつけてレモンを絞りバクリ・・・熱々をビールで流し込む。これ以上言葉は要るまい、最高。桃色吐息だ。
席から店の外を眺めると、青い暖簾に「魚三酒場」の白抜き文字が美しく、風にたなびく姿が粋だ。店の外には数人が今か今かと並んでおり、ひっきりなしに客が出入りする。店内は古いもののしっかり手入れが行き届き、古き良き、そして美しき空間を保持している。店内の鏡もピカピカで、天井からぶら下がる丸の裸電球もピカピカだ。いるだけで気持ちが良いのにこの味、この価格・・・真似できるなら真似してみやがれ!!
そろそろお酒をと、冷酒をもらう。白鹿の樽酒、これが1杯180円。しかしレベルの低い質の悪い酒ではなく普通の酒。こぼれるまでコップに注いでくれたのを飲みながら、追加注文に心が逸る。隣に座る若い兄ちゃんも、僕のを見てかどうだかわからんが平らぎを注文し、日本酒を舐めている。お返しにとばかり、彼が「あら煮」を注文したので僕もそれに便乗。
届いた「あら煮」は小さめの茶碗くらいある小鉢に山盛り。違う店でこれがでてきたら警戒するものの、ここの物は物が違った。役者が違うとはこのことか、様々な魚を大量に仕入れるゆえできる業。1つでお腹が満たされるほどのボリューム。これは1人では多いよ。
女将のおばあちゃんは「そろそろ」と客に声をかけ、小さな荷物を持って帰っていった。おそらく開店からしばらくの時間を店で仕事をして先に帰るのであろう。常連客が敬意を払う存在に、僕も小さくおじぎをした。追加の「ミル貝刺身」を肴にさらに冷酒を1杯取り、お客と店員の話に耳を傾けながら幸せな時間を過ごす。この店は2階と3階にも席や座敷があるらしく、横の階段から上へ上がるお客も少なくない。しかし1階で飲むなら並ばなくてはならないのだ。やはり店の最高の雰囲気を味わうのはこの1階カウンターだろうが、好んで上に上がる人もいるとか・・・毎日のようにここで1杯引っ掛けて帰る近隣住民のお父さん。毎日1階で飲んでいる姿を近所の主婦連中に見られるのが嫌だそうで上に上がるそうだ。笑える。生活の中に溶け親しんだ店ならではの美談か?
「白魚のてんぷら」「ぬた」「鯛かぶと煮」「穴子白焼き」「かつお土佐造り」「くじら刺身」・・・食べたいものが数限りない。ここは何度来店しても満足できるし、必ず来る度に食べ残しという後悔を残すだろう。いや?さすがは東京。東京の居酒屋は素晴らしい。
僕の目の前に座るおじ様は、ひとしきり刺身で日本酒をやった後、「みやげにかつお刺身2人前」と言い、波平さんが持つような土産を持って帰って行った。ふたたびすばらしい。
僕は軽く酔っ払ったところで、気持ちよく感情をすませ、笑顔で暖簾をくぐり外へ出た。
いや?大満足だ。魚を安く食うならここ!間違いない。程度の低い言葉しか出てこないが、ここは奇跡の店です。一番高いのが生うに850円。次が大トロ、鮑肝つき刺身の750円。価格に関して記載をするのが好きではない僕ですが、これは伝えねば!!
皆さん、東京は素晴らしい街です。嫌な面もたくさんありますが、ここへくればそんなことも霞んじゃうよ。交通費をかけてくる価値がここに。この感動プライスレス。

大衆の輝き。「まるますや」

2007-08-10 10:25:02 | Weblog
ゴールデンウィークだ。これを掲載するのがいつだかわからないけど、今日はゴールデンウィークだ。昨日友人カップルが我が家に泊まり、楽しい酒を飲んだ。女の子は所要で朝早く帰ったものの、飲んだくれの彼氏のほうは目覚めるはずもなく、昼前に起床。軽い食事を済ませた後、嫁さんと3人で池袋へ出かけた。目的は西武デパートで開催中の全国物産展だ。3人で催しもの会場を巡り、お酒の試飲や各地の名産品の試食を繰り返し、遅めの昼食に徳島ラーメンをセレクトし、大阪の肉まんを購入してもらい彼と別れた。その後嫁さんの化粧品を購入し、池袋から帰ろうかどうしようか迷った挙句、なぜか一駅歩いてみようというプランが持ち上がる。池袋の怪しい町並みを抜けると、わずか10分で閑静な住宅街に入る。気温が上がる中、道に迷いながらかなりの時間をかけて隣の大塚についたのは17時頃。都電の線路を渡り、嫁さんに一応大塚の名店「江戸一」を見せ、閉まっていることを残念に感じながら帰宅するべく電車に乗った。地下鉄に乗り換え、何気なく座っていると、目的地手前で電車が止まる。我が家がある駅まで行かず、手前で止まる電車に乗ったらしい。降りた駅は赤羽岩淵。普通ならここで次の電車を待ち家へ向かうところだが、しこたま歩いてのどが渇き、さらに心地よい疲労感に包まれた僕はあることを思い出す。
以前「斉藤酒場」に行った帰り、赤羽で見つけた「まるますや」に寄るのはどうかと。すかさず嫁さんに相談。乾きに乾いた嫁さんもあっさり同意。僕らは地上への階段へ急ぐ。
地上に出てぷらりぷらり。記憶の糸を頼りながら、僕らはあっさり「まるますや」へ着いた。商店街の街角にある「まるますや」は人でいっぱい。おばちゃんに声をかけると、すぐに席は開くから待つように言われる。店じゅうに貼られたお品書きに目を通していると、おばちゃんから入店OKの声がかかる。僕らは恐縮しながら二つあるカウンターの一角に座った。「まるますや」は赤羽きっての大衆居酒屋。昼間から営業しており、価格も安い。東京北部の下町である赤羽庶民の強い味方だ。
さてビールを注文。サッポロラガーを注ぎあって乾杯!!乾いたのどに鮮烈が走る。おどろくほど旨い!!嫁さんも「ふひぃ~」と声をあげる。
店内はU字型のカウンターが2つ、W型に連結されている。全部で40人くらい座れるだろうか。おじいさんから若い人まで幅広い客層。みんな笑顔で楽しんでいる。どうやら2階もある様子だ。僕の背中側のスペースには炭火の焼き場があり、ここで鰻を焼いている。ここは鰻の名店でもある。店でも食べれるが、テイクアウトで買っていく主婦の姿も見られる。パチパチジュージューと良い音が背中から聞こえてくる。
さて100種類もあろうかというお品書きの中から僕ら夫婦が選んだのは「タコペケ」「クリームコロッケ」だ。隣のお客さんに届いた「鯉のあらい」を見て僕らも便乗した。
店内はがやがやと心地よい喧騒。この店はお酒は1人3本までというルールがある。しかも外の店で飲んできたお客は入店禁止である。だから必然的に酔っ払いがいない。赤羽はそれほどガラの良い地域ではないが、そんな街中にあり、昼から飲ませる店なのだが、非常に健全な空気が流れる。
「タコペケ」はボイルされたタコであり、わさび醤油で食べるとコリコリと甘い。これは美味だ。名前の由来はわからんが・・・そして「クリームコロッケ」は大ぶりのコロッケが3つ皿に乗り、千切りキャベツも山盛り。カラシとソースをつけてがぶり!!あつあつでジューシー。これは旨い!!!ビールが最高の合わせ技を繰り出す。
さて僕はお酒を欲する。ここのお酒は「金升」だ。その常温を頼むと、皿に載せたコップからナミナミと、そしてこぼれる酒が輝く。高い酒ではないが、甘さと辛さが絶妙でおいしい。生酒もあるが、今日は大衆的な酒が良い。嫁さんはチューハイが飲みたいとおばちゃんに話しかけ、チューハイとレモンチューハイの違いや、ジャンボチューハイ、略して「ジャンチュー」と言うものの講釈を受けている。結局レモンチューハイを注文し、瓶詰めのタカラチューハイとジョッキとレモンをもらっている。とてもさわやかでうまそうだ。
「鯉のあらい」は鯉独特の身の感触が嫌いな人も多いだろうが、とてもねっとりと甘く、僕は好きだ。ここの鯉はとてもおいしい。鰻と言い、川魚には自信がある様子だ。メニューにはすっぽんもあり、1,200円ですっぽん鍋も食べられる。亀好きの僕は一生すっぽんを食べないと心に誓っているため触手は働かない。しかしどこかでお客が注文したらしく、板前のおっさんがすっぽんを1匹持って店の外へ。商店街にせり出した野外調理場ですっぽんの首を一刀両断。そのまま首を下に向けて中ジョッキの上に固定。どうやら生血を搾り出しているようだ。その後首のないすっぽんを捌き、ボールに入れて厨房へ戻っていった。突然のすっぽん解体ショーに、道行く人のみならず、店内で飲んでいる人の多くも釘付けだった。
もう少し食べたい僕らは追加で「いかげその天麩羅」を注文。僕もチューハイに切り替え嫁さんとおしゃべりだ。嫁さんの両親は埼玉で床屋を営んでいる。お父さんは身体を壊し、今はお母さんが切り盛りしている地元密着型の暖かい床屋さんだ。そんな身体を壊したお父さんは、その昔ここ赤羽の床屋で仕事をしていたのだ。嫁さんが生まれたのもここ赤羽。いわば思い出の地なのだが、嫁さんには詳しい記憶が薄いらしい。お母さんに聞いたのだが、昔はお父さんもこの「まるますや」でお酒を飲んでいたらしい。といことは嫁さんは親子2代でここの世話になっている。不思議な縁だ。素敵な縁だ。お父さんなら何を食べて何を飲んでいたのだろうか?と嫁さんはしきりに繰り返す。今は一緒にお酒を飲めはしないが、お父さんがいた空気の中で酒を飲むのも悪くない。心の中でお父さんにグラスを掲げる。元気になってもう一度酒を飲みましょう、と。
「いかげそ天麩羅」は本日最高の味。さくさくもっちり、イカゲソの醍醐味を余すとことなく引き出した芸術品だ。隣の人が食べている「たぬき豆腐」や「うなぎ肝焼き」「まぐろぶつ」など、食べたいものは数あるが、そろそろ満腹だし、規定の3杯到達。嫁さんも昨夜からの飲み疲れでほろ酔い状態。ぼくらは店を後にした。
赤羽の町を歩きながら、途中のコンビニでアイスを買い、てくてく歩く5月の夜。まだ夜は肌寒いが、もうすぐ初夏がやってくる。その先には暑い夏が・・・ちょい憂鬱。
さあ連休も折り返し。2日連続おいしい酒を飲んだし、嫁さんのお父さんの若い頃の空気を吸った気がする。明日は嫁さんの実家に出向き、両親に親孝行のひとつでも。

祝!甲子園!!

2007-07-27 18:36:56 | Weblog
今回はお酒とは関係なく、臨時便!!

我が母校、東福岡高校、晴れて甲子園出場決定!!
8年ぶりの甲子園、とにかくおめでとう!!!

ホークスもここ最近調子出てきたし、良い夏をすごせそうな
予感。

では今夜は東福岡に乾杯!!!(やっぱり酒か・・)

燃えよドラゴンズ

2007-07-23 08:36:20 | Weblog
名古屋出張の最終日。今夜の宿は岡崎だ。いつもは名古屋市内か岐阜にしか泊まらない僕だが、愛知県の他の町にある居酒屋探索にも乗り出したくなり、今夜は岡崎に宿を取った。
岡崎と言えば徳川家康の生まれ故郷。時の勢力者今川義元の人質として、ここ岡崎から出て行った家康のゆかりの地だ。他に有名なのは日本人初のF-1レーサー中嶋悟の生まれ故郷というくらい。僕にはこれくらいしか知識がない。
さて地図を見ながら初めて泊まるホテルに辿り着き、とりあえず部屋に荷物を投げ捨ててフロントへ。フロントの従業員に岡崎の古い居酒屋と飲み屋街の情報を聞く。地図を描いてもらい、2店ほどお勧めの店を聞き出した。そのうちの1軒を電話で予約しようかとしきりに話してくるが、自分の足と目で決めるとやんわり断りホテルを出る。
ホテルを出て町と思われる方向へぶらぶら歩く。なんとなく振り返るとそこに岡崎城がきらびやかに聳え立つ。薄明るくライトアップされた岡崎城の神秘さを味わいながら古い町並みを歩く。思いっきり城下にあるホテルから町へ続く道には、いくつもの古い建物が残り、良い情緒がある。大通りまで突き当たり右へ折れる。しばらく良くと大きな橋が架かっている。川の名前は「乙川」。橋の上で心地よい風を浴びながら眺める岡崎城が幻想的で美しい。そんな夜風を浴びながら、繁華街と思われる界隈に足を踏み入れた。
駅を中心に狭いが一応繁華街はある。いかがわしい看板は目につかなかったが、健全な町なのだろうか?
さてホテルのフロントで教えてもらった店を物色するが、僕の好みではない。更に町を歩くが、中々大衆的な良さそうな店は無い。駅の向こうにも足を伸ばすが、ちょっとしゃれた焼き鳥屋くらいで収穫なし。仕方なく再度駅を潜り周辺をぶらぶらすると、線路沿いに屋台のような物が並ぶ一角を発見!線路の降下に寄り添うように掘っ立て小屋のような小さな店が並ぶ。看板を見ると「えいこ」「きく」「しの」など、女将さんの名前を称した店ばかり。今日は木曜日だが15軒位並ぶその通りの看板は半分も灯が入っておらず、殺伐とした雰囲気だ。営業している店を外から除くも、活気もなく、不穏な空気を感じるため、情報のない僕は見切りをつけて歩き出す。なかなかディープな空間を見つけたが、あまりの活気の無さ・・・残念。
しばらく町を探索し、岡崎の町の地理が頭に入りかけた頃、1軒の店を発見。角が寿司屋になっており、隣に同じ名前の居酒屋が。寿司屋と居酒屋が中で繋がる店に悪い店は少ない!経験上発見した法則に則り、今夜はここで酒を飲むことを決意し店に近づく。
店の前まで来ると「昨日中日ドラゴンズが勝っていれば生ビール半額」の文字が。昨日の結果は知らないが、強い中日のことだ。あやかれればとの期待を胸に、いざ入店。そして驚愕・・・店内部は右側が20人も座れるかというカウンター。左側は店の規模にしては広すぎる程の座敷になっており、なぜか客の全員が僕のほうを見ている。「んっ!」と思い視線を見返すが、どうやらお客の視線の先は僕ではなく、座敷の端に置かれている大型薄型テレビに集中している。よく見ると店内には所狭しと貼られた中日ドラゴンズの旗、写真、ユニフォーム、半被。更に驚くにのはずらりと並んだドラゴンズグッズ。人形、メガホン、記念のお酒や選手カードなどなど・・・そうかここはドラキチが集まる店なのだ。ようやくそれをわずかな一瞬で理解した僕は、カウンター端に腰を下ろした。
さあ、昨夜の試合結果は知らないが、とりあえず生ビールを注文。頼みますよ、落合監督。
届いたビールをグビリとやりながら、僕の視線も大型テレビへ。残念ながら今夜のドラゴンズは2-0で負けている。そのせいか店の中の雰囲気も暗い。客は7割がた入っているのだが、聞こえてくるのはテレビの実況の声と、お客のため息ばかりだ。
お腹が減った僕はこれといった特徴も輝きも無いメニューの中から「どて煮」と「さば塩焼き」を注文し、ビールを煽りながらテレビと店内を眺める。ここまで揃えば称えてやりたいと思えるほどのドラゴンズグッズは、野球好きの僕の目を飽きさせない。様々なものが並ぶ中、セリーグ優勝記念の盾や写真を見るが、残念ながらその年の日本シリーズでは我がホークスがドラゴンズに勝ち、初めての日本一に輝いている。僕はドラゴンズファンの前ではそのことを話せない。だから大人しくしている。
届いた料理をつつくが、特においしいものでもない。追加でビールを飲みながら、試合の経過を見守る。ようやく回ってきたドラゴンズのチャンスのようだ。テレビのかぶりつきの席に陣取り、さっきから陽気に焼酎を開けていたおじさんが「代打、立浪」と大声で叫びトイレへ。その声を追うように、テレビから「代打、立浪」のアナウンスが聞こえる。思わず笑いながらお隣静岡県の銘酒「花の舞」を熱燗でもらう。
熱々の燗酒をすすりながら、立浪がチャンスを活かせずドラゴンズの敗色が濃厚になっていく様を見守る。店内は一層よどんだ空気に。板さんも心なしか活気が無い。ドラゴンズが勝っている時にくれば、間違いなく楽しめる店だろう。ドラゴンズが勝ってないと注文も少なく、店も儲からない仕組みが妙に笑える。
お燗を飲み干したところで、8回裏に僕はマウンドを降りる。つまりお会計だ。予想より大幅に会計が安いのは、昨夜ドラゴンズが勝った証拠だろう。おかげで得をした。
背中に感謝をこめながら、グランドを去る僕。本心はドラゴンズが勝とうが負けようが関係ない。今夜のホークスの結果を見にホテルへ急ごう。
(しかし今夜は木曜日。パリーグは試合が無いことに、彼は気づくことは無かった)

身体が資本

2007-07-10 10:39:41 | Weblog
恒例の名古屋出張。いい加減読む人も飽きただろうが、毎月毎月1週間、僕は名古屋の住人になる。さて今夜はどこへ出かけようか?
名古屋の名店「大甚」からホテルへの帰り道に以前発見した大衆的な店へ行ってみよう。
ホテルを出て大通り公園を足早に横切り、アップルストアの前を抜け、栄の町へ突入。場所を思い出しながら辿り着いたその店の名は「酒忠」。街角にひっそりと佇むそのたたずまいは親父の集う空気ぷんぷんだ。
ガラガラとガラス戸を開けて店内を見渡すと、目の前に長いカウンターが延び、椅子はずらりと20脚はあろか。程よく一人客が陣取り、店内左のテーブル席には団体のおじ様たちが陽気な声をあげていた。僕はカウンターのやや中央右側に陣を構え、とりあえずおばちゃんにキリンラガー大瓶を注文した。ビールが届くまで、目の前のカウンターの作り台に載せられた多彩な料理に目を奪われる。たけのこの炊き合わせ、イカと大根の煮物、鰺の南蛮漬け、ポテトサラダ、厚揚げ、里芋煮、ジャガバタなどなど、その数30種類といったところか?素晴らしい品揃えだ。
届いたビールをおばちゃんに注いでもらい、名古屋初日の夜に乾杯だ。歩いてきただけにのどに苦味が突き刺さる。爽快なり爽快なり。日増しに暑くなりつつある今日この頃。夏のきらいな私の夏の楽しみと言えば、冷えたビールと夏休み。
さあつまみを頼もう。どさりと並ぶお惣菜の中から「鰺の南蛮漬け」と「里芋煮」を注文した。ビールを飲みながら店の観察に入る。僕の左隣ではハンチングを被った渋いおっさんが、分厚い小説片手に熱燗をちびちび。右隣には部長クラスの会社員風のおじ様が、日経片手にビールをグビリ。テーブル席のおじさん達は、全員が常連の様子。ホステスのくどき方なるおもしろい講釈を大きな声で語り合う。女性客のいないこの空間ならではだ。
カウンターに立つおじさん(店主)はなにやら覇気というか元気がない。僕の注文にも温い返事でしかめっ面。愛想が悪いのかなんなのか、あまりいい気はしない。
奥の厨房からおばちゃんが運んできた「鰺の南蛮漬け」は20cmもあろうかと言う鰺の素上げに、にんじんやたまねぎ、ピーマンの細切が和えられた南蛮だ。早速箸を伸ばすが・・・
これは上手くない。衣がダルダルでぐちゃぐちゃ。巣の加減も悪く、酸っぱくも甘くもなく、安い味。その酢をしっかり含みすぎた衣は、鯵の身にまでまずい酢を浸透させている。これは食べれない。まずいものでもたいがい食べれる僕でも無理だ。すかさずビールで口を直し、「里芋煮」を試食。こちらはもちもちの里芋を上手に煮込んであり合格点。先ほど南蛮漬けでこの店の料理感覚を疑ったが、どうやら普通のレベルのようだ。一安心。
それは置いといて、とにかく店主が冴えない。ため息つきながら、力なくカウンター内の椅子に腰をかける。そしてやたらとおばちゃんに対する言葉遣いが荒い。目の前で見ていて非常に不快だ。しかしどうやらこの店主、今日は体調が良くない様子。お年のせいもあるだろうが、咳き込み、ふらふらしている。カウンターの常連さんも店主の身体を気遣う言葉を残し、席を立つ。予約の団体が入ってなければ休みにしていたのだと店主はこぼす。
そうなのね?わかるけど客商売はそれじゃあいかんよね。やるからにはしっかりやらねば!!ということでなのかはわからないが、とりあえず酒を注文。カウンターの背後に並ぶ酒の棚を凝視し、「司牡丹」を熱燗で注文だ。ずらりと並ぶ酒瓶の中から目当ての酒を抜きながらおばちゃんが言うには、ここの酒は全て統一価格とのこと。つまりどれを飲んでも同じ値段。好きな味を飲むか、得するために高い酒を狙うか、それはお客の自由。おもしろいスタンスだ。ちなみに他には「真澄」「吉乃川」「立山」「男山」「剣菱」「じょっぱり」「加茂鶴」など、どれも同じレベルの渋い品揃えだ。
ゆっくり湯煎されたと思われる熱燗は上々の出来。ゆっくり酒が血管に解けていく。ああ、心地よい。里芋を時々口に運び、そのねっとり感をあじわいながら、熱燗で全てを流し込む。いや~良い空気だ。
もう少しつまみを取り長居しても良いところだが、やはり店主の身体が気になるところ。
今夜は僕も早めに床につこうか。会計を済ませると背中にかかる「今夜はもうしわけないです」との店主の声。いえいえ、身体あっての店経営ですから。長く続けていただくためにも、身体はお大事。
そんな僕も飲み歩くのが大切な趣味。だから僕も身体を十分大切にせねばね。