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出会頭

2006-11-23 01:33:47 | 野生のチューリップ
今朝バス停までの道、
ぼーっとして歩いてると
すれ違い様に奇声を発した自転車男がいた。

変なひとかと思い
何もなかったよに歩き続けると
その自転車男はあたしの名を呼んだ。

振り返るとそこには
19歳のときにバイトしてた近所のディスカウントショップで密かに恋心を抱いてた、
年上のモルモットのよな印象を与える男が自転車にまたがっていた。

言葉を交わすのはまさに10年ぶりで
「覚えてる?覚えてる?」と彼は繰り返した。

そのディスカウントショップは
当時は珍しい時給1000円に惹かれたあたしが
人生で最初に労働した場所で
仕事内容はレジ打ちと品出しだった。
客層も店員も柄の悪い店だった。

いっしょに働いてたのは
18歳の高校生と不倫して、その男の子を妊娠しちゃった主婦とか
冬には明け透けで寒い1階のレジを必ず押し付けてくるおばさんとか
親と共謀して親の買い物はいくつもレジに通さずに精算するオナ中卒の女先輩とかで

客といえば
万引きは頻繁だったし
エロビデオ3本1980円をにやにやしながら買ってくおっさんとか
たくさんの買い物の下のほうにコンドームを隠してるおばさんとか
1000円近くの合計をすべて1円や5円の小銭で払うおばさんとか
くしゃくしゃのスーパーの袋を持参して万引きする幸薄いお姉さんとかだった。

そこであたしはオナ中の女先輩に軽くいじめられてた。
アルバイトは中卒や高卒がごろごろしてる中で
大学生活を送ってたあたしは心のどこかで彼らを見下していたのかもしれなく
それが鼻に付いたのかもしれない。

休憩時間をぴったり守るところも
杓子定規的で鼻に付いたのかもしれない。

そんな中でモルモット男はペットコーナー担当で
親切で気立てのいい店員だった。

いつしかこれまたオナ中の後輩の女のこと付き合ってることがわかって
あたしの恋は密かに幕を閉じた。

10年ぶりに会ったモルモット男はやはり老けたけれど
相変わらずいい雰囲気を醸し出してた。

朝から顔に力が入ってなく油断してたあたしは咄嗟に
「連絡先教えてくださいよ、また飲みにいきましょう」と
飲みに行ったこともないのに口走っていた。

携帯の番号を教えてくれたあとに
「ワンコールしといて」と言い残して彼は颯爽と去っていった。

いい思い出は何ひとつないけれど
あの店はあたしが最初に垣間見た社会の厳しさだったと思う。

モルモット男とはおいしい酒が飲めそうだ。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
多分... (エ(ア)ロダンサー)
2006-11-24 00:30:05
撒餌なんだろうけど、

>オナ中の後輩の女のこと

アナタは誰にとってもオナ中の先輩だよね。
返信する
Unknown (アキ男。)
2006-11-26 00:31:51
是。
返信する

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