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記者会見を行う「九条の会」の呼びかけ人で作家の

澤地久枝さん(中央)ら=27日午後、東京都千代田

区、鬼室黎撮影

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 日本国憲法の施行70年となる5月3日を前に、護憲派の文化人らでつくる「九条の会」が27日、東京都内で会見を開いた。改憲に意欲を示す安倍政権が「暴走をエスカレートさせている」として、改めて護憲を訴えるアピール文を発表した。

 呼びかけ人の作家、澤地久枝さん(86)は「憲法を変える動きが露骨になってきた。力の均衡が崩れてきた今、憲法が問われている」と述べ、改憲を阻むため、国民それぞれが行動を起こすよう求めた。

 アピール文は、日米の軍事同盟を背景に安倍政権が、集団的自衛権を認める閣議決定安全保障関連法の制定などを強行したと指摘。軍事的挑発を繰り返すトランプ米政権を支持する政治が「アジアの緊張を高め、戦争と武力衝突の危険を拡大する」と批判した。

 そのうえで、安全保障関連法の廃止や「共謀罪」の趣旨を含む組織的犯罪処罰法改正案の廃案、改憲の阻止が「現状に危惧をもつ世界、とりわけアジアの人々、国々に対して、9条をもつ日本の私たちに課せられた責任」と強調した。

 会では今後、ホームページにアピール文を載せて発信するほか、講演会を各地で開いていく。(岡本玄)

 

「日本国憲法施行70周年にあたって」

九条の会

 日本国憲法は今年、施行70年を迎えました。この70年、この憲法を「改正」しようとする攻撃が絶え間なくおこなわれてきたにもかかわらず、「再び戦争をしない」と決意した私たちは「9条守れ」の運動をねばり強く展開し、これをはねかえしてきました。

 しかしいま安倍政権は、アメリカに付き従った軍事同盟を背景に、「国益」、「安全」の口実のもと、集団的自衛権容認の閣議決定をおこなうとともに、秘密保護法制定、武器輸出三原則の撤廃、国家安全保障会議の設置、日米ガイドラインの締結、そして戦争法制定などを強行してきました。さらに通常国会冒頭の施政方針演説では「次なる70年に向かって」憲法「改正」を提案すると明言するなど、歴史逆行の暴走をエスカレートさせています。

 いま、アメリカではトランブ政権が誕生し、アジアでも大国主義的行動や軍事的挑発が繰り返され、20世紀以来の世界がめざしてきた戦争違法化の流れに逆行する軽視できない動きが強まっています。

 安倍政権の暴走は、こうした世界の逆流に便乗し、軍事力や恫喝が幅をきかす世界の中で、強国の一員としての座を占めたいという野望に基づいています。4月7日のトランブ政権によるシリア攻撃に対しても安倍首相はいち早く「米国政府の決意を支持する」ことを表明しています。こうした安倍政権の政治がアジアの緊張を高め、戦争と武力衝突の危険を拡大するものであることは明白です。

 こうした流れに対して、世界でも、武力や恫喝による解決に反対する市民の声が、当のアメリカも含めて噴出しています。9条を掲げる私たちの運動は、平和な世界の構築に向けて、その先頭に立って積極的な役割を果たすべき立場にあります。

 同時に、戦争法を廃止すること、南スーダンから自衛隊を即時撤退させること、沖縄辺野古、高江の基地建設を阻むこと、共謀罪法案の成立を許さないこと、何より明文改憲に「NO」をつきつけることは、日本国民を強権で統治して物言わぬ存在にしてしまおうとする安倍政権の企みを打破し、現状に危惧をもつ世界とりわけアジアの人々、国々に対して、9条をもつ日本の私たちに課せられた責任です。

 戦争法廃止の運動のなかでは、立憲主義擁護の一致点にもとづいてかつてない共同が実現しました。南スーダンからの自衛隊施設部隊の撤退決定もその運動の成果です。安倍政権の暴走にストップをかけるのはこの共同をさらに大きく、強固なものにしていく以外にありません。そして安倍政権を退陣においこむことです。

 13年前、九条の会の出発に際して発表した「アピール」の言葉を、いま、あらためて掲げます。「日本と世界の平和な未来のために、日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、『改憲』のくわだてを阻むため、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めることを訴えます。」

2017年4月27日