私訳 ラームチャリットマーナス

中世ヒンディー語の宗教詩人、トゥルシーダースの、「ラーマーヤナ」の私訳。

少年の巻 208

2015-07-31 09:32:19 | ラームチャリットマーナス
2081 このきわめて不愉快な言葉を聞き、ダシャラタ王の心は震え上がり、その顔の輝きは失せた。王は言った。「バラモンよ、わたしは晩年になってやっと、これら四人の息子に恵まれました。あなたの言葉はよく思案したものであるとは思えません。

2082 ムニよ、土地、雌牛、財物、財宝を要求しなさい。わたしは今すぐに喜んで自分の全財産をあなたに与えるでしょう。身体と命以上に愛しいものは他にありません。しかし、それらすら、ムニよ、わたしは瞬時にして与えるでしょう。

2083 息子たちはすべて、わたしには命に等しく愛しいのです。主よ、どうしてもラーマをあなたに委ねることはできません。ああ、一方では、とても恐ろしい、酷薄な羅刹たち。もう一方では、まだうら若い、わたしの可愛い息子たち」

2084 愛情の液汁を混ぜ合わせたような、王の言葉を聞き、賢明なヴィシュヴァーミトラ・ムニは、心に喜んだ。そこでヴァシシュタが様々に王を説得した。やがて王の疑念は消滅した。

2085 王はとても恭しく二人の息子を呼び寄せ、胸に抱きしめ、色々と教示した。さらに王はムニに言った。「主よ、この二人の息子はわたしの命です。しかし、ムニよ、今やあなたこそ彼らの父に他なりません」

208do 王は息子たちを様々に祝福した後、彼らをリシに委ねた。それから主ラーマは母の宮殿に赴き、彼女の足元に低頭してから出発していった。

208so 人間の中での獅子である、二人の勇者は、ムニの恐怖を払うために、喜んで出発した、恩恵の海であり、思慮深く、すべての世界の原因の原因である彼らは。

少年の巻 207

2015-07-30 08:01:34 | ラームチャリットマーナス
2071 ダシャラタ王はムニの来訪の知らせを聞くと、バラモンたちを伴って迎えに出た。王は五体投地の礼をして、ムニに敬意を表してから、案内してみずからの王座に座らせた。

2072 王はムニの御足を洗い、大いに礼拝した。王は言った。「今やわたしほど幸運な者は他にいません」そして様々な食事を供した。大聖は心に大きな喜びを覚えた。

2073 それから王は四人の息子をムニの足元に平伏させた。ラーマを見て、ムニはわれを忘れた。まるでチャコール鳥が満月に魅せられるように、ムニはラーマの美しい顔を見て、有頂天となった。

2074 そこで王は心に喜び、次のように述べた。「ムニよ、あなたからこのような恩恵を賜ったのは、これが初めてのことです。どのような理由で来訪なさったのですか。どうかお話しください。あなたの命令をわたしは、たちどころに実行することでしょう」

2075 ムニは言った。「王よ、アスラの群にわたしは苦しめられている。そこでわたしはあなたに懇願するためにやって来たのだ。ラーマを弟とともにわたしに委ねなさい。羅刹たちが殺戮されて初めて、わたしは安心することだろう。

207do 王よ、喜びの心でわたしに二人を委ねなさい。迷妄と無知を捨てなさい。そうすれば、あなたは善果と名声を得ることだろう。二人は大きな幸を得ることだろう」


少年の巻 206

2015-07-29 10:39:07 | ラームチャリットマーナス
2061 これらすべての行状をわたしは歌った。その後の物語を、心をこめて聞きなさい。賢者・大聖ヴィシュヴァーミトラは、森を聖なる場所と考え、そこに庵を結んでいた。

2062 ムニはそこで念誦、ヨーガを修し、犠牲式を執り行っていたが、羅刹のマーリーチャとスバーフを非常に恐れていた。彼らは供儀を目にするや、襲撃し、騒乱を引き起こした。そのことでムニは心を痛めていた。

2063 ヴィシュヴァーミトラの心は不安で満たされた。ハリに頼らなければ、これらの罪深い羅刹たちは死ぬことはないであろうと、考えた。その時、大聖は思いついた。「大地の重荷を除くために、主はすでに権化している。

2064 羅刹たちのことを口実にして出かけ、主の御足に見えよう。嘆願の上、二人の兄弟を連れて帰ろう。知識と脱俗とあらゆる美点の家である主を、目いっぱいに見ることにしよう」

206do 様々な願望を抱きながら、ヴィシュヴァーミトラはたちまち都に着いた。サラユー川で沐浴してから、王宮に赴いた。

少年の巻 205

2015-07-28 08:07:50 | ラームチャリットマーナス
2051 ラーマは弟や朋友を呼び寄せ、彼らを引き連れて、いつも森に出かけて狩りをする。聖なるものと心に見なしつつ、獣を殺し、毎日、父王に見せにやって来る。

2052 ラーマの矢で殺された獣は、肉体を脱し、天国に赴いた。ラーマは弟や朋友とともに食事をする。両親の命令に従う。

2053 恩恵の倉であるラーマは、都人たちが喜ぶような行状を行う。ヴェーダやブラーナに熱心に耳を傾け、弟たちにみずから説いて聞かせる。

2054 ラーマは早朝に起きると、両親と師に低頭する。彼らの許可を得てから、都のための仕事を行う。ラーマの行状を見て、王は心に喜ぶ。

205do 偏在し、部分を持たず、意欲を持たず、生誕がなく、属性がなく、名前も姿形もない主が、バクタのために、様々な素晴らしい行状を行う。 

少年の巻 204

2015-07-27 10:31:28 | ラームチャリットマーナス
2041 ラーマの非常にあどけない、愛らしい児戯は、サラスヴァティー女神、シェーシャ蛇、シヴァ神、ヴェーダによって称賛された。その児戯に心が愛着することのない人々は、運命の神に見放された。

2042 四兄弟が少年の年齢に達すると、すぐに師と両親は彼らの入門式を執り行った。それからラーマは兄弟たちとともに、勉学のために師の家に赴いた。そして短期間の内にすべての学問を習得した。

2043 その生来の呼吸が四ヴェーダであるハリが、その四ヴェーダを学んだということは、とても興味あることである。彼ら四兄弟は、学問、礼節、徳性、品行において、特に秀でており、かれらはみな王様ごっこの遊びに興じた。

2044 彼ら四兄弟が手にする弓と矢が、とても美しく映え、彼らの姿を目にすると、有象無象はすべて魅惑されてしまう。彼らが遊びながら路地を通り過ぎるたびに、その路地にいる男女はみな、彼らを目にするや、茫然と立ちつくしてしまう。

204do アヨーディヤーに住む、すべての老若男女は、恵み深いラーマを、命よりも愛しく思っている。