お風呂の設計において浴槽の選択肢はたくさんあります。
FRP(ポリバス)、人工大理石、鋳物ホーロー、木、タイルや石張等。
浴槽の選定にあたっては、予算や建主さんの好み、メンテナンス性等、様々な条件を検討して決定します。
私たち自身、どの浴槽のお風呂も造らせていただいたことがありますが、
いずれも素敵なお風呂が出来上がっています。
特徴的なものとしては、
槙(まき)の木の浴槽は良い香りでとてもやわらかい雰囲気のお風呂になりましたし、
石張りの浴槽は重厚な雰囲気で、いずれも温泉旅館のようでした。
今回は「熱」という条件に絞って浴槽について思いつくままに書いてみたいと思います。
日本人にとって浴槽に求める重要な機能が、お湯につかって体を温めることだと思います。
そのことについて、ずっと思っていたことがあります。
まずは鋳物ホーローについて。
鋳物浴槽は主に鉄(金属)です。
金属は熱伝導率が高い(熱を伝えやすい)ので、お湯を張ると浴槽自体もお湯と同じ温度になります(一般的な水位の場合)。
浴槽に入った時に、肩や首のお湯から出ている部分もそれによって温めることができるのでとても温まります。
古い家によく見かけた五右衛門風呂も鋳物です。
昔の人が、五右衛門風呂はよく温まると言っていたのを聞いたことがあります。
お湯で浴槽が温まるのにに加えて、
五右衛門風呂は鍋のように薪で下から直接沸かすので、
火が消えても残る「おき」によって遠赤外線効果も加わるのではないかと想像します。
(五右衛門風呂は今も製造されています)
上記の中で熱伝導率が最も低い(熱を伝えにくい)のが木の浴槽です。
じゃあ不快かというと、そうではなく、これもとても気持ちが良いのです。
私が子供の頃に住んでいた家は、薪で沸かす木の浴槽でした。
子供だったので、温まるということについてはそれほど意識していませんでしたが、
その頃のことを思い起こすと、とても快適だったのだと思います。
木は熱伝導率が低い(熱を伝えにくい)ので触ったときに冷たく感じません。
お湯の外にある首や肩の体温を奪われないためなのだと思います。
思いついたままに書きましたが、
浴槽の選択には「熱」以外の条件もあります。
浴槽一つとってもとても奥が深いですね。