練習オタクの日々

3日ぼうずにはしたくありません!この日記とピアノのお稽古。練習記録とその他読書などの記録をつけておきます。

『フィッシュストーリー』 伊坂幸太郎

2007-07-23 | 読書
今のところ出版されている伊坂作品を全部読んで、
最後にこの『フィッシュストーリー』にたどり着く。
そうすると、あのしかけが思う存分楽しめる!
そう、あの人、この人、いろんな作品に出てきた愛すべきキャラクターが
あちこちに再登場するのだ。
しかも、今回は装丁までもどこかで見たような・・・。

でも、やっぱりすごいのは、どの新作も以前の作品の二番煎じではないところ。
今回は初の短編集である。
そしてまた、いろんなアイテムのてんこもり。
教訓的セリフ、言葉の遊び、ビートルズへのオマージュ、謎解き、時系列でないストーリーの面白さ、ふるさとをリスペクトする信念・・・

どうして伊坂作品にこんなに惹かれてしまうのかな~と考えてみたが、
多分、と思える理由がふたつばかり見つかった。
ひとつは、適度なありえなさがいい、ということ。
あまりにも日常日常している話は共感できるけど、つまらない。
あまりにも現実離れしていても理解できない。
えっ?と思うような変なキャラクター、シチュエーション、
それが私の興味を存分に湧かせる程度にちょうどいいのだ。

それからもうひとつ。
恋愛小説でないということ。
もちろん、恋愛中の男女が登場したり、恋愛という感情をふくむいろんな愛情によって登場人物は動いている。
けど、メインに書かれていることは、およそ恋愛とはかけ離れているといってもいいくらいのへんてこりんな人たちによるへんてこりんな行動だ。
私はもともと、他人の恋愛にほとんど興味がないようなのだ。
伊坂作品を読んでいると、人生ほかにもいろんなことがあるよ。
それに恋愛以外にも楽しいことってたくさんあるし。
という気分にさせてくれるのだ。

そんな私も、恋愛には鈍感かもしれないけれど、親子の愛情とか、友情、みたいなものには結構敏感に反応してしまう。
だから「ポテチ」という作品にはちょっとぐっときてしまった。
泥棒青年がポテチを口いっぱいにほおばりながらボロボロ涙してしまうわけ、
ラストにその理由が分かったところでこっちまでポロポロきてしまいそうになった。

どの短編も面白くて感動的でカッコよいです。