魚鳥木、申すか?申さぬか?

ぎょ・ちょう・もく、申すか?申さぬか?
申す!申す! 魚⇒ニシキゴイ。鳥⇒ニホンキジ。木⇒制定無し、花は桜と菊

『臨湖亭奇譚』 倉橋由美子著④

2017年07月18日 | 読んだ本
『臨湖亭奇譚』 倉科由美子著③ からの続き

つづいて「撥弦楽器を弾く女性」についてだが、
「琵琶行」で使用されている楽器は、
「忽聞水上琵琶聲」と有るように
「琵琶」であり、「臨湖亭奇譚」では、
南インドの撥弦楽器である「ヴィーナ」であった。

インドには構造(瓢箪の共鳴器を使用している)
もよく似て、神秘的な音を奏でる撥弦楽器の
「シタール」という物も有るにもかかわらず、
「ヴィーナ」を登場させた理由は一体どう言う
意図があったのであろうか?

理知的な音色のシタールに対して
官能的な音色のヴィーナのであるから
選択されたのか?

楽器の名称が女性の美しさを表現する際の
比喩として用いられたり、
愛神の代名詞としても用いられたりする、
日本語読みの「ヴィーナス」に通じるからで
あろうか?

今となっては確認する術が無いことが
悔やまれる限りである。

演奏者が奏でる音色について、
「琵琶行」では、琴の音の様子が、
みやこ風の趣がある調べになっていることを
切々と詳細に表現しているが、
「臨湖亭奇譚」では、妖しい音楽と
表現しているに留まり、音色について多くは
表現していない。

それは、叙事詩である「琵琶行」では、
この音色その物が重要なのであり、
「臨湖亭奇譚」では、
「Cocktail story酔郷譚」と言う
題名が示す通り、お酒をもって夢幻能的な
世界観を表現する作品であるから、
音色その物に対し夢幻能的な世界観を
強く印象させないための表現方法だと
言えるのである。

『臨湖亭奇譚』 倉橋由美子著⑤へ続く

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