みんなで学ぼう！バルカン半島ⅧⅩⅨ

　1859年、オスマンの北東部の隅っこで、ブルガリアは一応王様が居たので自治権を与えられていました。
それが露土戦争の結果のサン＝ステファノ条約締結により奇跡の復活を遂げます。
露「ブルガリアをバルカンの大国として認めよう～」いきなりブルガリ大公国ができます。
トルコ全権のサファット・パシャは涙をぬぐいながらこれに署名します。
それほどにトルコ人にとっては屈辱的な条約なのです。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅧⅩⅧ

　国が滅んでも歴史を覚えていれば復活できることをここから学ばなければなりません。
領土を取られることは決して国が滅びる絶対条件ではないのです。
イスラエルは2000年間流浪の末に復活しました。
国家が滅びるとは、歴史が滅びることであり、国体を奪われることに他なりません。
そうしてみると、日本はまだまだ滅んでいないとも言えるでしょう。
でも、幕末の志士、特攻隊の若者から見れば、今の日本はもう滅んでいると写るでしょう。
三島由紀夫から見ても滅んでいるでしょう。

　しかし、下には下があります。
もう滅んでいるんだからとあきらめてしまったら、もっと滅んでいくことでしょう。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅧⅩⅦ

1241年、トルコに負け、モンゴルに負け･･･。

1330年、ヴェルバシドの戦いでセルビアにも大敗して国は本格的に衰退していきます。

1393年、モンゴル帝国が分裂した頃にオスマン帝国が成立します。
そしてブルガリアはオスマン帝国に吸収されてしまいます。

　そのまま500年間、ブルガリア帝国の栄光は塩漬けとなるわけです。
それにもかかわらず、昔の栄光をひたすら忘れないのがこの国のすごいところです。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅧⅩⅥ

　ビザンチンは逆襲してブルガリアをやっつけます。
ブルガリアはすぐに再興しますが、まもなくビザンチンに本格的に滅ぼされてしまいます。

　1187年、第二次ブルガリア帝国として復活します。イヴァン・アセンⅡ世の登場です。
ビザンツ宮廷でブルガリアVSセルビアVSトルコの三つどもえで抗争が始まります。
バルカン半島は常に三大勢力が争うのが基本です。

　1202年、第四次十字軍ローマ帝国のインノケンティウスⅢ世がビザンチン帝国を踏みつぶしてしまいます。

　ここからブルガリアに長い忍耐の日々が訪れます。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅧⅩⅤ

では大ブルガリア栄光の時代を振り返ってみましょう。

　681年、シメオンⅠ世が登場します。
彼は東ローマ帝国で修道士の修業をやっていた単にマッチョなおじさんでした。
急遽ブルガリアに戻されて王様に祭り上げられてしまいました。
翌年彼はビザンチン帝国をやっつけて賠償金をせしめます。ついでにハンガリーも叩き続けます。
ビザンチンが賠償金を出し渋ったと見るやまた攻撃、更に賠償請求します。
これが第一次ブルガリア帝国の始まりです。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅧⅩⅣ

大ブルガリア帝国の見果てぬ夢

　バルカンには誇大妄想が充ち溢れています。
でもその元になる過去の栄光が存在します。
　1859年、ブルガリアはバルカンの地図には載っていません。
あるとすればオスマントルコ帝国の北東部に当たるのですが、
なぜ載っていないのかというとこの時主権国家ではないためです。
なのに「俺を帝国として認めろ」と言い出します。
事実上他国に併合されているのに「俺は元皇帝だぞ。帝国として扱え」と運動を始めるのです。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅧⅩⅢ

　では日本はギリシャになれると思いますか？
ギリシャと違って日本は外国から借金しているわけではないので経済学的にありえません。
また、日本人が何一つとして真似しようと思わないことばかりやるのがこの人達で、
文化的にはもっとあり得ないことはお分かりですね。
「日本の国債が破綻する～」と思うなら（自己責任で）ギリシャ国債大量買いをお勧めします。
日本より格付け高いらしいボツワナ国債でも良いでしょう（自己責任で）。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅧⅩⅡ

　1853年、クリミア戦争が始まります。英仏VS露の構図です。ギリシャは当事者三国から一応中立を強制されるのですが、
トルコの敵は自分の味方だと言うことで露に加担、山賊と学生がクリミア半島を越えてゲリラとして参戦し出します。

　こんなお茶目なギリシャですがバルカンではまともな方です。
トルコが押さえつけることでまだまだ正気を保てるのがギリシャです。
”古代で終わった国”を近代で復活させてしまったのがそもそも間違いの始まりで、
映画『ナバロンの要塞』で有名な対ナチパルチザンでずっと抵抗し、イタリアに勝ってしまうほどです。
ギリシャはゲリラではありますが戦闘には強いと見るべきでしょう。
ドイツは何とかギリシャに勝ちますが、ユーゴに泣かされてバルカンから逃げ帰ってしまいました。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅧⅩⅠ

　欧米で出版されたベルサイユ会議関連の書籍においては、
現在においても英代表ロイド・ジョージ、米代表ウッドロー・ウィルソン、仏代表クレマンソー、伊代表オルランド、
日代表だれだっけ？？というありさまです。
大日本帝国全権大使西園寺公望は欧州では知名度がありません。
小国ギリシャのヴェニゼロス首相の方が圧倒的に知名度が高いのです。
当時ヨーロッパの人々は、頭のおかしな米大統領ウィルソンがヨーロッパのもめ事に口を挟んでかき回すため、
全く利害がなく公正な大国である大日本帝国を頼って来ています。
しかし西園寺や牧野伸顕は巻き込まれるのを嫌って会議では黙ったまま発言主張をしようとしませんでした。
当時サイレントパートナーと評されました。
でも外交官で役割を求められているのに発言しないのは役職放棄と同じです。

残念ながらここから日本外交は国際的に評判を落としていきます。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅧⅩ

　その翌年、共和制を止めて王政にしようということになり、英露仏が保証人になり世襲制の君主国を目指します。
何と、今度はドイツから王様を招聘してくるのです。これがまた17歳と若くてドイツ語しかしゃべれません。
もちろん古代ギリシャとは縁もゆかりもなく、国民との一体感もへったくれもありません。
以後王党派と共和派の2大政党による政権交代が100年続き、王様と首相がいつもケンカしているありさまです。
とはいうものの、ヨーロッパの王様はどこもこんなもので、
この時期のドイツは王様の輸出で生き延びているといえなくもありません。

　とにかく日本の天皇と国民の絆とは全く違います。
世界中で王政が廃止されても日本の皇室には全く関係ありませんので悪しからず。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅦⅩⅨ

　オスマントルコからの独立戦争の最中にギリシャは共和制を目指して共和憲法を制定します。
日本では、世の流れとして王政の国は滅んで次第に共和制になるのが必然と思われがちですが、
その共和制の中心は伯爵なのです。共和制とはお貴族様が王様の支配を受けたくないからやりたがる制度です。
フランス革命もしかりです。オーストリアのお貴族様たちはハプスブルグ家が戻ってきて主人面するのを最も嫌がります。
一方でヨーロッパの庶民は王政復古をやりたがります。
　で、結局ギリシャ革命後のカポディストリアル初代大統領とはいったい誰なのでしょう？。
その正体はロシア皇帝の外務大臣です。
つまり金日成のような存在といえばわかりやすいでしょう。
しかもこの男、ギリシャの教会、軍、知識層をあからさまに見下しまくって反感を買い、就任翌年に暗殺されてしまいます。
この点、金日成の方がはるかにマシってことですね。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅦⅩⅧ

　ところで、西洋には「ギリシャ」と言うだけでスイッチが入る人達がいます。
例えると、日本においても「アジア主義」という考えがあり、
三国志などの物語、漢詩が大好きで意味不明に中国に心を寄せる方がいます。それの西洋版が「ギリシャ」と考えてください。
その地域の文化や精神の根源が中国やギリシャにあると思っているようですが、大した思想があるわけではありません。
むしろ両者は人類のはた迷惑とも言えるではないでしょうか？。
詩人のジョージ・ゴードン・バイロンらが病弱でお耽美な世界に引き込まれ、ギリシャ独立戦争が始まると

「ヨーロッパの文明の源であるギリシャを異教徒オスマントルコから取り返せ！」

と余計なことを言い出します。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅦⅩⅦ

地図を見るとギリシャはバルカン半島の一番南に位置します。

　近代ギリシャは1821年のギリシャ独立戦争で始まりました。当時、ギリシャは”古代で終わった国”といわれ、
ローマ帝国に吸収されて以降、様々な帝国の領土となりました。
東ローマ帝国はビザンチンのことをギリシャ帝国という言い方もしています。
キリスト教で腐敗したローマを捨てて東に行こうという発想が東ローマ帝国です。
　
　1889年、日本では井伊直弼が安政の大獄をやっている頃のことです。
英仏露の三大国が組んでオスマン帝国だったギリシャを独立させようと画策します。
エジプトはイギリスの属国のくせにトルコに付いて三国にフルボッコにされます。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅦⅩⅥ

日本はギリシャになれるのか？

日本は経済的に破綻してギリシャのようになると警告している経済ジャーナリストや有識者達が日本国内に大勢います。
では本当に日本はギリシャのようになれるのでしょうか？
事実に基づいて検証してみましょう。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅦⅩⅤ

　1774年、第1次露土戦争が勃発します。アメリカ独立戦争の直前です。
露土戦争は全部で何回あるのかはっきりしません。小競り合いが数限りなくあるのです。
18世紀にオスマントルコが衰退してヨーロッパから次第に姿を消していくことになります。
そして1853年、ロシア皇帝のニコライ2世がオスマントルコを評して「ヨーロッパの病人」とまで言われるようになります。露は英に分割を提案します。対して英は「バカいえ、全部俺のもんだ！」。

　パクスブリタニカを主導していた英の大政治家パーマストンは当時内務大臣でした。

ここで
ロシア「やつは外務大臣じゃないから英はクリミアには介入してこないだろ･･･」
トルコ「やつが閣内にいるから絶対騒ぎ出すに違いない！」
と両者それぞれ読んでいました。

実際英国会で
ビクトリア英女王「パーマストン内務大臣、労働問題に関して質問します」
パーマストン「そんなことより女王陛下、トルコとロシアが面白いことになってますゾ！。イヒヒヒッ実は･･･」
クリミア戦争にイギリス乱入となりました･･･

　その後、ケマル・パシャが軍事クーデターでトルコ建国します。
第2次大戦の時は彼はドイツにもソ連にも付かず中立を保ちます。
　強力な軍事力を持っているのに徹底した平和政策をとるのです。
中立を保つためには強い軍事力を持たなければできません。

　ゴルゴ１３は中央アジアだと超人的な活躍をします。ところがバルカン半島ではごく普通の人として振る舞います。
ある意味でこれは大変リアリティーがある劇画だと思います。

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