大震災のおおむね一週間後。
他のところに行くつもりだったけど、こんなときに旅行も心苦しいし、今後余震もどうなるかわからないし、ガソリンも手に入らないので、いったんキャンセルした。
でも、むしろ動ける人は普通に動いたほうがよいと思い直し、行き先を変更して、こんな時だけに宿はどこでも空いていたが、近場で一月にも行った山水楼を予約した。各駅停車で行った。
電車の運行率は60%くらいだった。宿で計画停電に遭遇したらそれはそれで仕方ない。帰りもどうなるか分からなかったけど、まったく電車が動かないことも無いだろうなどと思いを巡らせ、そういう意味で少しスリルのある旅行だった。
行ってみれば「こんな時に来ていただいて」と言うような対応で、とても広い部屋を用意してくれていた。挨拶に来ていただいた女将にお礼を伝えたら、「お好みの部屋ではないかもしれませんが」と恐縮された。部屋の照明はともかく、料理については自家発電があるので大丈夫だそうだ。
20畳に次の間が8畳、それぞれ縁側風の段がついており、トイレも男性用が分かれている二人では広すぎる部屋だった。
実は女将の言うように、どちらかというと広い部屋は好みではなかった。部屋がいくつもあるといちいち動かなければならず、生活しているようで面倒くさい。だから普段は宿代を上げてまで部屋のアップグレードをする気は無く、自分的には8~10畳で椅子とテーブルが付いていれば充分と思っている。
ただ今回は宿の厚意もありがたく、広いなりに快適に過ごせた。
一月に来たときも思ったが、夕方展望風呂に入っていると、食事の準備の甘い天麩羅油の香りが立ち上ってきた。気になる人はいるかもしれないけれど、まあ見晴らしは良く、心地のよい風呂ではあった。
しばらくは旅館業界は厳しくなるのかな。
どんどん行ってあげよう。