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音楽大好き男の徒然なる日記

京アニ事件・青葉被告は「ロスジェネの典型」雨宮処凛氏が見出す格差社会の落とし穴(京都新聞)

2024-01-24 | 日記
もう凶悪事件を起こさない社会にするために・・・
ぜひお読みいただき、考えて下さい。



京都新聞 2024年1月24日付記事
「京アニ事件・青葉被告は「ロスジェネの典型」雨宮処凛氏が見出す格差社会の落とし穴」
 https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1170534
Yahoo!ニュース 2024年1月21日付記事 (タイトル同じ)
 https://news.yahoo.co.jp/articles/f7484aeb55e1fb988dc1522bafc80b8ac949818e


京都アニメーション放火殺人事件の公判は22回に渡る異例の長期審理を終え、
1月25日に判決を迎える。

経済的困窮、孤立、虐待…。
法廷で浮かんだ凶行の深層から、私たちはどんな教訓を紡ぐのか。
事件が現代社会に突きつけた問いを追う。


京アニ事件で死刑を求刑された青葉真司被告(45)は1978年生まれで、
就職氷河期に見舞われた「ロストジェネレーション(失われた世代)」だ。
派遣社員やコンビニのアルバイトを転々とし、一度も正社員になれなかった。

貧困問題に詳しい作家の雨宮処凛さんは「格差社会に苦しんだ典型例」と語り、
不安定な雇用に伴う「生きづらさ」が事件の背景にあるのではと指摘した。


【雨宮処凛氏の略歴】
あまみや・かりん 1975年北海道生まれ。
作家・活動家。
高校卒業後、フリーターを経て2006年から格差や貧困問題に取り組み、
「生きさせろ!難民化する若者たち」など著書多数。
2023年9月に共著「秋葉原事件を忘れない」を刊行した。
秋葉原事件を忘れない


(聞き手)――裁判で明らかになった青葉被告の半生の印象は。
雨宮さん
「事件を起こしたのは彼自身の責任で、少しも正当化できないことを前提に話したい。
 裁判を報じた新聞記事を読んだが、『ロスジェネ』の教科書のような境遇だ。
 コンビニのバイトを8年も続けるなど、勤勉な一面もあり、
 当初は人生を立て直す意欲はあったようだが、
 どこかで『頑張ってもいいことはない』と諦めてしまったのかもしれない」

(聞き手)――青葉被告の人生の分岐点はどこにあったとみるか。
雨宮さん
「仕事をしながら(1998年に)定時制高校を皆勤で卒業している。
 バブル崩壊前なら、どこかの会社から『うちで働いてくれ』と誘いがあり、
 違う人生を歩めた可能性もあったのではないか。
 でも、既にその頑張りをすくい取れる社会ではなくなっていた」


(聞き手)――2009年に郵便局のバイトを辞めてからは無職になった。
雨宮さん
「2000年代後半まで、日本社会には労働問題への理解が全くなかった。
 政府は若者がフリーターになるのを防ぐため
 『人間力を高める国民会議』という的外れな政策をしていた。
 青葉被告が社会に出るのが10年早ければ、バブル崩壊前で就職できただろうし、
 10年遅ければ若者向けの就労支援を受けられた。
 安定した雇用を得られなかった点は、彼だけの責任とは言いがたい」


(聞き手)――青葉被告は仕事を失った後に小説を書き始め、「大物になりたい」と夢を抱いた。
雨宮さん
「悲惨な人生を一変させたい思いが強かった気がする。
 『一発逆転の呪い』は、不遇なロスジェネが陥りがちだ。
 コツコツ努力しても報われないから、突飛(とっぴ)な方法で成功することを夢見てしまう。
 バブルの時代を見てきたからか、
 特に男性は『勝ち組』になりたいとこだわる人が多いと感じる」

(聞き手)――被告は事件を起こすか迷ったが、
       「自分の人生はあまりに暗かった」と考え、京アニスタジオに放火している。
雨宮さん
「小説の盗用も動機として述べているが、
 事件に至った本質的な理由は、人生への絶望ではないか。
 10分以上悩みながら一線を踏み越えてしまうのは、失うものがないからでは。
 2021年の小田急線の殺人未遂事件でも犯人の男はためらいつつも、
 『これまでの人生ってそんなに大事なものだったか』と思い、乗客を襲ったという。
 
 今の日本はいつ暴発してもおかしくない自暴自棄な人を一定数生み出す社会になってしまった。

(聞き手)――青葉被告は、秋葉原無差別殺傷事件(2008年)の加藤智大元死刑囚への共感を口にしている。
雨宮さん
「やっぱりな、と思った。
 当時は格差社会への不満が事件への背景にあると考えられ、
 加藤元死刑囚を英雄視する向きもあった。
 私自身、派遣労働者から『自分も事件を起こすかも』という声を聞いた。
 青葉被告も、その一人だったのかもしれない


(聞き手)――青葉被告と同様、非正規雇用に苦しむ人は多くいる。
雨宮さん
「私はコロナ禍の困窮者支援をしているが、
 非正規で働くロスジェネの40代男性が雇い止めなどに遭い、
 ホームレスになる事例が増えている。
 2004年の製造業の派遣解禁がきっかけで不安定な生活になった人が多い。
 彼らは『生きていてもしかたがない。死にたい』と言う。
 このような人々が公的福祉からも排除されている」


(聞き手)――京アニ事件の教訓は。
雨宮さん
努力しても報われない人が一定数いる社会なのに、
 『自己責任』の一言で片付けられている。
 身分制度のようになった正規、非正規雇用の壁は見直すべきだ。

 一方、青葉被告に友人がいれば、好きなアニメの話ができたかもしれないし、
 盗用の話を『妄想』と笑い飛ばしてくれたかもしれない。
 しかし、一人の友人もいなかったようだ。
 雇用が不安定だと住む場所も人間関係も流動的で、簡単に一人になってしまう。
 孤独を放置しないことが大切だ


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この事件に関わる判決にはなんら異議はない。
あれだけの凶悪な事件を起こした以上は犯人の命をもって償ってもらうしかないだろう。

それでは、今後このような凶悪な事件を起こさないためには
私たちの社会はどうすればいいのか?
セキュリティを高めれば済む問題ではないのだ。

今の弱者・犠牲者を生み出さない
少なくともバブル期以前のように安定雇用が確保されて
万が一失業してもセーフティーネットが整い
年齢で人を切り棄てる制度を早急に見直して
正規雇用者としての「やり直し」が効く
そんな社会にしないといけない。

経済評論家だった内橋克人さん(1921 - 2021 )の著作に
「規制緩和という悪夢」という名著作があります。
規制緩和という悪夢

「グローバルスタンダードが生み出す世界」 評・テッキー1号さん(Amazon Japanレビューより)
アメリカは素晴らしい国だろうか?
株長者を多数生みだす一方で、
最低賃金では健康保険にも入れず、病気したらアウトという社会がそこにある。

日本はどうか?
一見破綻しつつあるように見えるが、
あいかわらず若い女の子がブランドに身を包み、
海外旅行にいつでもいける「ゴールデンリセッション」状態を謳歌している。

この本はアメリカの’90年代をひたすら真似しようとしている現在の日本に対して、
冷静な警告を与えてくれている。

このまま行くとどうなるのか、為政者がどのような社会を作ろうとしているかが、
読者にははっきり見えてくるはずだ。
文庫のこの値段で、これだけの内容。
買って損はないと思う。

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規制緩和の社会、
それはズバリ「弱肉強食」の世界だ。

この本が出た以降、確実にアメリカのような”そんな社会”になった。
華やかなLA・サンフランシスコに代表される西海岸。
人種のるつぼながら活気にあふれるNYC。
しかし、そうでない地域は繁栄から取り残されて
社会・産業の再生方法を見いだせず腐ったこころを抱えて
”ドナルド・トランプ”なる、さらなるミーイズム&破壊主義者に喝采を贈る。
・・・今のアメリカの方向性には暗澹たる気持ちしか生まれない。

そんなアメリカ社会に日本も染め上げてしまえという人間たちが
小泉首相時代の経済財政政策担当に就き、今は人材派遣会社の要職に就いてる竹中平蔵などが
”その通りの社会”に変えてしまった。

それ以降、日本の雇用関係はあっという間に「非正規雇用者」が激増して
正社員からこぼれ落ちた人間はなかなか戻れない。
”雇用のチャンスが増えた”と言うのは結局はまやかし。
正社員を定年まで勤めあげられる「終身雇用制度」は事実上崩壊したが
年齢によって給与身分が上がる「年功序列」は結局のところ残り、
一定の年齢になったら再就職が難しくなる状況や
「事務職は女子、男はライン作業など肉体労働」という性別での旧い職種価値観は何一つ変わっていない。
(ミスコンテストかってぇの)

東洋経済オンライン 2019年8月10日付記事
「「女性=事務仕事」に寄せられる日本の問題構造
 ~まわりまわって社会全体が硬直的になる」
 https://toyokeizai.net/articles/-/296212


派遣社員の雇用は「原則ひと月単位」で、
派遣先の気分や都合でいつでも切り棄てられるし、
就業初日に保険対象になったとしても事実上健康保険証がもらえるのは早くても2週間後で、
雇用が切られたら翌日には「保険証を返してください」と言われる理不尽さ。
提携している社会保険事務所は、そんな短期雇用者の保険証取得・解約業務に
さぞ”てんてこ舞い”しているはずだ。


秋葉原通り魔事件(2008.6.)の犯人も、今回の京都アニメーション放火殺人事件(2019.7.)も
そんな弱肉強食の犠牲者と言ってもいいのではないか。
「絶望の果て」―「生存価値の否定」―
たぶん埼玉県での仕事で正規雇用があったなら違ったのではと
自分は今でも思うが。


以前も言ったが森林というクッションがなく、
「国民皆保険制度」などセーフティーネットのない
アメリカ合衆国のような豪雨と干ばつが繰り返される「砂漠」のような社会ほど
自暴自棄になった人間による凶悪事件が頻発している。
再犯防止ならやはり北欧のように保険は高いけど授業料も社会が負担してくれて
性別年齢差別もなく、再就職のチャンスをしっかり作る社会にする事ではないのか。

一度会社に入ったらあとは何もしなくても昇給があるからのらりくらり、なんて事は
もちろん許されることではないから、
それなりの実力制度は必要かもしれない。
だからといって一定年齢で社員を密室に押し込んで
「自主退職」に追い込むなんて事は絶対に赦してはならない。
要は年齢・性別を問わず仕事をしたい、
社会人としてやり直したいと思うことができる社会にしなければ
日本国としても再生しないでしょう。


あくまでも個人的観測です。
読まれた方はそれぞれ賛否両論はお持ちでしょうけど。

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