弁護士山本行雄 情報提供 札幌弁護士会所属

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よくある質問(法令解説3):放射能汚染防止法の適用対象

2017-06-19 21:10:10 | 放射能汚染防止法制定運動

 

<記事の複写配付自由です。「制定しよう放射能汚染防止法」と合わせてご活用ください。>

よくある質問(法令解説3)

<放射能汚染に対する規制基準の適用対象>

Q 毎日新聞夕刊特集ワイド(2017.4.10)の記事で、規制基準等がない理由を環境省に尋ねると,次のような答だったということです。法制度のあり方として正しのか。

 「公害防止の前提は,通常の経済活動で排出される物質を規制するのです.例えば、煙突から出る煙などです。放射性物質については,原子力規制庁が厳しい安全規制をしています。」

 

A 正しくありません。

1 そもそも、環境省が「前提」だと言うところの「煙突から出る煙」に放射性物質の公害規制がないのです。従って罰則もありません。煙突だけでなく、海洋への放出についても公害規制はありません。環境省は、制令・省令を整備して、「公害法の前提」に即して、原発の煙突から出る煙の公害規制をすべきなのです。我々はそれを要求してきました。

放射能汚染防止法の制定運動では、すべての原子力施設に適用される環境基準や規制基準の整備を要求し、同時に、過酷事故には公害犯罪処罰法を改正して、厳罰を科すよう要求しています。

「原発の煙突から出る煙に規制基準を設け罰則を適用せよ」と要求しましょう。

2 「原子力規制庁が厳しい安全規制をしています。」これは全く違います。原子力規制庁の安全規制は,原子炉等規制法の規制であり、公害法の分野とは別の法体系です。しかも、「厳しい規制」どころか、事務機のマニュアル並みのひどいものです。

煙突や海洋放出管からの放出は、濃度規制があるだけで、薄めて捨てれば違反になりません。放出総量の規制がありません。しかも,この濃度規制に違反しても罰則がありません。さらにひどいのは、海洋汚染被害が最も心配されている再処理施設には濃度規制すらありません。

このような法律の欠陥を見直すために、福島原発事故の後、国会決議で法整備をすることになったのです。しかし、行政を担う環境省の職員が、法整備を怠るだけでなく、国会の決議や法律に反することを堂々と言い張っているというのが現状です。国会の恥です。

 

 「制定しよう放射能汚染防止法」の関連部分を引用しておきます。

引用開始↓

<重過失による汚染にさえ責任がない>

故意に核物質をばらまく行為については放射線発散処罰法(正式名称「放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律」「核テロ処罰法」と略称されることもある。)がありますが、原発事業者の過失によるばらまき行為を取り締まる法律はありません。このため、ずさんな管理によって放射能漏れを起こしても責任を問えないのです。

重過失:このような「ずさんな管理」を法律用語では通常「重過失」と言います。高速増殖炉もんじゅの数万点に及ぶ点検漏れのような「ズサン管理」が常態化していた背景には、重過失の刑事責任さえ問えない法制度の欠陥があるのです。

 

 引用終了↑