上杉隆(ジャーナリスト)
【第80回】 2009年06月04日
世襲制限導入の見送りに、自民党の限界を見た
残念ながら、それは「親バカ」で済まされる問題ではない。端的に、有権者と国民への裏切り行為である。
小泉氏は「立候補は、進次郎本人の意思であり、自身は関与していない」とも言っているが、総会で息子を後継者に指名し、後援会にこれまで通りの支援を要請し、さらに業界団体へのお願いも済ませている政治家に、そんなことを語る資格はまったくない。
〈政治資金管理団体の所在地と代表者は同じ小泉の秘書で、自民党神奈川県第11層支部代表も、すでに進次郎に移譲している(08年10月22日)。こうした継承があった上で、果たして無関係と強弁できるのだろうか〉(同「世襲議員のからくり」)
そして、こうした「地盤、看板、かばん」の三バンによる世襲の最大の問題が、進次郎氏への過保護につながり、政治家として鍛えられる機会を奪い、また新しいひ弱な二世を作ろうとしていることにある。
〈この後援会総会の直後の10月3日、「小泉進次郎同志会」が発足した。代表者および会計責任者は、同じ小泉事務所の政策担当秘書の鍋倉正樹である。その鍋倉に尋ねた。
「世襲議員のからくり」(文春新書) |
「申し訳ないんですが、まだ議員になっていない状態なので、取材はすべてお断りしているんです」
進次郎が議員であろうとなかろうと、すでに公党の支部代表に就任している。そうであるならば、政党助成金も受けているはずだ。本来ならば、新人候補として、堂々と国民に自らの政治理念を語るべきである〉
自民党は、自らの政治理念や政策すら語ることのできない政治家をまた生もうとしている。弱い自民党の象徴である安倍元首相や福田元首相のような世襲政治家はもうこりごりである。彼らの無責任な政権の投げ出しによって、世界は呆れ、日本の国益がどれだけ毀損されたか、自民党はもう忘れたのだろうか。
自民党の限界が、今回の世襲制限回避で明らかになったようだ