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子どもって不思議☆~むかしはみんな子どもだったのにね~

卒業論文で取り上げたテーマ「軽度発達障害児」について載せていきたいと思います。参考にしてもらえると嬉しいです☆

軽度発達障害について(注意欠陥/多動性障害:ADHD)

2005年03月01日 | Weblog
(1) 定義
平成15年3月28日文部科学省の「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」で定義された。

ADHDとは、年齢あるいは発達に不釣合いな注意力、及び/又は衝動性多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。
 また、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。


DSM-Ⅳ(アメリカ精神医学会の分類第四版)の18項目の具体的な行動特徴を評価する診断基準がある。

(2) ADHDの特性
【AD/HDの3つのタイプ】
 DSMによれば,ADHDには混合型不注意優勢型多動・衝動性優勢型の3型があると考えられており、型によって経過は異なっている。
混合型
 代表的なもので、不注意、多動・衝動性が見られるものである。もっとも多いとされ、注意の集中が苦手で、気持ちの切り替えも下手で、易怒的である。成長するにつれて、成績の低下や仲間関係の挫折が重なり、自己評価が低下していく。
不注意優勢型
 多動でないため、ADHDとはみなされていないこともある。極端に注意の集中が難しいため、忘れやすく、かなりの時間を空想に費やしているように見える。自分の問題に気付いているが、どうしたらよいか分からず、自分評価が低下して、不安や抑うつ感をもちやすい子どもである。
多動・衝動性優勢型
 低年齢で、多動・衝動性が認められているもので、就学後には不注意も目立ちはじめて、次第に混合型に近づくと考えられている。

 多動は就学前から目立ち、就学後も離席があったり、やたらときょろきょろしており、じっとしていられない。正常な範囲の多動と異なり、学期が進んでもあまり改善しない。経過を追うと、体の成長につれて、小学校高学年から中学校へ進学するころまでには、多動は通常は減少する。
 落ち着きがなく、注意力に乏しいのは子どもの特徴であるが、発達段階を考慮してその程度が逸脱するとき、注意欠陥/多動性障害(attention-deficit/hyperactivity disorder,アメリカ精神医学会の「精神疾患の分類と診断の手引き第4版:DSM-Ⅳ」)、あるいは多動性障害(hyperkinetic disorders,WHOの「国際疾病分類第10改訂版:ICD-10」)と診断される。
 
頻度は3~6%と言われ、男児は女児の3~4倍と多いが年齢やタイプによってその頻度は異なる。病態・病因は完全に解明されたとは言えないが、行動の制御に関連する神経生理学的な障害であるとするのが多くの研究者の一致した見解である。遺伝学的要因を中心に、胎児期の障害、周生期の合併症、出生後の脳障害などの多様な背景をもつ障害である。

 通常、小児期に始まり、基本的には終生変わらない傾向である。学習障害などの学業上の問題のほか、反抗挑戦性障害行為障害などの他の破壊的行動障害もしばしば合併する。他の精神疾患の症候(気分障害や精神障害における集中力障害など)がADHDに類似することもあり得る。広汎性発達障害がADHDと誤ってとらえられていることが多い。治療は、中枢神経刺激剤を中心とする薬物療法と、ペアレントトレーニングソーシャルスキルトレーニングや構造化された環境設定による学校での介入やカウンセリングなどの心理社会的治療とがある。

【ADHDの認知能力の障害(まわりの刺激をうまく取り入れるのが苦手)にはどのようなものがあるか】
認知の偏り
 発達障害は「中枢神経系の機能障害」をもつ。これは脳を中心とした神経系が円滑に働かないということである。「考える」「思考する」というような「認知」といわれる人間が生活するうえの作業に影響を及ぼす。これが「認知能力の機能不全」の状態である。

 この「認知能力」の機能がうまくいかない状態はさまざまである。ADHDの認知機能のつまずきは、全般的に多くのことができないというより「できたりできなかったり」というような部分的な能力の落ち込みや、バランスの悪さなどの状態が主になる。そうした状態を臨床的には「認知の偏り」などと呼ぶ。
 
さまざまに外界から入ってくる情報を処理することが必要な学校の学習場面では、「認知の偏り」があることは非常に不利になる。情報の伝わりやすい場合と伝わりにくい場合とが起きてくるからである。まわりでかかわる大人は、この状態に非常に戸惑うことが多くなる。実際は「できる」ことと「できない」こととが混在しているのが「認知の偏り」の姿である。
 例えば、外からの刺激が「目から入るもの」ならばよいが「耳から入るもの」であると、とたんにその意味を把握することが困難になるような子どももいる。このような「認知の偏り」を「視覚認知は強いが、聴覚認知が弱い」などという言い方をする。逆に「聴覚認知は強いが、視覚認知が弱い」という偏りがある子どももいる。「認知の偏り」の具体的な状態は一人ひとりそれぞれ違ったものになる。

過剰選択性
もう一つADHDの子どもの認知能力に関して「過剰選択性」というのがある。
 認知能力がうまく作業するためには、まず外からの情報を上手に頭の中にインプットする必要がある。しかし外にはたくさんの情報や刺激があふれている。
例えば、教室場面では、耳に飛び込んでくる刺激として、校庭からは体育に参加する子どもの声や笛の音、空を飛ぶ飛行機の音、遠くからの車のクラクションの音などがあるだろう。目に飛び込んでくる刺激としては、前の席の子の動き、壁の掲示物、教科書の別のページにある挿絵、飛び回る小さな虫などもあるだろう。こうした刺激にいちいち注意を向けないで、一番大切な前に立つ先生の指示内容や板書内容、動きなどに注意を向けなければ、授業内容はまったくインプットされない。まわりの子どもたちは、こうしたたくさんの刺激の中で一番重要なものを「選択」して頭の中にインプットしている。しかし、ADHDの子どもは、この選択がうまくいかずにほとんど全部の刺激が頭の中に飛び込んできてしまうのである。これが「過剰選択性」である。情報を処理する以前に、その材料となる情報が混乱したまま頭に送り込まれてきてしまうので、とても正確な処理などできないのである。
 ADHDの子どもの「認知能力(考える力)」を理解するためには、情報のインプット過程での混乱の受けやすさ、送りこまれてきた情報を処理するときに得意な方法と不得意な方法がある、という二段構えの理解の枠をもっている必要がある。

【ADHDの子どもの心理面からみたつまずきにはどのようなものがあるか】

中枢神経系の機能障害に起因するつまずき
注意と記憶の障害
 ADHDの子どもは注意の振り向け方が上手ではなく、必要な情報の適切な取り込みに障害がある。また、取り込んだ情報を頭の中にきちんと整理してしまいこんでおいて、必要なときにすばやく検索することにも障害がある。行動面では、大事なことの聞き漏らし勘違い忘れっぽさなどとして現れる。

言語と認知の障害
   ADHDの子どもはLD(学習障害)をあわせ有することが多いが、学習障害は言語や認知の発達の面によく現れる。人の話しが理解できない自分の思いをうまく言葉で表現できないというような言語の問題は、授業中の先生の話の理解や円滑な友達づきあいの妨げとなりがちである。認知の問題は教科の内容習得にとどまらず、生活全般に深刻な影響を及ぼすことがある。

実行機能の障害
 物事を計画的に遂行する、自分がやっていることや自分の課題解決の仕方をモニターする、臨機応変に相手の意図や周囲の状況を読み取って自分の行動を微調整するなどの脳の働きを実行機能という。ADHDの子どもの衝動性やいわゆる「頭の硬さ」などは、この働きのつまずきである場合が多い。

②二次的な情緒障害
 幼いときから小言や叱責などの拒否的な対応をされることが多かった子や、失敗体験を適切に癒されたことが少なかった子は、人への不信感や自信喪失などに陥り、反抗的攻撃的になったり、逆に無気力抑うつどの症状を示すことがある。

 認知心理学的には「実行機能(遂行機能)」の障害という視点から、すべての症状をBarkleyは下記のように説明されている。(1995)。

非言語的ワーキングメモリーの障害があるため、時間に対する観念が希薄で、物事を心に留めて置くことができず、過去の想起の欠如や将来に対する配慮ができないため重要な約束を忘れてしまう。

内言語化の障害があるため、規則に沿った行動ができず、自制や自己問答が貧困であるため、しゃべりすぎてしまい、自分自身をコントロールできない。

気分、意欲、覚醒度の制御の障害により、感情をすべて人前に現してしまい、抑制することができない。

さまざまな自分の行動を分析して再構築し、新しい行動を作り出すことに限界があり、問題解決の能力の欠如からうまくいかなければ途中であきらめてしまう。

【ADHDに伴って、二次的に起こりやすい症状にはどのようなものがあるか】

①幼児期のADHD
 保護者などの周辺がADHDを心配し始めるのは、就学前後が多いようである。実際の症状は、もう少し以前からあったと思われるが、「通常の発達の範囲内の多動であろう」とか「心配だが、もう少し様子をみてから考えよう」などと判断していたと思われる。最近は、AD/HDの存在が取り上げられているので、保護者の来院する時期は以前より早いようである。医療現場で、ADHDと診断されるのは3~15歳がほとんどで、来院時の主訴は、年齢により大きく異なる。

就学前では「落ち着きのなさ」「言葉の遅れ」がもっとも多く、次に「対人関係の問題」「発達の遅れ」「こだわり」が続く。この時期は、ADHDの中心症状である「落ち着きのなさ」に加えて、発達上の問題や、対人関係の問題が目立つ。

②小学生期のADHD
 学童年齢では、「落ち着きのなさ」に続いて「興奮・乱暴」「対人関係の問題」が多く、さらに「こだわり」「不登校」「言葉の遅れ」「学習の遅れ」などが続く。
低学年における、特徴的な「衝動性」としては、「待っていられない」「ルールを無視してしまう」などがあげられる。この年齢は、周囲に似たような子どももいるので、教室全体が騒然として、いわゆる「学級崩壊」が生じることもある。特に「興奮・乱暴」「不登校」は高学年になると目立つ。
高学年になると、中心症状の一つである「衝動性」と直接的に関係する「興奮・乱暴」が「落ち着きのなさ」に加わり、さらに二次的に生じる「学習の遅れ」「不登校」が出現する。

③知的水準と成績の不一致
 「知的水準は高いのに成績は悪い」という学習面の問題にはいくつかの理由がある。多動・集中困難による「授業への集中困難」、学習障害的要素の存在から生じる「学習内容の理解の難しさ」がある。これらの状態が長期間にわたって続くと「自信の喪失・劣等感の増大」などが強まり、学習への取り組み意欲が一段と低下し、学業不振に陥る。

「孤立感」が強まり、登校を渋ったり、保健室登校や不登校になる子どももいる。これらの子どもは、不注意優勢型のADHDに多いようだ。
自分では説明できない、対処の分からない自己不全感を抱えており、さまざまな身体症状(頭痛、腹痛、嘔気、微熱など)もみられる。この状態が一定の期間続くと、不安や抑うつが前景に出て、食欲の低下、不眠、寡黙などの症状も出現する。現状に対する漠然とした不満、どうしてよいか分からない焦燥感のはけ口として、母親などの身近な家族を対象とした家庭内暴力や器物の破壊が見られることもある。
学習面や他児との交流の中で、自分の存在感を確認できる対応に、周囲が心がけ、自己評価の回復をはかる必要がある。
 小学校の高学年までには、臨床的には70~80%のADHDの子どもは落ち着いて、多動はあまり目立たなくなるが、「注意集中困難」は続く。不注意、忘れやすさ。根気のなさ等を自分なりに工夫して、社会適応していると思われる。一般に言語表現が苦手で、気持ちを伝えるのが難しいことや、外見は分からない、社会的な常識の欠如や社会ルールの理解困難がある。一部の子どもでは、将来的に対人関係がうまく成立せず、社会的不適応に至ることが問題になる。