ぷらいべったーより再掲。
キスシーンの練習に書いたもの。むっちゃ恥ずかしいですが、とりあえず…
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はじめて、リナと長いキスをした。
いつもは唇を合わせる短いキスをするだけで、リナはすぐに顔を真っ赤にしてオレから逃げ出す。
慌てて何かしゃべりだしたり、照れ隠しにわざと怒ってみせたり。そうやって空気を替えてしまうのだ。
そんな時、オレは苦笑してリナの頭を撫でる。
それで、もうその場は終わりという合図。残念だと思わない事もないが、そういう時のリナの、ちょっとだけ申し訳なさそうな、でも安心したような顔にオレは何も言えない。
――リナは照れ屋だから。
分かっている。ずっと保護者として隣に居たオレが、リナと今の関係に至るまでの過程を思えば、こんな問題は些細な事で。
恥ずかしそうに目を閉じてオレの手を握る姿とか、短いキスをした後の、照れて顔を背けた真っ赤な横顔とか。そんなリナの可愛い所を独り占めしている、それだけでも幸せなのだ。
でもやっぱり。
「我慢は体によくないよなー」
ばあちゃんもよくそう言っていた。……たぶん。
「……なにが?」
きょとんとした顔のリナに笑いかける。そして、そっとリナの頬に手を触れた。
*
「!」
慌てたように目を丸くして、でもリナは何も言わずにぎゅっと目を閉じた。その顔が真っ赤で、可愛いな、と思う。
ふ、と唇が近づいて互いの吐息が感じられると、リナは閉じた瞼を震わせた。
そのままそっとキスをする。ちゅ、と軽く唇を合わせて、すぐに離れた。
それで終わりかと思ったのか、目を開けたリナに至近距離で笑いかける。まだこんなに近くにオレが居る事に驚いたのか、リナは元々大きな瞳をさらに大きくした。
「ガウ、リ……?」
「リナ」
名前を呼んで、もう一度唇を合わせた。
触れるだけの短いキスを何度も繰り返して。なにかいつもと違うと思ったのか、離れようとするリナを逃がさないように後頭部にも手を添える。
「ん、んん…!? ちょ、ちょっとガウリイ?」
抗議の声が上がる。でもいまは聞いてやらない。
もう一度、唇を合わせて。今度はリナの小さくて柔らかい唇を、自分の唇でそっとはんだ。
「!?」
柔らかい唇が、ぷるりと震える。これはリナが震えているからだろう。ほとんどゼロ距離で目を合わせると、リナは目を回しそうな程に混乱していた。
普段なら、こんなリナを見たら「大丈夫か」とすぐに心配してしまう自分がいるのに。今日はそれが出来ない。
オレはもう、自分で自分を止められなかった。
「……んんう」
泣きそうな声を上げるリナの、合わせた唇をちろりと舐める。驚いたのか、小さく開いたその唇の中にオレは舌を挿し込んだ。
「!」
びくり、とリナが震える。腰が引けるリナを、でも今日は逃がしてやる気は無い。頬に添えていた手を、彼女の背中に回して更に自分に引き寄せた。
歯列をなぞり、上顎を舐め上げて、それから。リナの口の中で縮こまった、小さなピンク色の舌と自分のとを触れ合わせる。その蕩けるような感覚。
「んふっ……あ」
「……は、」
びりびりと頭の中が甘く痺れていく。
長いキスなんて初めてではなかったが、その相手がリナだと全然違う。オレから逃げ回るリナの舌は、でも簡単に捕まえられて、絡んでは離れる。唾液が甘い。
その感覚に夢中になっていたら、リナが不意にオレの腕をぎゅっと掴んだ。
「んん、んーっ!」
「……は、」
どうしたのかと唇を離せば、涙目のリナがオレを睨んでいた。はあはあと荒い息を吐いている。
「が、ガウリイ…! ばか、息できな……は、はあ」
「あー、すまん。こーいう時は、呼吸は鼻でするんだぞ?」
「……っ」
赤い顔のままで黙ったリナに、もう一度顔を近づければ、リナは困ったように左右に視線を彷徨わせ、それからまたぎゅっと目を閉じた。
どうやら逃げないでくれるらしい。凄く、嬉しい。
「……リナ」
もっかい。囁くようにそう言えば、リナは目を閉じたままオレの服の裾をぎゅっと握った。
*
最初はオレのなすがままにされていたリナも、そのうちおずおずとオレの動きを真似て、舌を自分で動かすようになった。
絡まるそれの感触。くちゅ、と耳の奥で響く音。
「ん、ん……はっ、ん」
「……はっ」
まだ息継ぎが上手くできないリナの、荒い息にまぎれて漏れる声を耳にするたび、腹の奥がじわりと熱くなる。
――ああ、だめだ。これ以上は、色々とまずい……。
オレの頭の中で、もう一人のオレの声がした。たぶん理性の声だろう。
だけれども、そんな声が耳に入らないくらい、オレは夢中になっている。
「ンン、は……んむっ」
鼻に抜けるリナの高い声が、オレの頭の中をぐちゃぐちゃに掻きまわしてしまうのだ。
「……、んっ。は、ガウリイっ!」
何度目かの息継ぎの時、リナがオレの名前を呼んだ。
それに気付いてようやく顔を離すと、互いの唇をきらりと光る銀糸が繋いだ。どちらのものとも言えない、飲みこみきれなかったのだろう唾液が、口端から零れてリナの顎を伝っている。
そのなんとも刺激の強い光景をぼうっと見つめていると、リナは唇を自分の腕で拭ってしまった。その拍子にぷつりと切れる銀糸。
――ああ、惜しいなあ。
少し残念に思いながら、だけれども内心ちょっとだけほっとした。
オレとしても、ここでこれ以上先に進むつもりはなかったし。そして、その気がなくても引きずりこまれてしまいそうな程に気持ちの良いキスが、ちょっと怖かった。
「……リナ、どした?」
「……」
努めて落ちついた声を出したオレに、リナは何も答えない。黙ったままのリナは、じっとオレを見上げていた。
そのとろんと潤んだ瞳を覗き込んでいると、知らず心拍数が上がる。
――落ちつけ。オレ、落ちつけ。いつもの通りに……!
「……ガウリイ?」
何かを窺うように、リナが低くオレの名前を呼ぶ。その意味が分からずに、オレはきょとんとして首を傾げてみせる。
「んん? どうした? ――腹でも減ったか?」
その瞬間、リナは自分の手で顔を覆った。
「……はああーーーーっ」
聞こえる程に大きな溜め息をついたリナは、そのままオレに向かってくたりと倒れ込んで来る。
「リナ?」
「……も、無理。死んじゃうかと思った。ばか。ガウリイのばか」
オレの胸に顔をうずめたまま、リナが小さく呻く。その台詞と弱々しい声に、オレは苦笑した。リナの栗色の髪の間から、真っ赤になった耳がちらりと見える。
「はは、ごめんなリナ。……でも、気持ちよかったろ?」
「……ノーコメント」
笑って頭を撫でてやると、リナは何も言わずにオレの胸をぐりぐり頭で押してくる。その仕草が少し子供っぽくて、でもとても可愛らしい。
宿屋の狭い部屋に、いつもの空気が戻ってくる。その空気に安心している自分が居る。
「……はあ」
思わず、オレも小さく溜め息をついてしまっていた。
結局、先に進めないのは自分の意気地が無いからかもしれない。それに気付いてしまった。
「――なによ、その溜め息は」
顔を上げたリナが、ジト目でオレを睨む。
「いや、オレも腹減ったな、って」
ごまかすように適当な事を言えば、リナはがくりと肩を落とす。
「脳みそ温泉卵……」
「……それはひどくないか」
なんだかんだ、やっぱり先は遠そうだ。
おしまい。
キスシーンの練習に書いたもの。むっちゃ恥ずかしいですが、とりあえず…
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はじめて、リナと長いキスをした。
いつもは唇を合わせる短いキスをするだけで、リナはすぐに顔を真っ赤にしてオレから逃げ出す。
慌てて何かしゃべりだしたり、照れ隠しにわざと怒ってみせたり。そうやって空気を替えてしまうのだ。
そんな時、オレは苦笑してリナの頭を撫でる。
それで、もうその場は終わりという合図。残念だと思わない事もないが、そういう時のリナの、ちょっとだけ申し訳なさそうな、でも安心したような顔にオレは何も言えない。
――リナは照れ屋だから。
分かっている。ずっと保護者として隣に居たオレが、リナと今の関係に至るまでの過程を思えば、こんな問題は些細な事で。
恥ずかしそうに目を閉じてオレの手を握る姿とか、短いキスをした後の、照れて顔を背けた真っ赤な横顔とか。そんなリナの可愛い所を独り占めしている、それだけでも幸せなのだ。
でもやっぱり。
「我慢は体によくないよなー」
ばあちゃんもよくそう言っていた。……たぶん。
「……なにが?」
きょとんとした顔のリナに笑いかける。そして、そっとリナの頬に手を触れた。
*
「!」
慌てたように目を丸くして、でもリナは何も言わずにぎゅっと目を閉じた。その顔が真っ赤で、可愛いな、と思う。
ふ、と唇が近づいて互いの吐息が感じられると、リナは閉じた瞼を震わせた。
そのままそっとキスをする。ちゅ、と軽く唇を合わせて、すぐに離れた。
それで終わりかと思ったのか、目を開けたリナに至近距離で笑いかける。まだこんなに近くにオレが居る事に驚いたのか、リナは元々大きな瞳をさらに大きくした。
「ガウ、リ……?」
「リナ」
名前を呼んで、もう一度唇を合わせた。
触れるだけの短いキスを何度も繰り返して。なにかいつもと違うと思ったのか、離れようとするリナを逃がさないように後頭部にも手を添える。
「ん、んん…!? ちょ、ちょっとガウリイ?」
抗議の声が上がる。でもいまは聞いてやらない。
もう一度、唇を合わせて。今度はリナの小さくて柔らかい唇を、自分の唇でそっとはんだ。
「!?」
柔らかい唇が、ぷるりと震える。これはリナが震えているからだろう。ほとんどゼロ距離で目を合わせると、リナは目を回しそうな程に混乱していた。
普段なら、こんなリナを見たら「大丈夫か」とすぐに心配してしまう自分がいるのに。今日はそれが出来ない。
オレはもう、自分で自分を止められなかった。
「……んんう」
泣きそうな声を上げるリナの、合わせた唇をちろりと舐める。驚いたのか、小さく開いたその唇の中にオレは舌を挿し込んだ。
「!」
びくり、とリナが震える。腰が引けるリナを、でも今日は逃がしてやる気は無い。頬に添えていた手を、彼女の背中に回して更に自分に引き寄せた。
歯列をなぞり、上顎を舐め上げて、それから。リナの口の中で縮こまった、小さなピンク色の舌と自分のとを触れ合わせる。その蕩けるような感覚。
「んふっ……あ」
「……は、」
びりびりと頭の中が甘く痺れていく。
長いキスなんて初めてではなかったが、その相手がリナだと全然違う。オレから逃げ回るリナの舌は、でも簡単に捕まえられて、絡んでは離れる。唾液が甘い。
その感覚に夢中になっていたら、リナが不意にオレの腕をぎゅっと掴んだ。
「んん、んーっ!」
「……は、」
どうしたのかと唇を離せば、涙目のリナがオレを睨んでいた。はあはあと荒い息を吐いている。
「が、ガウリイ…! ばか、息できな……は、はあ」
「あー、すまん。こーいう時は、呼吸は鼻でするんだぞ?」
「……っ」
赤い顔のままで黙ったリナに、もう一度顔を近づければ、リナは困ったように左右に視線を彷徨わせ、それからまたぎゅっと目を閉じた。
どうやら逃げないでくれるらしい。凄く、嬉しい。
「……リナ」
もっかい。囁くようにそう言えば、リナは目を閉じたままオレの服の裾をぎゅっと握った。
*
最初はオレのなすがままにされていたリナも、そのうちおずおずとオレの動きを真似て、舌を自分で動かすようになった。
絡まるそれの感触。くちゅ、と耳の奥で響く音。
「ん、ん……はっ、ん」
「……はっ」
まだ息継ぎが上手くできないリナの、荒い息にまぎれて漏れる声を耳にするたび、腹の奥がじわりと熱くなる。
――ああ、だめだ。これ以上は、色々とまずい……。
オレの頭の中で、もう一人のオレの声がした。たぶん理性の声だろう。
だけれども、そんな声が耳に入らないくらい、オレは夢中になっている。
「ンン、は……んむっ」
鼻に抜けるリナの高い声が、オレの頭の中をぐちゃぐちゃに掻きまわしてしまうのだ。
「……、んっ。は、ガウリイっ!」
何度目かの息継ぎの時、リナがオレの名前を呼んだ。
それに気付いてようやく顔を離すと、互いの唇をきらりと光る銀糸が繋いだ。どちらのものとも言えない、飲みこみきれなかったのだろう唾液が、口端から零れてリナの顎を伝っている。
そのなんとも刺激の強い光景をぼうっと見つめていると、リナは唇を自分の腕で拭ってしまった。その拍子にぷつりと切れる銀糸。
――ああ、惜しいなあ。
少し残念に思いながら、だけれども内心ちょっとだけほっとした。
オレとしても、ここでこれ以上先に進むつもりはなかったし。そして、その気がなくても引きずりこまれてしまいそうな程に気持ちの良いキスが、ちょっと怖かった。
「……リナ、どした?」
「……」
努めて落ちついた声を出したオレに、リナは何も答えない。黙ったままのリナは、じっとオレを見上げていた。
そのとろんと潤んだ瞳を覗き込んでいると、知らず心拍数が上がる。
――落ちつけ。オレ、落ちつけ。いつもの通りに……!
「……ガウリイ?」
何かを窺うように、リナが低くオレの名前を呼ぶ。その意味が分からずに、オレはきょとんとして首を傾げてみせる。
「んん? どうした? ――腹でも減ったか?」
その瞬間、リナは自分の手で顔を覆った。
「……はああーーーーっ」
聞こえる程に大きな溜め息をついたリナは、そのままオレに向かってくたりと倒れ込んで来る。
「リナ?」
「……も、無理。死んじゃうかと思った。ばか。ガウリイのばか」
オレの胸に顔をうずめたまま、リナが小さく呻く。その台詞と弱々しい声に、オレは苦笑した。リナの栗色の髪の間から、真っ赤になった耳がちらりと見える。
「はは、ごめんなリナ。……でも、気持ちよかったろ?」
「……ノーコメント」
笑って頭を撫でてやると、リナは何も言わずにオレの胸をぐりぐり頭で押してくる。その仕草が少し子供っぽくて、でもとても可愛らしい。
宿屋の狭い部屋に、いつもの空気が戻ってくる。その空気に安心している自分が居る。
「……はあ」
思わず、オレも小さく溜め息をついてしまっていた。
結局、先に進めないのは自分の意気地が無いからかもしれない。それに気付いてしまった。
「――なによ、その溜め息は」
顔を上げたリナが、ジト目でオレを睨む。
「いや、オレも腹減ったな、って」
ごまかすように適当な事を言えば、リナはがくりと肩を落とす。
「脳みそ温泉卵……」
「……それはひどくないか」
なんだかんだ、やっぱり先は遠そうだ。
おしまい。
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