量子暗号
2007年8月15日の新聞の記事
盗聴が不可能になるとして注目されている「量子暗号」の開発を進めているNTT先端技術総合研究所の都倉康弘量子光物性研究部長らのチームが、光ファイバーを使った実験で、世界最遠となる200㌔先に暗号の鍵を送信することに成功した。
なんと、現代は科学が進歩していることだろう。
量子暗号をウィキぺディア辞典で検索してみると下記のとおり。
数学的にも理解できない。
数学的素養が大学院程度は少なくともないと理解できない。
ルベック積分で躓いた私では、全く理解できない。
現代科学に疎外感を強く感じる。
量子暗号とは、通常は量子状態の特性によって、通信路上の盗聴者を検出できることを利用した新しい鍵配送システムである、量子鍵配送のことを指す。 盗聴された情報量を双方向通信で見積もり、その結果に応じて鍵を圧縮することにより、安全性な秘密鍵を共有できる。 しかるのちに情報理論的に安全なワンタイムパッドを用いて暗号通信をする。
このシステムは情報理論的に安全であることが厳密に、かつ現実のシステムのさまざまな不完全性を 考慮した上で証明されている。したがって、計算量的安全性しかもたないシステムより強固であるといえよう。 量子鍵配送の安全性は、直感的には不確定性原理と複製不可能原理に基づいて説明されることが多いが、 実際の安全性の証明はそれらを用いるわけではない。
具体的なプロトコルとしては、量子鍵配送としては初めて提案された、BB84プロトコルが有名である。 これはWiesnerの先駆的な研究により1970年代に発見されていたが、後にC. BennettとG. Brassard によって 再発見されたものである。現在にいたるまで、実装されている量子鍵配送のほとんどはBB84であり、安全性の 理論的研究もBB84に集中している。
提案された当初は現実性がないとしてあまり大きな注目をあつめることがなかったが、現在は 最大で200キロメートル超の光ファイバーで伝送実験に成功している。さらに劇的に通信距離を伸ばすには、 衛星を用いたシステムか、または量子もつれを用いた量子中継などといった手法を 導入する必要があると思われる。 ともかくも、現在のところ量子情報の技術の中で実用化の可能性があるものは、 この量子鍵配送だけである。
なお、量子コンピュータが実現された場合に、RSA暗号などの計算量的安全性に基づく公開鍵暗号は安全では無くなってしまうため、量子コンピュータでも解読不能な公開鍵暗号方式の研究・提案がなされている。その中で、量子コンピュータを用いて実現できる暗号方式を「量子公開鍵暗号」ということがある。 例えばOTU暗号 (岡本・田中・内山暗号) はナップサック問題といわれるNP完全問題に基づいており、鍵を生成する際離散対数問題を解くために量子コンピュータを用いる.
量子状態
量子状態とは、量子論で記述される系(量子系)がとる状態のことである。
量子系の物理量は、全く同じように系を準備しても測定をする度に値が異なる。 このことは物理量が定まっている古典系とは明らかに異なる。 量子系において定まっているのは物理量ではなく、物理量の分布を表す確率分布である。 系の準備の仕方が同じであれば、どのような物理量であっても、測定値の確率分布は一定である。 すべての物理量の測定値が一定の確率分布をもつような仕方で系が準備されているとき、その系はある量子状態にあるという。
純粋状態
系が自然界で許される最大限の範囲にわたって指定されている量子状態を、純粋状態という。 純粋状態は、あるヒルベルト空間 の元 のうち、
を満たすもので記述される。ただし、 と は同じ純粋状態を表す。 このような を状態ベクトルという。
混合状態
純粋状態でない量子状態が混合状態である。混合状態は、あるヒルベルト空間 上の演算子ρのうち
• ρはエルミート演算子
• 任意の に対し、
• tr(ρ) = 1
を満たすもので表される。このようなρを密度行列または密度演算子という。
ヒルベルト空間とは、完備な内積空間、すなわち、内積の定義されたベクトル空間であって、その内積から導かれるノルム によって距離を入れるとき、距離空間として完備となるような位相ベクトル空間のことである。一般に、ノルムに関して完備なベクトル空間のことをバナッハ空間といい、内積から導かれるノルムを持つバナッハ空間のことをヒルベルト空間という。ヒルベルト空間について、シュワルツの不等式、三角不等式、中線定理という三つの不等式が成り立つ。
ヒルベルト空間は、関数解析学において中心的な役割を果たしており、また、物理学、特に量子力学の数学的基礎づけに深く関連している。量子力学における状態あるいは固有関数はヒルベルト空間上の正規化されたベクトルであるといえる。
数学において距離空間 M が完備であるとは、距離空間 M におけるいかなるコーシー列も M 内の点に収束することである。またこの空間のことを完備距離空間(complete metric space)と呼ぶ。
解析学におけるコーシー列は、数列などの列で、十分先のほうで殆ど値が変化しなくなるものをいう。基本列、正則列、自己漸近列などとも呼ばれる。実数論において最も基本となる重要な概念の一つである。
バナッハ空間はノルム空間であって、そのノルムが定める距離が完備であるようなもののことである。1922年に、バナッハとウィーナーの二人がそれぞれ独立に論じた。ルベーグ積分、微分多様体と共に、20世紀解析学の基礎となる理論で、偏微分方程式や変分法の研究に不可欠のものとなっている。
ヒルベルト空間は内積から導かれるノルムに関してバナッハ空間となっている
ワンタイムパッド (one time pad, OTP) とは、乱数鍵を1回だけ使う暗号の運用法である。1回限り暗号、めくり暗号とも呼ばれ、情報理論の考案者であるクロード・シャノンが解読不可能であることを数学的に証明した
情報理論は、情報・通信を数学的に論じる学問である。応用数学の中でもデータの定量化に関する分野であり、可能な限り多くのデータを媒体に格納したり通信路で送ったりすることを目的としている。情報エントロピーとして知られるデータの尺度は、データの格納や通信に必要とされる平均ビット数で表現される。例えば、日々の天気が3ビットのエントロピーで表されるなら、十分な日数の観測を経て、日々の天気を表現するには「平均で」約3ビット/日(各ビットの値は 0 か 1)と言うことができる。
情報理論の基本的な応用としては、ZIP形式(可逆圧縮)、MP3(非可逆圧縮)、DSL(伝送路符号化)などがある。この分野は、数学、統計学、計算機科学、物理学、神経生物学、電子工学などの交差する学際領域でもある。その影響は、ボイジャー計画の深宇宙探査の成功、CDの発明、携帯電話の実現、インターネットの開発、言語学や人間の知覚の研究、ブラックホールの理解など様々な事象に及んでいる。
量子もつれとは、複合系がそれを構成する個々の部分系の量子状態の積として表せないような状態にあるときに、非局所的な相関が現れる現象のことをいう。このときの複合系の状態をエンタングル状態という。量子もつれは、量子絡み合い(りょうしからみあい)、量子エンタングルメントまたは単にエンタングルメントとも呼ばれる。
量子コンピュータ は、量子力学的な重ねあわせを用いて並列性を実現する次世代のコンピュータ。2007年現在実用化には至っていない。量子計算機とも言う。
RSA暗号とは、桁数が大きい合成数の素因数分解問題が困難であることを安全性の根拠とした公開鍵暗号の一つである。 暗号(Cipher)とデジタル署名(Digital signature)を実現できる方式として最初に公開されたものである。
NP完全問題は、クラスNP (Non-deterministic Polynomial) に属する問題でかつ、クラスNPのすべての問題から多項式時間帰着可能な問題である。すなわち、NPに属する問題のうちでNP困難なものである。クラスNPに含まれる問題で、あるNP完全問題から多項式時間還元可能なものも、またNP完全である。現在発見されているNP完全問題の多くがこの定理によって充足可能性問題より導かれたものである。充足可能性問題がNP完全であることは1971年、スティーブン・クックによって証明された。