今までのあらすじ
都の外れの杜に不穏な気が漂っている、という事で一人調査に赴いた晴明。
しかし彼は足場の悪いところで足を挫き怪我を負おう。
そこへ将之の親戚筋だと名乗る男が現れ彼を庇護した。
都に戻り将之と章吾が見舞いに訪れる中、助けた若者も晴明邸に訪れた。
尋ねたい事があると言い出した史広を晴明と将之は見遣った。
「私のね、別邸があるのだが最近不思議と物や家畜が無くなったりするんだよ。
この間は大切な愛馬まで失ってしまった。
数人もの家人が居ても誰も行方が分からないという、・・不思議でね」
「・・・単にどっかに無くしたんじゃねえの?」
将之がそ知らぬ感じで云うのを史広は丸い眼をして言い返した。
「繋いでおいた馬まで勝手に何処かへ行くのか?」
「うーーん」
家人に盗まれたのでは?と問う晴明に人里離れた別邸でしかも親の代よりに亘って雇っている信用に足る使用人にそれは無いと史広は云った。
外部の者なら誰かが目にしているはず、狐に抓まれた様に忽然と物が無くなるのだからそれ自体を失う損失以上に気味が悪い。
「まあ、そう高価な物が無くなった訳では無いしね。
急を急く訳では無いがもし良かったら陰陽寮に尋ねてみたいと思っていたんだ」
「失せ物探しと・・・」
「そうだね」
意味深な笑みを見せる晴明に史広はにこりと笑って返した。
「なら私が赴きましょう、貴方には借りがある」
「晴明」
まだ足の容態が悪いんじゃないかと心配する将之をよそ目に史広を見遣ると彼は少し思案した後、ゆっくり微笑んだ。
「申し訳ないがそうして頂けると有難いな。
いつでも良い、足がきちんと治ってから、・・・迎えを寄越しましょう」
さっさと話がついてしまった様子に将之の入る余地は無い。
晴明は頑固だ、自分が何か進言しても事態は先ず変わらない。
やれやれと将之は頭が痛い思いをしつつ髪を梳いた。
そんな二人の様子を史広は何を云うでなし眺めた。
そこへ章吾が足の腫れに良く効くという膏薬を持って訪れた、夕暮れ晴明邸には四人の男が同席した。
晴明の側で心配そうに見遣る男が二人。
その間、晴明は気使いは無用というばかりに少し遠慮した態度を見せつつ
薄く微笑んだ、初秋の澄んだ空気と茜色の陽射しが室内に入り込む。
それが晴明の銀糸の髪を艶やかに彩った。
史広はそれをじっと見詰めた。
「・・・・・・、しかし今まで噂には聞いていたし遠目にも眺めていたのに、
側に寄ると又違うものだね。晴明殿は気高く美しい」
「はあ!?」
突然の史広の云い様に三人は目を丸くした、尚も世辞を続ける史広に将之は割り入った。
「おいおい、お前まで章吾様な事を云うなよ」
「章吾・・・?」
少し膨れた様な章吾とげんなりした面持ちの将之とを見比べる、章吾はどうやら晴明に懸想をしているらしい、苦笑してみせる晴明と三人の顔を順繰り眺めて後史広は顎に手をあてながら云った。
「ふうん・・・、私は晴明殿と将之が懇意にしていると思っていたよ。
てっきり付き合っているもんだとばかり・・」
「「ええ!!?」」
史広の発言に将之と章吾は目を丸くして驚いた。
「ま、将之、本当なのか!?お前は俺を謀って・・・」
「し、知らん!俺も今始めて驚いている!」
今にも泣き出しそうに将之を責めた章吾であったが本当に驚き慌てふためく将之は自分を騙した訳では無いと悟るとそれ以上苦言を言わなかった、が掴んだ彼の腕は放さない。
何だか忙しそうな二人を傍目にふふっと史広は面白気に微笑んだ。
「・・・・・・」
柔らかな笑顔の史広と視線が合う。
「心強いね、晴明殿」
「・・・・・・」
茜色の空にうろこ雲が棚引く。
続く
都の外れの杜に不穏な気が漂っている、という事で一人調査に赴いた晴明。
しかし彼は足場の悪いところで足を挫き怪我を負おう。
そこへ将之の親戚筋だと名乗る男が現れ彼を庇護した。
都に戻り将之と章吾が見舞いに訪れる中、助けた若者も晴明邸に訪れた。
尋ねたい事があると言い出した史広を晴明と将之は見遣った。
「私のね、別邸があるのだが最近不思議と物や家畜が無くなったりするんだよ。
この間は大切な愛馬まで失ってしまった。
数人もの家人が居ても誰も行方が分からないという、・・不思議でね」
「・・・単にどっかに無くしたんじゃねえの?」
将之がそ知らぬ感じで云うのを史広は丸い眼をして言い返した。
「繋いでおいた馬まで勝手に何処かへ行くのか?」
「うーーん」
家人に盗まれたのでは?と問う晴明に人里離れた別邸でしかも親の代よりに亘って雇っている信用に足る使用人にそれは無いと史広は云った。
外部の者なら誰かが目にしているはず、狐に抓まれた様に忽然と物が無くなるのだからそれ自体を失う損失以上に気味が悪い。
「まあ、そう高価な物が無くなった訳では無いしね。
急を急く訳では無いがもし良かったら陰陽寮に尋ねてみたいと思っていたんだ」
「失せ物探しと・・・」
「そうだね」
意味深な笑みを見せる晴明に史広はにこりと笑って返した。
「なら私が赴きましょう、貴方には借りがある」
「晴明」
まだ足の容態が悪いんじゃないかと心配する将之をよそ目に史広を見遣ると彼は少し思案した後、ゆっくり微笑んだ。
「申し訳ないがそうして頂けると有難いな。
いつでも良い、足がきちんと治ってから、・・・迎えを寄越しましょう」
さっさと話がついてしまった様子に将之の入る余地は無い。
晴明は頑固だ、自分が何か進言しても事態は先ず変わらない。
やれやれと将之は頭が痛い思いをしつつ髪を梳いた。
そんな二人の様子を史広は何を云うでなし眺めた。
そこへ章吾が足の腫れに良く効くという膏薬を持って訪れた、夕暮れ晴明邸には四人の男が同席した。
晴明の側で心配そうに見遣る男が二人。
その間、晴明は気使いは無用というばかりに少し遠慮した態度を見せつつ
薄く微笑んだ、初秋の澄んだ空気と茜色の陽射しが室内に入り込む。
それが晴明の銀糸の髪を艶やかに彩った。
史広はそれをじっと見詰めた。
「・・・・・・、しかし今まで噂には聞いていたし遠目にも眺めていたのに、
側に寄ると又違うものだね。晴明殿は気高く美しい」
「はあ!?」
突然の史広の云い様に三人は目を丸くした、尚も世辞を続ける史広に将之は割り入った。
「おいおい、お前まで章吾様な事を云うなよ」
「章吾・・・?」
少し膨れた様な章吾とげんなりした面持ちの将之とを見比べる、章吾はどうやら晴明に懸想をしているらしい、苦笑してみせる晴明と三人の顔を順繰り眺めて後史広は顎に手をあてながら云った。
「ふうん・・・、私は晴明殿と将之が懇意にしていると思っていたよ。
てっきり付き合っているもんだとばかり・・」
「「ええ!!?」」
史広の発言に将之と章吾は目を丸くして驚いた。
「ま、将之、本当なのか!?お前は俺を謀って・・・」
「し、知らん!俺も今始めて驚いている!」
今にも泣き出しそうに将之を責めた章吾であったが本当に驚き慌てふためく将之は自分を騙した訳では無いと悟るとそれ以上苦言を言わなかった、が掴んだ彼の腕は放さない。
何だか忙しそうな二人を傍目にふふっと史広は面白気に微笑んだ。
「・・・・・・」
柔らかな笑顔の史広と視線が合う。
「心強いね、晴明殿」
「・・・・・・」
茜色の空にうろこ雲が棚引く。
続く
なんか大人の余裕が感じられて良いです♪
穏やかな人柄だし、理想かも~(>▽<)
史広は章吾と幸久があまにりも子供っぽいので後から作ったキャラです(^^。。)
幸久がスネオ状態なのでちょっといい子系で・・(^^。。)
将之と同じ年の設定です、又違うタイプの性格を書いてて面白いです、笑。
気に入って頂けて嬉しいです(泣き)
コメント御座いました(^0^)