つくしに対する美作さんの愛は、春の陽射しのように柔らかい。
つくしに対する道明寺さんの愛は、夏の太陽光線のように強い。
そして・・・・
つくしに対する西門さんの愛は、まるで劫火の如く危うい。
比翼連理~5
つくしから事の全貌を聞かされた私は、本当に心の底から驚いた。
と同時に、つくしが心の安らぎ場所を見出した事に喜びを隠せないでいる。
と同時に、つくしが心の安らぎ場所を見出した事に喜びを隠せないでいる。
道明寺さんに対する恋心に区切りをつけ、自分なりに気持ちの整理をつけてから新しい恋に踏み出した。
そんなつくしには今度こそ、幸せになってもらいたい。
だから私は、西門さんから何を聞かれても知らぬ存ぜぬで通した。
されど敵(?)もさる者ながら、中々手強い。
されど敵(?)もさる者ながら、中々手強い。
「優紀ちゃん、バイトお疲れさん」
「西門さん!?」
・・・ほら。今日も千石屋の裏口で西門さんが待機してたよ。
「夜道は危ないから送ってくよ」
「あ、いえ。これから寄る所がありますから結構です」
「ふ~ん・・じゃ、その場所まで送るから」
「あの・・すぐそこですから。本当に大丈夫です」
「・・・俺が送ると何か不都合な事でもあんのか!?優紀ちゃん」
意地悪い笑みを浮かべながら、車のキーをポケットから取り出す西門さんに、私はどうやって
抗(あらが)えばいいんでしょうか!?
まさか「雪月花」にバイトの面接を受けに行くなんて言えない・・・。
このピンチをどう乗り切ろうかと頭を悩ませていたら、
「総二郎に・・・優紀ちゃん?こんな所で何してんだ!?」
のんびりとした美作さんの声が私の耳に届いた。
嗚呼!!神様 仏様 美作様!!どうもありがとう。ピンチから脱却できそうです。
「あきら?お前こそ何してんだ!?」
「ん?この先にあるレストランに用事があるんだよ。ところでお前は何やってんだ?」
そう言いながら私をチラリと見た美作さんが、「心配するな」と言わんばかりの目をしている。
そんな美作さんに私はコクコクと頷き、成り行きを見守る事にした。
「俺は優紀ちゃんに用があって来たんだ」
「そうか。だが、優紀ちゃんとの用を済ませる前に、お前を血眼になって探してる女との用を
済ませた方がいいんじゃねぇの?」
「はっ!?」
「すぐ近くでお前の事を必死になって探してるぞ?」
「げっ!!」
「優紀ちゃんをトラブルに巻き込む前に、早く逃げた方がいいんじゃないか?」
お前を刺しそうな勢いだったぞ!?・・・美作さんのこの一言で、やっと西門さんは車に乗って
どこかに行ってしまった。
はぁ・・・これで一難去ったよ。まずはよかった・・・と、ほっと胸を撫で下ろしたら、
「優紀ちゃんにも迷惑かけちまってゴメンな?」
申し訳なさそうに、美作さんが「ゴメン」と手を合わせた。
「そ、そんな!!こちらこそ、助けて頂いて申し訳ないです」
「いや、そもそも牧野の事を隠してるから優紀ちゃんに迷惑かかっちまってる」
「そんなこと・・・」
「だから優紀ちゃんが謝る必要はないんだ。本当にすまない」
「・・・自分の意思でつくしの事を秘密にしてるんですから、謝らないで下さい」
―――この人は本当につくしの事を想ってるんだ。
そう、直感した。
美作さんの態度を見れば一目瞭然。つくしに対する言動全てが、優しさに溢れてる。
この前、西門さんの事を相談しに「雪月花」に行った時も、言葉の端々からつくしに対する
想いが溢れ出してた。
この前、西門さんの事を相談しに「雪月花」に行った時も、言葉の端々からつくしに対する
想いが溢れ出してた。
「つくしは・・・幸せ者ですね」
「えっ!?」
「いえ、何でもないです・・・っと!バイトの面接に遅れちゃいます!!」
「おっと!じゃ、急いで地下鉄乗り場に行かないとな」
「!?ち、ちちち地下鉄!?」
「やっぱり親友だな。牧野と同じ反応かよ」
美作さんは気まずそうに笑いながら、「さ、急ごう」と地下鉄乗り場を指差し歩きだした。
だって・・・ねぇ!?
「あの」F4の美作さんが公共交通機関を使うなんて信じられないよ。
世間一般の常識を知りたいから、一般人と同じ経験を積んでるとつくしから聞かされてはいても、
実際目の当たりにすると驚いちゃうわよ。
実際目の当たりにすると驚いちゃうわよ。
美作さんは公共交通機関を利用。
片や、西門さんは外車を利用。
片や、西門さんは外車を利用。
比べてはいけないんだろうけど、こうやって見てみると、美作さんの方が断然大人だと思う。
考え方もしっかりしてるし・・・だからこそ、つくしも好きになったんだろうな。
じゃあ、美作さんは!?
つくしの事を想っているのは何となく分かるけど、確証がない。
私が立ち入るべき事じゃないと重々承知してるけど、でも「雪月花」に向かう車内でつい、
美作さんにつくしが好きなのか聞いちゃったの。
そうしたら、こっちが拍子抜けするくらい、
「好きだけど!?」
サラリとつくしに対する気持ちを口にしてくれた。
「えっと・・・美作さんは、つくしに自分の想いを告げないんですか?」
「今はまだ言えない」
「言えないって・・・どうしてですか?」
ズカズカと心の中を踏み入る事をしたくないんだけど、でもどうしてもその理由が知りたかった。
お互いがお互いを想い合ってるのに何で!?
私の心の叫びが聞こえたのか、美作さんは微笑を浮かべながらその理由を話してくれた。
「周囲から何か言われても、それを跳ね除ける力が今の俺にはない。そんな俺が牧野に告白して
どうする!?」
どうする!?」
「それは・・・」
「何年かかるか分からないけど迎えに行くから待ってろ、そんな無責任な事は言えない。先が
見えにくい約束をしたところで、牧野を傷つけるのがオチだ。司の二の舞だけは御免被る」
見えにくい約束をしたところで、牧野を傷つけるのがオチだ。司の二の舞だけは御免被る」
「そう・・・ですね」
「今は同じフィールドに立って戦ってるだけで充分だ。少なくとも、総二郎や類よりは
俺の方が牧野との絆は深い。それだけでも嬉しいんだよ」
俺の方が牧野との絆は深い。それだけでも嬉しいんだよ」
「でも、つくしは・・・」
それでも美作さんから「好きだ」と言われたいんじゃないか・・・そう言いそうになった。
両想いだと分かれば、つくしも前向きに考えるはず。
そんな私の心を見透かしたかのように、
「牧野が俺を好きだと分かっていても、告白はしない」
キッパリそう断言した。
「美作さん・・・つくしの気持ちをどうして・・・」
「いつも牧野を見てるから分かる。本人は隠してるつもりだろうけど、司にもバレバレだ」
「はぁ・・・」
「俺が牧野に告白する時は、将来のビジョンが見えた時だ」
つくし・・・つくしが好きな人は、ちゃんと将来の事を考えてるよ!?
だから、何があっても美作さんを信じてね。
美作さんとなら、絶対に幸せになれると思うから。
※この話は、2011/3/10にヤフーブログでアップしたものです。