web 更級日記

更級日記には源氏物語を入手した時の興奮ぶりが書かれているのに因んで、好きなことに我を忘れる私の日記の題名に借用した。

祝 ケン・ローチ監督!

2006-05-30 23:56:46 | ●欧米映画&TV
28日に閉幕したカンヌ映画祭。ケン・ローチ監督の、20世紀初頭のアイルランド独立戦争&内戦をテーマにした The Wind That Shakes the Barley(麦を揺らす風)が最高賞のパルム・ドールに輝いた。カンヌの常連監督だが、パルム・ドールは初。
しかも今年の審査委員長は香港の王家衛監督だ。因みにローチ作品は、審査員団の満場一致だそうである。
主演は、先ごろニール・ジョーダンの『プルートで朝食を』で妖艶な女装を披露したキリアン・マーフィ。今回の彼の役は、ロンドンで医学の勉強を志すも、兄(弟?)によって、アイルランド独立運動に引きずり込まれ、夢を断念。しかも内戦では、兄弟で敵味方に分かれるという悲劇的なものらしい。ある欧米系映画ジャーナリストによるカンヌ・レポートでは、主演男優賞有力候補などと書かれていて大絶賛。

私としては、王家衛とケン・ローチという、一見、両極端に見える組み合わせの受賞結果に、興奮を禁じえなかったが、それにしても、今回のアジア勢は寂しかった。コンペ部門は中国のロウ・イエ監督の『頤和園』一本きりで、主演女優賞有望などと騒がれたが、結局は無冠に終わった。

ロウ・イエの新作は未見だから、なんともいえないが、150分という上映時間は苦痛だったという、別の欧米系映画ジャーナリストの感想も読んだ。王家衛のスタイルはロウ・イエのそれとは、非常に対照的だと思うが、王家衛がこの作品を推さなかった理由はなぜなのか、いずれ『頤和園』を見る機会があったら、じっくり考えてみたいものだ。

それから、監督賞受賞作の『Babel』も気になる。
メキシコのアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作品。
製作はアメリカで、ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベルナル、役所広司という話題性豊かなキャスト。日本での配給は、まだ不明だそうだが、この顔ぶれなら、間違いなく日本公開されるだろう。テーマも<バベルの塔>に由来するタイトルから連想されるように、グローバル化の中での深刻なコミュニケーションの断絶を扱っているとのことで、とても興味をかきたてられる。