カトリック山鹿教会

一緒に歩いてくださる方の出会い。
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山鹿教会 - 心の物語 ー

2009年05月23日 | Weblog
少年とアイス

アイスを今よりもっと安い値段で食べることのできたころのお話です。10歳の少年がひとりでバールにやって来て、小さなテーブルに座りました。ウェートレスが彼のところに水の入ったコップを運んできました。
「チョコレートパフェはいくらするの?」と少年はたずねました。
「50セントよ。」とウェートレスは答えました。
少年はポケットのお金を取り出して数え始めました。
「えーっと、アイスだけだったらいくらなの?」
ちょうどそのとき他にも待っているお客たちがいたので、ウェートレスは少しいらいらしてきました。
「35セント!」ウェートレスはつっけんどんに答えました。
すると男の子はもう一度お金を数えなおして言いました。
「じゃあ、アイスだけのをちょうだい!」
ウェートレスは彼のところにアイスと勘定書を運んできました。少年はアイスを食べ終わるとレジで勘定を支払い、店を出て行きました。ウェートレスはテーブルを片付けにもどって来て、お皿のすみに自分へのチップが15セント置かれているのを見ると涙が出そうになりました。
少年はウェートレスへのチップを取っておくために、自分が食べたかったチョコレートパフェを注文しなかったのでした。
(宮本 訳)

山鹿教会 - 心の物語 ー 

2009年05月11日 | Weblog
若い女性とビスケット

若い女性がひとり、大空港の待合室で自分が乗る便を待っていた。待ち時間がかなりあったので、時間つぶしに本を読むことにした。本を買うついでにビスケットも一包み買った。
静かな場所で読みたかったので、人の少ない貴賓室の席に座った。彼女が腰をおちつけた席の横の椅子にビスケットが載っており、そのむこうの席で男性が新聞を読んでいた。
彼女がビスケットを食べると、彼も1枚つまんで口にした。彼女は、ずいぶん失礼な人だと内心怒りを覚えたが、黙って本を読み続けた。何か痛烈なひとことを浴びせたいと思ったが、その勇気がなかったのだ。
彼女がビスケットを1枚取るごとに、彼も1枚食べ、それは最後の1枚になるまで続いた。彼女はいじわるく考えていた。 “このあと彼がどうするか、なんと言うか見ものだわ。” 
最後のビスケットを手にとった彼が、黙ってふたつに割ったとき、彼女はとうとう我慢ができなくなった。大きくため息をつくと、立ち上がり、読みかけの本と自分の持ち物をまとめて、その場所を離れた。
気分がすこし落着いてくるにつれ、もう他の人とのことで嫌な思いをしたくなかったので、通路沿いにある椅子に座ることにした。そこで、開いたまま持っていた本を閉じ、バッグにしまおうとしたそのとき、そのバッグの中にまだ開けていないビスケットの包みがあるのに気がついた。それは、ついさきほど男性といっしょに、競うように1枚づつ取って食べた、あのビスケットと同じものだった。そのビスケットの持ち主である彼は、怒らず、心を乱したそぶりも見せず、当然のように彼女と分け合ったのだった。
自分自身の勘違いに気づかないまま、自分はなんと恥ずかしいことをしたのだろう。“私は傷ついた”と一方的に思い込んで、怒りをあらわにした自分。それなのに彼はなんと立派だったことだろう。 彼女は、いまになって気がついたのだった。 
(吉川  文再構成)