仕事と生活の授業(続き)

前に作ったホームページは、あまり読まれないようなのでブログで再挑戦です。

11.『言の葉の庭』 2013年 新海誠監督

2015年10月14日 | 映画の感想文
【映画の感想文】

11.『言の葉の庭』 2013年 新海誠監督


 新海誠監督の『言の葉の庭』、GYAOで無料配信とのことで、今回初めて見ました。

 美しい映像にみとれてしまいました。

 雨粒の跳ね返りの重みが前半と後半で違っていて後半の方が好みかな...、

 なんて考えて見てました。



 会社に来れなくなった仲間が3人います。
 (私の身の回りのことです。)

 内、一人が来れなくなった原因については、

 自分も全く無罪とは言えない。
 (少なくとも守りきれなかった力のなさは咎められるべきだと思う。)

 一度傷ついたものは元に戻らないのかもしれないけれど、

 外見だけでも(表情だけでも)、元のようになるまでに1年から1年半掛かりました。


 その間ずっと寄り添ってきて
 (それが回復を妨げていたのかもしれない)、

 人の心がこんなにも脆くて、

 歯車がかみ合わなくなると今までと別世界に行ってしまうことを、

 残念ですが、学びました。


 3人の仲間の心を間近に見てきた経験が、

 『言の葉の庭』の最後の5分を心静かに見続けることを許してはくれません。

 雪野さんの叫びが心に突き刺さります。



 私たちは、壊れやすい荷物を抱えて生きてきています。

 会社に来れる人も、来れなくなってしまった人も、

 その荷物を必死で守って暮らしているはずです。



 無防備では一瞬たりとも生きていけないのでしょう。



 守る楯が人それぞれで

 能力だったり、

 人柄だったり、



 「嘘」だったり...、



 見え透いた「嘘」を聞くたび、

 その人の心の弱さと、

 必死で荷物を守ろうとしている悲しい境遇を、

 (その人を何とかしてあげたくても)

 どうすることもできない自分の無力を...、





 悲しい、




 生きていくことはとても悲しい。



 荷物を抱えている人、全てに

 救われる何かがありますように。



 (雪野さんにとっての秋月くんのように)



 ********************************



 順番が逆のような気もしますが、

 『言の葉の庭』のストーリーを紹介します。


 (ネタバレあります)


 『言の葉の庭』は、

 学校に行かない高校生と、

 職場に行けない社会人の接点を描いた映画です。



 空の匂いを連れて来てくれる雨の朝は、

 学校に行かず、新宿御苑の緑の中で自分の夢に思いを馳せる高校生。


 毎朝ありったけのエネルギーを使って家を出て職場に向かうのに、

 結局行くことができず、

 緑と雨の匂いのする同じ公園の中、本を読む社会人。



 雨の降る午前中にだけ許された出会い。



 高校生は、

 靴職人になることが夢です。

 幼い頃の家族の記憶から、靴というものが女性に特別な喜びを与えることを知り、

 その喜びが象徴する幸せな人間関係を求めています。



 社会人は、

 今までなんでもなかった職場が、(社会が、)自らに牙を剥く別世界になったと感じ、

 それ以上に自らの居場所がなくなってしまったことに不安と怖れを感じています。



 ただ一つの居場所が、

 雨の公園でした。



 高校生は、その社会人が自分の高校の女性教員だったことを知ります。

 少し前を向いて歩けるようになった社会人は、高校生に「さよなら」を言います。

 そして、世界から孤立しかねない状況を救ってくれた高校生に感謝を表します。
 (とても激しく)



 彼が世界と自分との唯一の紐帯だったことを告白することで。



 以上がストーリーです。



 とても悲しく、美しいお話です。


 (月と金星のコラボを映したシーンもありますね。)


 Fin.
コメント
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