宇宙から還りし王(山稜王改題)第14回
(1978年作品-2020年改訂)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
ゼルシアにいるはずの暗殺者ケインは、いやケインの意識は、過去の経緯を体験させられている。
いわば、神の目だ。これは、ケインの意識を、頭の中を、宇宙から帰ってきた男ネイサンが操っているのだ。
北アメリカ大陸、マリナ市フロント街、にある「連邦宇宙省」長官室。
長官室二人の男が深刻な顔でモニターをながめ、話し込んでいた。
秘書官たちは同席していない。2人だけの秘密会議だ。
「ここが問題の場所だ」
白髪の男が言った。
彼らは探査衛星から採取した映像を見ているのだ。
モニターの画像上で、リハビリテーションセンターの建物が瞬時に、
収斂し、次の瞬間には消滅していた。
「これが、いわゆる宇宙から帰ってきた男ネイサンの仕わざというのかね。ジェイムズ」ブラウン
髪の長身の男が言う。
「そうとしか考えられんよ、」
相手の白髪の男は立ちあがり、テーブルの上のコップにリゲル酒をつい
だ。
「リハビリテーションセンター内のカメラアイは本部に、アゴルフォスが逃げ出し、兵
士達をなぶり殺しにするシーンまでは記録していた」
「で、それからアゴルフォスは」
「ネイサンの特別収容室へ入り込んだようなのだ。そこからカメラが破壊された」
「考えられる逃げ場所は」
キーンと呼ばれた男が尋ねる。
「わからん、ネイサンには係累はない」
「わからんだと、それではどこかの空間へ逃れたかもしれんのだな、
ジェイムズ」
キーンは少し考えていった。
「それならば、『地球意志』に報告せねばなるまいな。ジェイムズ」
「そうだ。キーン。それに彼ネイサンの抹殺指令も『地球意志』から出してもらわねばな」
二人の男は地球連邦軍情報省長官、キ-ン=ネレトバと
宇宙省長官、ジェイムズ=スターリングだった。
二人は、会議室をでて、「連邦宇宙省」ビルから「地球連邦軍評議会」ビルヘ向かう。
(続く)
■宇宙から還りし王(山稜王改題)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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