「かき氷2000円、ハンバーガー3000円…」五輪取材記者がうろたえた“パリの物価事情”「ユニクロも日本の約2倍」だが…意外に安い“ある食べ物”とは?様記事抜粋< 8月11日の閉会式をもって幕を下ろしたパリ五輪。日本から現地に飛んだファンやメディア関係者にとって、切実な問題だったのが食事をはじめとしたパリの物価事情だ。円安も手伝って「一食2000円」を優に超える物価高騰の現実を、五輪取材記者が詳細にレポートする。(全2回の1回目/「選手の食事事情」編へ) 【実際の写真】「これで2000円超はエグい…」かき氷2000円、ハンバーガー3000円…高すぎ“パリの物価事情”「スタバ、マック、ユニクロもこの価格」現地写真を一気に見る(全60枚)
カフェの「モーニングセット」は驚きの2200円
日本に比べると、何かと「物価が高い」と言われるヨーロッパ。 実際に五輪取材でパリに滞在してみてどう感じたかというと、「やっぱり高い」というのが正直なところだ。 ただ、20日近く滞在してみて、衣食住で若干印象が異なる。以下、選手にも少し関わりがある衣と食の2つのテーマにしぼって、パリ滞在で直面した物価問題について紹介したい。(※「住」に関しては開会式記事をご覧ください) 観光客が必ず直面する食。まずは朝ご飯を食べようと市内を見て回るといきなり高い。 朝8時のパリ。観光地の中心に位置するシテ島のカフェに入ってみた。メニューの一番上にある「モーニングセット」をオーダーすると、頼んだカフェラテに加え、クロワッサンとフランスパン、バター、いちごジャム、オレンジジュース、あと水が出てきた。クロワッサンは美味しく、本場のフランスパンにも舌鼓を打った
早々と会計のレシートが出てきて、不意を打たれた。13.80ユーロ(約2200円、以下カッコ内は8月11日時点のレート換算)。今は円安進行が進み、1ユーロ=160円前後だが、1ユーロ=100円と考えても、日本の感覚からすると高い。高すぎる。「コメダ珈琲店」のモーニングが460円(ドリンクに半分に切ったトースト、卵やジャムなどがつく)からと考えると、5倍近い値段に驚くほかない。 司法関係者が足繁く通うというこの店。ここだけが高級志向で、観光地の特別価格の可能性もある。地元の人で賑わうパン屋だとどうだろうか。 パリ最北部のバドミントン会場「Arena Porte de la Chapelle」から歩いて5分ほど。パリ18区にある「Artisan Boulanger Pâtissier Street Food Sahbi」という持ち帰り専門のパン屋を訪れた。地元の人が一人ひとりフランス語で素早く注文し、急ぎ足で店を出ていく繁盛店だ。クロワッサンは1.20ユーロ、パン・オ・ショコラと呼ばれるパイ生地にチョコが練り込まれた一品は1.40ユーロ。日本円換算で190~220円ほど。日本国内でも食材が値上がりしている現状を考えると、そこまで高さを感じない。他のパンも日本に比べて割高感はあまりなく、外で安く何かを買って帰りたい時はパン屋こそが正解だと思い知る
ちなみに高級志向のパン屋でもクロワッサンは1.50ユーロほど。日本に200店舗以上あるフランスの名を冠した「VIE DE FRANCE」では280円。味はどこも美味しく、クロワッサンなどのシンプルなパン類は値段に納得できる。レスリング女子53kg級の金メダリスト・藤波朱理やマラソン男子で6位に入賞した赤崎暁もクロワッサンの美味しさを激賞するなど、選手も太鼓判を押している食べ物
猛暑のパリでかき氷を食べてみたら…
パンに合わせて飲むドリンクはどうか。 地下鉄にはエスプレッソのミニカップ1杯を出してくれる自販機があり、値段は1ユーロ。フランスの大手スーパー「カルフール」でも1ユーロ。日本のコーヒーチェーン店「ドトールコーヒー」のSサイズ250円と比較しても、かなり気軽に飲める印象だ。実際、カフェメニューの一番上にエスプレッソがある店が多く、街中のカフェテラスでも2人に1人はエスプレッソを飲んでいて一番人気の感がある。 飲み物の中では緑黄色野菜のミックスドリンク(300ml)が3.22ユーロ(約510円)と、日本と比べてかなり高い。他にも飲食店のヴィーガンメニューなど健康志向が強いものは値段が張る印象だ。ちなみに「スターバックス」で期間限定の「クリームブリュレ・ブラウンシュガーフラペチーノ」を頼んでみると、一番小さいサイズがトールで、5.75ユーロ(約920円)だった。
パリでも35度を超えるなど猛暑日を記録している今年の夏。夜ご飯までの間にも体が水分を欲する。暑い日には、水を持ち歩かないパリ市民のために300~500mlの水のボトルがまさかの無料で配られる。配布場所は地下鉄の駅などだ。筆者も何度か手渡されたことがあった。ちなみにスーパーで買うと水のペットボトル500mlで1ユーロほどかかる。円安マジックが働いて高く感じるが、そこを割り引けば高さは感じない。なお、水筒の文化が徐々に浸透しており、大きな競技会場の場合は、施設周辺にもウォーターサーバーが設けられ、無料で水を手に入れることもできる。 五輪期間中、日本の気温を超える時もあったパリ。常温の水より冷たいものを口に入れたい。そう考えて訪れたのが有名な和菓子店「とらや」だ。パリでカフェと商品販売の店舗を運営しており、そのイートインメニューの中に「宇治金時かき氷」がある。値段は13ユーロ(約2100円)。日本の甘味処だったら、平気で3個くらいは食べられそうな値段
特大サラダボウルが3000円、マクドナルドのセットは1400円
夕食を外食で済まそうとすると、おしなべて高い。 テラス席が賑わうカフェレストランで数品頼んで、お酒まで頼んでしまうと、すぐ60ユーロを超え、日本円の1万円を上回ってしまう。あまりに怖くてテーブルクロスが敷かれているお店には入れない。メインディッシュが高いだけでなく、前菜も豪華。競技取材の合間にカフェレストランで昼と夕食を兼ねた腹ごしらえをしようと「イタリアンサラダ」を頼んだところ、特盛ラーメンの鉢に入ったような巨大なサラダボウルが現れた。お値段は19ユーロ(約3000円)だ。 いい味なのだが、いかんせん量が多い。自分が持っているノートパソコンより重いサラダボウルを前に途方にくれてしまった。なお、レストランが持ち帰り用にパックしてくれたので(頼めばやってくれるケースが多い)、そのサラダを3日ほど夜ご飯として食べ続けた。 レストランではハンバーガーを出すところが多い。街中を歩いていると、テラス席でハンバーガーを食べている人をよく見かける。ボリュームもあるが、その分値段も高い。マクドナルドも日本に比べると気軽に入れる値段ではなく、飲み物のついたバリューセットが軒並み9ユーロ(約1400円)を超えてくる。こちらの味はさすがグローバルブランドだけあって、安心のマックテイストだ
ちなみに競技場で頼んだチーズバーガーとコカ・コーラは18ユーロ(約2900円)。テラス席があるカフェレストランでバーガーとフレンチフライ、そして飲み物を頼むと20ユーロ(約3200円)を超えてしまう。場所によって価格も異なってくる。
じつは良心的「イタリアのピザ」と「日本のおむすび」
陸続きの隣国イタリアの料理店も街中では目立つ。試しにバレーボール会場近くのイタリア料理屋からマルゲリータを持ち帰って食してみた。値段は12ユーロ(約1900円)。味はさすが本場のピザという感じで、日本で専門店からテイクアウトしたと考えると、これくらいの値段になってもおかしくはない。パリでは相対的に気軽に持ち帰りやすいメニューの一つだと感じた。 ちなみにパリには「おむすび権米衛」があるのだが、昼時には60人近く並ぶ大人気店となっている。高菜のおむすびが2.80ユーロ(約440円)。日本の感覚からするとおにぎり1個で400円超えは高い印象だが、ボリュームもあり、フランスの食事の高さと比較すると良心的といえる。「おむすび権米衛」パリ法人代表の佐藤大輔さんによると、人気の理由は「値段がリーズナブルでおいしい」ところにある
たしかに、パリの街を歩いていると、日本料理を含めたアジアの料理は割安感がある。その美味しさからフランス人にも選ばれているようで、非アジア系の客を多く見かける
カップヌードルや冷凍食品も“やや割高”
一方、外食ではなく、家で調理する食事類はどうか。 先述のスーパー「カルフール」では、日清のカップヌードル(牛肉5個入り)が2.33ユーロ(約370円)。電子レンジで温めて食べられる冷凍食品のパスタ「ケバブチキンとセモリナ」「チキン&ペンネ パルメザンチーズとバジル風味」がそれぞれ4.09ユーロ(約650円)、4.74ユーロ(約760円)だ。 円安を割り引いて1ユーロ100円として考えても、233円のカップ麺、400円超えの冷凍食品は少しだけ日本より高い。 ちなみにカルフールは選手村にも入っており、選手たちはこのスーパーの物品を選手村内で購入できる。
ユニクロのエアリズム「価格は日本の約2倍」
ここまでは食事面についてリサーチしてきたが、衣類はどうか。選手村にも置かれている公式グッズショップを見てみよう。売られているTシャツは30~45ユーロ(約4800~7200円)。一般的なTシャツからすれば高いが、こういった公式グッズは日本でも値段が高くなる傾向がある。ただ、円安が響いていささか割高な印象だ。 しかし、グッズの価格は変動していく。パリ五輪公式マスコット「フリージュ」がプリントされたTシャツは五輪が後半戦に突入したあたりから半額の15ユーロ(約2400円)で売られ始めた。終盤戦に入り、「PARIS 2024」のロゴがプリントされたTシャツも定価30ユーロから半額に。極彩色で「FRANCE」と記されたTシャツ45ユーロも22.50ユーロ(約3600円)に半額値引き。ロゴ入りキャップも35ユーロから20ユーロ(約3200円)へと大出血サービスだ。 割安な五輪関連商品が売られているのは、競技会場内だけではない
陸上競技や閉会式の会場となったスタッド・ド・フランス。その脇のシネコンには、スポーツ用品店「デカトロン」もある。フランスに本社を置き、世界に1000店舗以上を展開している量販店だ。1500平方メートルほどの一区画ワンフロアにさまざまなスポーツ、アウトドア用品が陳列されている。 「PARIS 2024」のロゴが入ったキャップは8ユーロ(約1280円)、同じロゴ入りTシャツは10ユーロ(約1600円)、靴下は1足8ユーロ。フランス代表のロゴ入りポロシャツは15ユーロ(約2400円)だ。こういったスポーツ観戦のグッズは日本で価格が高騰しており、現地価格とあまり変わらない印象を受けた。ちなみに東京五輪の時にファミリーマートで売られていた日本代表公式ウェアは3300円。衣類に関しては食事ほどの割高感はないのだ。 続いて日本でも馴染みのある「ユニクロ」に入ってみた。エアリズムのコットンクルーネックTシャツは14.90ユーロ(約2400円)。日本で買うと1290円の商品で、およそ2倍の値段だ。だが、フランスからすれば輸入品。滞在が長く、金銭感覚が麻痺しているのかもしれないが、輸入などのコストを考えると、これくらいだろうという感覚になってくる。 一方で先述のバドミントン会場の近く、19区の古着屋を見てみると、Yシャツやズボンは9.90ユーロ(約1590円)、カゴに入ったTシャツ類は3.30(約530円)ユーロだ。 より好みをしなければ、食品や服に関しては安い値段の物品も(かなり少ないが)あるにはある、というのが実感だ。 ここまで食事と衣類の物価を見てきたが、競技に深く関わるのはやはり「食」だろう。選手たちのパリでの食事について取材を進めると……。 <「選手の食事事情」編へ続く>
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