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尿ぢゃなくて本物を連れてきたら?

2007年10月28日 | 時事

オオカミの尿効果上々 仙台の農家、猿害対策実験
(河北新報) - goo ニュース


 ニホンオオカミが絶滅してから100年,それでもオオカミの尿の匂いがサルに効果があるということはやっぱり遺伝子レベルで恐怖か組み込まれてるんですかね。それとも単に嗅ぎ慣れぬ匂いだから警戒しているだけでいずれ慣れちゃうのか。……その可能性もあるわな。

 ここはやはり日本の山にオオカミを復活させるという日本オオカミ協会のアイディアを真剣に考える時期に来ているんぢゃないか。そんなことをしてオオカミがヒトを襲ったらどうするのだ,と思うヒトがいるかも知れぬ。が,その危険性は今もあるクマやイノシシとさして変わらない,か,もっと低いかも知れないのだ。

 くわしくは同協会のメンバー,丸山直樹氏らが著した「オオカミを放つ」をお読みいただきたいが「ヒトを襲うケモノ」としてのオオカミ観は,基本的に西洋童話の影響である。日本の昔話にオオカミがヒトを襲う話がありますか? それどころかオオカミが出てくる話自体とっても少ない。逆に言えば多くの日本人にとってオオカミがキツネやタヌキほど身近な動物ではなかったせいで,彼らに関する基礎的な知識が少なく,西洋から入ってきたオオカミ観がまんま根付いてしまったのだ。

 ではなぜ西洋で「オオカミがヒトを襲う」という話がたくさん生まれたのか。それは中世という時代背景と関係がある。上記の本に,ドイツのオオカミ研究家ツィーメンによれば,ヨーロッパにおけるオオカミの悪しきイメージは彼らがヒトの遺体を食ったことに由来しているらしい。中世ヨーロッパでは戦争や伝染病,飢饉などが相次ぎ,人間の埋葬が確実に行われなかった。また出征などで地域社会の男性比率が下がり,オオカミに対する圧力が弱まっていた。その状況下で人間の死体の味を覚えた群れが人間に対する警戒心をもたなくなった,という。実際,現在のヨーロッパでオオカミがヒトを襲うことはないし,墓を掘り返すという事例すらないそうだ。

 日本の話をすれば,明治時代にオオカミを敵視して駆除したのは,彼らがヒトを襲ったからではなく,人間にとって「狩りのライバル」であり「牧畜の敵」だったからである。ところが現代人はほとんど狩猟を行わない。プロの狩猟家は激減し,趣味のハンターも減少の一途をたどっている。食物連鎖の頂点にあったオオカミを駆除してその座を奪っておきながら,その責任を放棄した格好であり,増えすぎたシカやサルの被害に悩んでいるのである。牧畜に関しても,現代のそれは明治時代とは比較にならないほど行き届いた管理の元に行われており,オオカミを寄せ付けないくらいのことは朝飯前であろう。

 ハブの被害を少なくすると称してもともと日本にはいないマングースを導入し,そのマングースがハブ以外の小動物を食害して(マングースだって好き好んで毒蛇を食ってるわけぢゃないんだから,もっと狩りやすい獲物がいたらそっちを食うのが当たり前なんだけどな)問題になったことがある。が,オオカミはもともと日本にいた動物である。種類が違うんぢゃないかというかも知れぬが,種としてはオオカミは全部ハイイロオオカミであり,ニホンオオカミだのシンリンオオカミだの言うのは地域ごとの亜種なのだ。マングースを入れて置いてオオカミを戻さない手はないんぢゃないか,と思うんだが。


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