日々のデキゴト

見落としがちな日々の出来事、小さな感動や驚きを綴ってます。
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「片思いのプレゼント」(旧HPより)

2002-04-06 00:00:00 | アーカイブ(旧letters他)
親愛なる君へ

昔、片思いだった女性をライブに誘ったことがある。
入社して2年目だったかな。
カナダ出身の超大物プロデューサーDavid Fosterが、自分がプロデュースしたアーティスト達を引き連れての来日ライブだった。
David Fosterの大のファンだった僕は、どうしても彼女と一緒に行きたいと思った。
チケットを買う前にいいたかったのだけど、言い出す勇気がもてずに、僕はいってもらえるかもわからないチケットを2枚買った。
1枚7千円くらいだったから、2枚買えばそこそこの金額だ。
結局本人にきりだしたのは、コンサートの前日だった。

当時、彼女は、小さな雑貨店の店長をしていて、仕事の時間も不規則だった。
僕はお店の前でなんどもウロウロしたあげく、意を決して中に入った。
「友だちと一緒に行く約束してたんだけど、急な用事が入っていけなくなっちゃったんで、よかったら一緒にいきませんか?」
今考えると、なんてしらじらしい理由だろう。もちろん嘘だ。
「ごめんなさい、明日は打合せが長引きそうだから、残念だけど行けないと思う。」
彼女の答えに僕はひどく落胆した。

しかたない、ひとりで行くしかないか。一度はそう思ったものの、どうしてもあきらめられずにコンサート当日の昼過ぎに再度店を訪ねた。
心臓がバクバクいっていまにも破裂しそうな気がした。
僕はまた店の前で30分近くもウロウロしたあげく、大きくひとつ深呼吸して店に入った。
あいにく彼女は用事があって出かけていた。
僕は留守番の店員さんに、「店長が戻ったら渡してください」と言って、チケットと手紙を入れた封筒を渡した。
手紙にはこんな文章を書いておいた。
「他に一緒にいきたい人もいないので、ひとりで行きます。もし遅れてでも来れるようなら来てください。」

コンサート開演10分前。僕の隣に彼女はいなかった。
まわりは友だち同士やカップルなどで、ひとりで来ている人などいなかった。
僕にはコンサートへの期待感など思う気にもなれなかった。
開演1分前、会場の照明が落とされたその時、ふと隣から聞き覚えのある声がした。
「遅れてごめん。駅から走ってきたんだけど。。」
息を切らした彼女が、照れくさそうに笑っていた。
その時の、僕の気持ちがわかるだろうか?
出てきたアーティストがみんな世界一に思えたほどだ。

その後、彼女とは仲良くしてもらったが、お互い忙しくなって付き合う機会もないままに、彼女は会社を辞めて会えなくなってしまった。
それでも、あの時のことは僕の忘れがたい思い出のひとつだ。

好きな人に告白するのに遠慮してちゃだめなんだ。
プレゼントも遠慮しちゃいけない。
もちろん、二人の関係の深さや、その時の状況によっても変わってはくる。
しかし、自分が一生懸命選んだものならば、自信をもって贈ればいい。
たとえそれが相手のセンスに合わなくても、あなたの気持ちは必ず伝わるはずだ。

相手がなにもいってくれなくても、少なくともそれは決定的なノーではないのだ。
きっとだめだ、無理に決まってる。それを決めるのは君じゃない。
自分に悔いを残しちゃいけない。
片思いのプレゼントはいつでも真剣勝負なんだ。

P.S. 君にプレゼントを贈るとき、僕はいつでも真剣です。


[2021.2.6追記]
思い出のライブ映像を見付けたので掲載しておきます。
David Foster ”JT Super Producers ’94” 1994年4月26日(日本武道館)

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