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面白い本が読みたくて

『2030―2040医療の真実』 熊谷賴佳

     病気になっていられない

『2030―2040医療の真実』 熊谷賴佳 中公新書ラクレ 2025年 1050円 246ページ

 副題は「下町病院長だから見える医療の末路」。TVでもやっていたが、全国の病院の6割は赤字で、その理由は現在の診療報酬制度にあるとのことだった。

 著者のお祖父さんが皆保険制度導入の旗振り役をしたとのこと。同時期に導入された診療報酬は、社会保障費増大もあり、国の財政がひっ迫して先細るのみ。そのあおりを受けて中小の病院が次々に破綻しており、病気の高齢者の行き場がなくなりつつあるという。

 その高齢者はというと、認知症の自覚がなく車の運転をしている人も多いらしい。医師のなかで知られていないのは、意識がなかった人に点滴をして意識が戻った際、「うううう」とうなり声を発した場合は前頭側頭型認知症のことが多いらしい。

 認知症の専門医が増えない一方で認知症患者は増えていくという。さらに認知症の診断では誤診も多いとか。お金があれば大丈夫とも言えず、著者の知り合いの高名な脳神経外科の権威の先生は豪華な有料老人ホームに入っても不幸な老後を送った例もあり、誤診も頻発しているそうだ。

 レビー小体型認知症であっても鬱病などと診断され、薬漬けにされ、症状が悪化して別人のようになるのだとか。

 医療費を削減したい財務省の締め付けから、亜急性機や医療療養病床の診療報酬は削減されて大病院などで命にかかわる治療を受けてから自宅に戻れない人の受け皿になっていた病院がどんどん減っているという。

 2週間以上入院する患者が多ければ多いほど病院の経営状態は悪化するのだそうだ。厚生労働省は「社会的入院」を減らすため、2024年3月をもって介護療養病床を廃止した。そこにいた人々は介護医療院で、介護施設だからいくらいても医療施設の平均在院日数には影響しないので、厚生労働省にも都合がいいという。

 他には2040年までには首都圏の医療はマヒし、今までのように119番で救急車を呼んでも受け入れ先がない可能性も出てくること、2030年からは医師、看護師不足が始まること、介護ロボットが低コストで利用できるのは2050年以降と予想されること、その前の2030~2040年には適切な医療や介護を受けられなくて、野垂れ死にするようなことが頻発する恐れがあること、著者の病院も経営が悪化していた時期があったこと、悪徳医療グループによる病院の乗っ取り、土地目的の外国資本が参入する恐れがあること、火葬場業界には中国系の企業が参入していること、医療崩壊が進んでいる大きな原因は「医療データに基づいた医療政策の推進が行われていないこと、医療費が高騰しているから病院が儲けられないようにしないといけないとどんぶり勘定で医療報酬の改定を行っていること、一部の開業医は不必要な抗生物質を処方し、輸入品も含めた養殖の魚のほか、生産過程で抗生物質が使われた鶏肉、豚肉を多くの人が食しているため、耐性菌が広がっていることなどの問題もあるという。
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