
『ひまわり』 新川帆立 幻冬舎 2024年 1900円 482ページ
33歳のときに事故に遭い、脊髄損傷で体が動かせなくなった女性(ひまり)が、復職を試みるもうまくいかず、幼馴染の検察官に促されて司法試験を受けるという物語だ。
壮絶なリハビリやヘルパーさんとの二人三脚、司法試験の介助(六法全書のめくり方なども慣れていないと何分もロスする)など、細かいところまで一般には分からないことを著者はよく知っているなと思ったら、本書を創作する上でモデルとなり、いろいろ話を伺った人がいるという。ただし、本人の体験はその人の口から語るべきという考えから、本書は「モデル小説」ではないと、ことわっている。
ひまりは、商社でバリバリ働いていたけれど、障がいを抱えると途端に働けなくなり、司法試験でも受験の際に音声入力ソフトの使用がなかなか認められず、前例のないことを法務省はなかなか変えない。
話の行方は予想を裏切らないものなのだが、司法試験が体力勝負のスポーツと同じだと語られるなか、よくぞ乗り越えられたなと思う。それ以前に大変な勉強を法学部卒でもないのにロースクールでよく頑張ったと思う。単なるフィクションなら物語としてアリなのだろうけれど、実際にやり遂げた人がいることに驚かされる。
介護の大変さだけでも、家族だけでは疲弊してしまい、ヘルパーさんの手を借りることになるが、良き人がついてくれているのが幸いだ。他にもひまりが知り合った人々が、皆、自分の道を進んでいけたのが良かった。
★★★+
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