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面白い本が読みたくて

『死体は今日も泣いている 日本の「死因」はウソだらけ』岩瀬博太郎



              法医学の環境と死因

『死体は今日も泣いている 日本の「死因」はウソだらけ』岩瀬博太郎 光文社新書 2014年 740円 214頁

 日本は人が亡くなり、警察に通報したあとの処理が他国とは違うらしい。それが犯罪が疑われる、疑われないを警察の所見のみで済ませてしまうこと。初動捜査で犯罪ではないとされても後々問題が出てきて、再捜査となっても既に遺体は火葬され、などで真実を明らかにできないことがあるようだ。また記憶に新しい湯沸かし器のせいで亡くなった青年も、心不全ということになっていたのが、一酸化炭素中毒ということが判明して、他にも似た事例が後々出てきたという経緯がある。また木嶋佳苗容疑者の件も、解剖をしていれば判明することもあったようだ。あとは相撲部屋の「可愛がり」の事件や子どもの虐待死など多方面の死因に関わる話が登場する。

 死因が疑われる原因も挙げられている。見た目で見えるものと、致命的になったものが全く違う場合もあるというのだ。解剖率の多い北欧の国だと、警察では犯罪ではないと思われても、医学的に死因を突き止められなければ解剖や薬物検査に回して、法医学的検査をし、死因を明らかにするのだという。また日本では死亡診断書を書く医師も記載方法に対して認識が十分でなく、間違った選択肢に印をつけてしまうこともあるようだ(そもそも「死亡診断書」と「死体検案書」と2種類あるらしい。他国では1種類らしいのだが)。

  「検死」は医師が死体を診察することで「検視」は検察官やその代理人、警察官が遺体を見ることだという(日本の検視は杜撰でもあるという)。このへんは海外の犯罪小説でも使い分けて訳されていたりもするが、正直気にしたことはなかった。しかも検視には「行政検視」と「司法検視」があり、それぞれ規則や法律があって行われることらしい。

 またいざ解剖となった際もややこしい。法医解剖「司法解剖」「行政解剖」「新法解剖」の3つがあり、さらに「行政解剖」も2種類あり、その「行政解剖」は「死体解剖保存法」という法律に、「司法解剖」は「刑事訴訟法」、「新法解剖」は「死因・身元調査法」と異なっているから法医解剖がいくつもあるという。

 それなら日本も他国のように、というところだが、そこで壁となるのはシステムのなさだ。日本には法医学庁という機関がなければ、死因究明法という法律もない。ダイアナ元妃の死因究明にあたった、「コロナー制度」なるものもない。アメリカには法昆虫学者とか法中毒学者などもいるという(この系統の法医学には、法病理、法歯科、法中毒学、法遺伝学の4つあるという)。また日本の法医学者の少なさもあげられており、そのクオリティ・コントロールも難しいようだ。日本の法医学者は収入も少な目で3Kとされる職場なのに対して、それへの補償が全くないとか。法医学者となると大学のシステムや雇用と関わってくるため、ポストも限られ、雇い止めが出来るように非正規雇用を多くせざるを得ないとか。

 また解剖の費用については一体につき20数万円の費用がかかるそうだが、大学への費用は払われず、医師個人に謝礼として数万円だけ支払われるらしい。それを医師個人で貰う人もいれば、大学に寄付する人もいて曖昧のようだ。


 科捜研に依頼でいい、というのは問題があるという(警察の組織というところに中立性が見られないなど)。他にもあれこれ現状には問題が多いようだ。
★★★+
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