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面白い本が読みたくて

『司法取引』上下 ジョン・グリシャム



             さっぱり分からぬまま騙される

『司法取引』上下 ジョン・グリシャム 白石朗訳 新潮文庫 2015年 上670円 347頁下630円 323頁

 弁護士のマルコム・バニスターは43歳で服役中の身。10年の刑期の半分まできたところだ。彼の罪はRICO法の違反者として裁かれ有罪となったが、それは冤罪だった。バリーという怪しげな人物のために不動産取引を行い、逮捕された8人のうちの1人となったのだ。有罪を認めず無罪を主張したところから、10年の刑期をくらった。

 彼の父は海兵隊あがりで、町で最初の警官となった黒人だった。彼自身も就職先は黒人弁護士の事務所に雇われていた。そこで「よろず屋」的な仕事をこなしており、妻子がいたが、事件後離婚。妻は再婚し、息子も一緒に暮らしている。

 既に法曹の資格は剥奪されたマルコムだが、刑務所内でも囚人の相談に乗ったりしていた。そんな折、レイモンド・フォーセットという判事がヴァージニアにある別荘で、彼の秘書で愛人であるネイオミ・クラリーという女性とともに頭を撃たれて亡くなった。争った形跡はなく、そばの金庫が開けられていた。

 判事の判決で不利益を被った人間から調査が開始されるものの、解決は難航していた。そんな中、マルコムは、犯人を知っており、その動機も分かると申し出て、司法取引をすることにした。刑務所を出て、身辺警護もしてもらい、証人保護プログラムのもとで暮らすという条件つきだ。

 そしてマルコムはある麻薬密売人の名を出して、その黒人男性も自白することで事件が決着したかに見えた。判事と裏取引しようとしていたことが発端だったという。ところがこの犯人とされた男は、自分はやっていない、証拠はねつ造され、自白も強要されたと言いだし、しかも自分を犯人と言いだしたマルコムへの復讐を誓った。公判の日程も迫る中、マルコムは順調に暮らしていたのだが、マルコムはそこを離れ、顔も変え、体重も減らし、行方をくらます。その後、名前も変えるのだが・・・。果たしてマルコムは逃げおおせるのか。マルコムが犯人とした男は、本当に関係はないのか。真犯人は誰なのか。マルコムの言っていた壮大な計画が始まった。

 当初、本筋にいくつか話が入ってくるので読みづらく、マルコムが何を考えている(計画している)のか分からず、しかもゴチャゴチャ入る話が伏線を張っていたらしい、となっていき、カラクリが明かされると唖然とした。言われてみると気がつく人もいたのかもとは思うし、シンプルだが、それをやり通すあれやこれやがよく分からない。やはり法曹界の人たちは頭が切れるようだ。

 また、法の抜け穴をつく作品(グリシャムでは『法律事務所』もそんな感じだった)でもあり、RICO法もそのようだが、ウラン鉱山がらみの判決でも(実際のものか分からないが)結局、業者との癒着で利益重視、環境破壊につながる危険性を示唆している。そのあたりもファンを惹きつける要因なのかもしれない。
★★★+
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