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ウイスキーの刻 ~Whiskyのとき~

耳を澄ませば聴こえるウイスキーのメロディ。
『ウイスキーの刻』は、その真実を探し求めていきたいと思います。

『スナックのお作法』①

2019-12-26 19:19:19 | 日記
 こんばんは。Aokiです。

 「スナック」というのは、「日本の文化」と申し上げてもよいでしょう。

 昭和の時代では、居酒屋からスナック、
 そして次のスナックといった流れが自然でした。

 若者は先輩や上司に連れられ、やがて、
 自分が贔屓にするスナックを持つ・・・

 スナックでは、知人も同じ店を活用しており、
 間接的に近況を知ることもあります。

 私自身は、若い頃からBARが居場所でしたので、
 馴染みのスナックというものを持つことなく終わりました。

 それでも、先輩諸氏に連れられ、
 随分とスナックで修業をさせていただきました。


 お酒の変遷を見ると、時代の移り変わりが感じられたものです。

 棚にボトルキープされた「ダルマ(サントリーオールド)」が
 並ぶ姿を、今も懐かしく思います。

 やがて、「シングルモルト山崎」や「竹鶴ピュアモルト」が席巻し、
 「鏡月(焼酎)」が立ち並ぶようになり・・・


 カラオケなるものの登場が、「スナック」の在り方に一石を投じ・・・


 ウイスキーの観点でも、「スナック」は、『水割り』という
 日本独自のカクテルを生み出しています。

 そんな「スナック」に、久しぶりに伺う機会がございました。

 本日は、混沌とした大人の社交場「スナック」にまつわるお話と、
 お作法について、少々暑苦しさも含みつつ、考えてみたいと思います。


☆☆☆


【其の一】


 若くして鬼籍に入られた先輩は、馴染みのスナックで、
 酔うといつも私にこう仰いました。

 「お前には、色が無い。お前らしさが伝わらないのだ。」

 私のことを案じ、周囲に“Aoki”なる者の人物像を
 わかりやすく表現することの大切さを、説いてくださったのです。

 そんな思いやりに応えることなく、当時の私はこうお答えしておりました。

 「“透明”という色があっても、よろしいのでは?」

 その方は、「何を言っているのか、さっぱりわからん・・・」
 と言って眠り込むのが、お決まりでした。

 その方をタクシーに押し込むのが、私のいつもの役割でした。

 同様なお仕事をさせていただく諸先輩が、数多いらっしゃいました。

 近年、あまり見かけなくなった光景ですが、
 当時は、飲めば酔いつぶれるのが普通の光景でした。


【其の二】


 その方は、紳士でした。

 若い私たちに分厚いステーキをご馳走してくださり、
 説教じみたお話など一切せず、
 ただ私たちの話に耳を傾けてくださいました。

 「じゃあ、私はこれで。
  君たちは、xxでゆっくりと飲んでいってくれ。」

 その方の馴染みの「スナック」へ、私たちだけで行くのが決まりでした。

 その方は体を壊されていましたので、
 夜更かしも飲酒も出来なかったのです。

 ただ、お会計だけをしてくださる粋な方でした。

 やや疎遠になってからも、年に一度くらいはお会いし、
 歓談させていただいておりました。


 ある年、そろそろお声がけしようと後輩と話していたのですが、
 仕事が立て込んでいたこともあり、ひと月ほどが経った頃でした。

 突然の訃報が入りました。


 明日は無いものと思った方がよいです。

 今日出来ることは、今日行った方がよいです。


 人とお会いするときは、常に「今日が最後かもしれない」
 という思いでおります。

 言いそびれたことはないか?

 こうしたいと思いながらも、今度にしようと先送りしたことはないか?


 今、刻を同じくする奇跡を、大切にしたいものです。


☆☆☆


 先ほど、「カラオケなるものの登場が「スナック」の在り方に
 一石を投じ・・・」と申し上げましたが、あの遊具が、
 「大人の社交場」を「幼児の砂場」に変える様を随分と見てまいりました。


 他にお客さまがいらっしゃらないとき、
 内輪のカラオケで盛り上がっている光景は、
 特に問題はないと思います。

 しかし、他のお客さまたちが来店されたとき、
 いつも、後輩にはこう助言しておりました。

 「マイクを離して歌いなさい。」

 残念ながら、この意味を理解できた後輩は皆無でした。

 皆さまは、お分かりですか?


 もうひとつ。

 「お客さまや年長者が歌っているときは、聴きなさい。」

 これも、理解できた者はいませんでした。


 そして、もうひとつ。

 「あちらの皆さんに、リモコン(カラオケ予約用)を渡しておいで。」

 これは、素直に実行していました。

 渡されたお客さまたちは、後輩に礼を言い、彼はドヤ顔で戻ってきます。


★★★


 先日、随分と久しぶりに、先輩の馴染みの「スナック」に
 お供をする機会がございました。

 先客は、同じ会社か団体のご一行でした。

 すでに、大カラオケ大会で盛り上がっています。

 大騒ぎというよりも、各人が歌に自信があるらしく、
 のど自慢大会の様相を呈していました。

 ただ、声量自慢のコーナーは終了しましたので、
 「マイクを離して歌う」と粋だなと思いました。

 また、最年長の方が歌っていらっしゃるときに、
 全員が後ろ向きで話に盛り上がり、
 その方ひとりがモニター画面を見ながら歌っていらっしゃる姿は、
 何とも侘しい感じがいたしました。

 よく見る光景でしたが、歌い終わった途端に、
 儀礼的な拍手でお茶を濁す様は、「やれやれ」といった感じです。


 無粋を承知で、ママの承諾をいただき、ご挨拶をさせていただきました。

 当方名乗った上で、年長の方のお名前を周囲にお尋ねしましたが、
 どなたも教えてはいただけませんでした。

 また、誰一人、ご自身のお名前も教えてはいただけませんでした。

 「オンオフを切り替えているものですから」とのことです。

 なるほど。失礼いたしました。

 皆さまの左胸に同じバッジが付けられておりましたが、
 オフの際は外された方がよいかもしれませんね。

 また、お若い方に、「年長者が・・・」と、そっと耳打ちをいたしましたが、
 やはりピンとこないようでした。


 その方々の名誉のために申し上げますが、決して大騒ぎで迷惑とか、
 他のお客さまにからんで迷惑をかけているということではありません。

 むしろ、私が、呼ばれもしないのにご挨拶に伺っていますので、
 ご迷惑だったかもしれません。


 ただ、大人の社交場だけに、粋と無粋が錯綜いたします。

 無粋な方々ではなかっただけに、勿体ない感じがいたしました。


 酒場は、酔いも手伝ってか、無法地帯になることもあります。

 ただ、酒場だからこそ、楽しみ方も粋であってほしいと思います。


 『スナックのお作法』・・・あるとすれば・・・

 これまで居合わせた方々の中で、これをわきまえていた方は、
 百人に一人くらいだったでしょうか。

 それだけに、そうした方々は、静かに輝いていたものです。


                        Z.Aoki
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