覚書

  

夢野久作 「ドグラ・マグラ」

2004-08-03 | 小説
この作品には謎が多い。従って、この作品の分析や背景を詳しく知りたいのならば以下のサイトを参照することをお勧めする。
ドグラ・マグラによっていかんね!


この作品の構造は非常に難しい。実は、この「ドグラ・マグラ」とは作中作なのだ。
筆者は呉一郎という美青年で、気がついたら自分のことも記憶も全く脳髄から消え去っていた。
彼が目覚めたのは九州帝国大学医学部精神病科第一病棟7号室。
戸惑う彼の前に若林と言う法医学者が現れて、一郎が巻き込まれた奇妙で恐ろしい事件を紐解いて欲しいと言う。
そもそもその事件は正木博士と言う天才精神科医によって予知されていたというのだが…。

粗筋を書くのにも非常な労力がかかっていることを、あえて書いておこう。
久作自身が「五回読んだら五回共に読後の気持が変はることを請負ひます」と言ったように、実に掴み所の無い作品なのである。
また彼は、これを書くために十年の歳月を費やし、「私はこれを書くために存在していた」とも言っている。

この作品を書いているのは呉一郎である、と先に述べたが、その根拠は久作自身が削ってしまったはしがきの中にそうあるから、としか言い様が無い。
実際、私はこの作品を書いているのは一郎ではなく、正木か若林、或いは三者なのではないかとも思っている。
しかし実際のこの作品の作者は夢野久作なのであり、作中での筆者が誰であると考える事は意味が無いのかもしれない。


この作品は数度、それも時間をおいて読む必要があると思う。
但しドグラ・マグラにはまらないようにしなければならない。この作品は読者を喰う。
精神医学が発展した現代でも、彼の述べる論理は非常に興味深い。