最近、全国の自治体では、幼稚園教諭と保育士の採用の際には、こども園の運用も考えて
「幼稚園教諭免許」と「保育士」それぞれの免許資格を有していることが条件になっているところも多いようです。
さて、もしあなたが両方の免許、資格を有していて、「幼稚園教諭」か「保育士」かを迷っているのであれば・・・
もちろん、「幼稚園教諭」がお勧めです。
「え? なんで?」 「好みの問題じゃ・・・」と思うかもしれませんが 幼稚園と保育園の実際をを比べてみれば簡単に分かることです。
ここから、両者の現場を比較してみたいと思います。
基本的なこととして・・・
「幼稚園」は学校と同じで文部科学省の管轄です。
「保育園」は福祉施設なので厚生労働省の管轄となります。
「幼稚園」は学習指導要領に従って保育が行われます。
「保育園」は保育所保育指針に従って保育が行われます。
じゃあ、まるっきし違う施設なのか? というとそうではないのです。
両者は整合性をもって子どもの教育がなされるように共通の内容を含んでいます。
幼稚園と同様に保育園でも教育的な活動が行われており、大昔のように保育園が単純に子守をする場所というわけではないのです。
それじゃ どっちに就職しても 同じ志で同じように仕事ができるね。
できません
仮に同じ能力の幼稚園と保育園の先生がいたとしても、同じように仕事が出来ないのが現実です。
「幼稚園」と「保育園」が、子ども達に同一水準の教育を提供するためには、同じだけの「時間」が必要となります。
それは計画を練る「時間」であり、教材を準備する「時間」であるわけです。
計画を立案する際の書類、書式は「幼稚園」「保育園」また公私立によっても大きく差がありますが、こういった書類を作成ないで活動を行っている園はありません。
というか、そうするよう文科省、厚労省から同じように指導されているからです。
この「時間」は「幼稚園」と「保育園」でどうちがうの?
大抵は、幼稚園教諭、保育士ともに、基本8時間ほどの勤務時間です。しかし、
「幼稚園」の保育時間は数時間ほど。子どもが帰った後で「時間」を確保できる(預かり保育がある園も非常勤で保育士を使っていることが多いようです)。
「保育園」の保育時間は12時間ほど。勤務時間めいっぱい保育に入っており「時間」が確保できない
(都道府県によっても違いますが就労の保障が目的であるため長時間が基本です)。
この「時間」は 「幼稚園」>「保育園」となります。
頑張っている保育士さんには本当に申し訳ないのですが 教育の質も必然的に 「幼稚園」>「保育園」 となってしまうのです。
もちろん手を抜いている幼稚園教諭と、サービス残業と休日返上で頑張っている保育士とではこれが逆転することもあると思いますが・・・これが現実なのです。
就職に際して保育園の強みは?
保育園には0歳児から2歳児までの子ども達がいます。
それらは複数担任の1クラスになっていることが多く
新人の保育士は先輩から保育技術や保護者対応のノウハウを学ぶことができます。
しかし
保育園は体育会系若しくは、どこかの歌劇団のような上下関係の非常に厳しい集団でもあります。複数担任クラスに所属するということは、その中に身を置くことです。
先輩に気に入られるのが得意という人にはうってつけですが、以心伝心が基本なので、あなたに先輩の顔色や声色から感情の変化や
次にして欲しいことを読み取る力がなければいじめにあって早期退職ということにもなりかねません。
まぁ、なんの職業でもそうですが向き不向きがあります。
「保育士やってたら子育てのときに役に立つよ」というのはよく耳にしますが、実際のところは、保育=子育てではありません。
保育士をしていても子育てに不安になるし、主婦として子育てをしていたからといって保育が上手なわけではありません。
子育てに役立つのは知識の部分です。ただ、保護者の苦労を共感する上では子育ては有利に働きそうですね。
「保育園」
先輩の傍についていろいろ学びやすい。でも、下積み生活は長く自分の思ったことをほぼできないままに歳月が過ぎやすい。
後輩が出来たときに悪い先輩にされたことをしてしまいがち。
「幼稚園」
新卒で一人担任をもたされてビビッてしまう。失敗を一人で受け止めなければいけないが、成功も自分に直接返ってくるので、
努力すればするほどにモチベーションも上がっていく。
結局どっちがスキルアップに有利なの?
幼稚園でしょう。
保育園でのスキルアップとしての人的環境はかなり出会いの運に左右されますが、幼稚園は明らかに勤務時間内で受けることの出来る研修の機会が保障されています。
保育園では年中子どものいない時間がないため研修を受けづらく、日々の保育をフィードバックする時間もないですが、
幼稚園は夏休みなどに自己研鑽する時間も確保でき、なおかつ日々の活動を丁寧に振り返る時間があります。
同じ新卒で採用された人も わずか数年ほどで大きく差をつけられてしまうことでしょう。
それなら地方自治体の公務員試験は「幼稚園」を受ける人が多くなるんじゃ?
冒頭にも書きましたが、「幼稚園教諭免許」「保育士資格」いずれも取得していないと受験資格がない自治体も増えています。
そうなれば、人気があって倍率の高かった試験に優秀な人材が固まる可能性があります。
こども園への移行が理由にされていますが「幼稚園教諭」「保育士」の採用枠を一つにまとめることでそういったバラつきを回避している自治体もあります。
採用された後、職員は振り分けられるのですが、私が聞いた限りでは若い新規採用職員にとって「保育園」はハズレ枠のようです・・・。
どっちが有給休暇を取りやすいの?
幼稚園教諭です
複数担任のある保育園では、幼稚園と違っていつでも好きなときに有給が取りやすいように見えるかもしれません。
しかし平均取得数では、幼稚園の方が遥かに上回ります。なぜなのか・・・?
幼稚園は、夏休みや冬休みなど子どもが居ない時期にまとまって休みをとりやすいのです。
子ども達のいるシーズンであっても、担任が病気で休んだとしても主任などクラスをもたない者がそこを埋めることもできるわけです。
保育園は、夏休みや冬休みがなく年中子どもが登園しているため長期休暇は取ることが難しいのです。
開園時間が職員の勤務時間を上回る園がほとんどなので、時差出勤で園全体の運営をギリギリつないでいる場合が多い。
そのため病気であってもシフトに穴を空けられず休みにくいのです。
保育園では、産休・育休をのぞけば、忌引きや新婚旅行でもない限り一生まとまった休みはとれないのです
幼稚園は夏休みを励みに頑張れることが最大のメリットです
お給料はどっちが多いの?
幼稚園教諭の方が多いです。
公私立併せての平均を見れば遥かに幼稚園が多いです。私立はいずれも他業種より少ないのですが、
公立(公務員の場合)では、一般的に保育士は、自治体職員の給料表を使用し、幼稚園教諭は教職員の給料表を使用する傾向があります。
自治体によっては、学校職員同様に調整手当てもついている場合があり保育士の給与を上回ります。
しかも、幼稚園は小中学校とは違い定時には施設を施錠し終業する傾向もあるため、
部活で遅くまで残るような小中の教員とは違ってその手当てはとってもお得感があります。
子どもはどちらが保育しやすい?
それは子ども一人一人が違うように一概には言えません・・・などと言いたいところですが 実はこれがかなり違うのです。
やりやすいのは、どちらか・・それはもちろん
幼稚園です。
なぜなのか。子どもは乳児の頃から外の顔と内の顔を使い分けます。
幼稚園入園時期ともなるとそれを上手に切り替えて園生活を送っています。
幼稚園では、お帰りの時間までお利口さんの顔で頑張っています。
ところが、保育園となると子どもは半日近くを園内で生活します。ですから、我慢なんてしていたらストレスで身がもちません。
何とかここで自分の思いを通しながら生き抜かなければ心が破綻してしまうので、
園でも家のような超ワガママがでたり甘えたり友達に攻撃的になったり、幼稚園にはない大変さが山積しています。
思い通りの集団運営は保育園の方が実は難しいという事情があります。
台風や地震などの災害時は?
幼稚園は休園しますが、保育園は施設が倒壊しない限り開園しています。
台風などで警報が発令された場合、幼稚園は学校と同様に子ども達の安全を考え休園となります。
保育園は特に安全対策が施されているわけでもないですが就労の保障ですので休園はできません。
保護者の安全認知や良識だけが頼りになります。協力が得られない場合は通常の保育となるので
職員はどのような状況でも出勤の努力をしなければなりません。職員の子どもが学童保育から帰らされても
職員自身が帰れるかどうかは分かりません。
もし、災害によって園児が負傷したり亡くなった場合は、職員及び施設長の過失となり責任が生じます。
幼稚園教諭だとこの点でも不安は少ないですね。
感染症が大流行する時期は?
インフルエンザやノロなど、シーズンによって大流行する時期があります。
幼稚園にも保育園にも同様にこれらの脅威はやってきます。もしクラスでノロがはやり始めたら?
幼稚園は学級閉鎖でひとまず拡散を防げます。 保育園は、職員を含め最後の一人が感染するまで終息できません。
実は感染症による「出席停止」というものは学校保健法で定められており幼稚園には法律が適応しています。
ところが、保育園は学校保健法の管轄外であり、実際はこの法律の基準を参考にして運用しているだけなのです。
法的な効力はありませんし、ここでも保護者の判断次第というところがあります。
徹底的な衛生管理を行ったとしても「ひと吐き10人」の感染力をもつノロを防ぐことはほぼ不可能です。
嘔吐物処理を何日も繰り返せば健康体の職員もダウンしてしまいます。学級閉鎖も学年閉鎖もありません。
それが保育園なので、病気への抵抗力に自信がない人も幼稚園がお勧めです。
行事の準備とかはどっちが楽?
行事はどの施設に撮っても大変ですが準備に関しては
幼稚園でしょう
幼稚園では運動会での、旗張りや荷物の搬入や搬出もほとんどを保護者が行います。職員は細かく支持を行っておく必要はあります。
幼稚園教諭は子どもを動かすことに専念することができるというメリットがあります。
片付けも同様です。
保育園ではすべてが保育士の準備となります。前日までに遅く残ったり、子ども達の昼寝中に準備を行います。
保護者はお客様として当日見に来るだけでOKです。当日の他のクラスの準備もしながら子ども達を動かす必要があります。
あと、除草作業やお祭りの準備等も同様の傾向があります。
保育園では子どもが常にいるため、準備が間に合わないときもあります。
そんなときには職員が各自持ち帰って休みに内職をすることでカバーしている園もあるようです。
サービス残業や持ち帰り仕事はどちらが多いの?
どちらも持ち帰り仕事やサービス当たり前のように残業は存在します。
職員会議が、子どもが帰ってからの夜間に行われることもあります。
しかし、上でも説明したように保育園側は開園時間が長く、常に子どもがいるため
圧倒的に保育園の方がサービス残業、持ち帰りが増えます。
特に私立にはブラック企業ならぬブラック保育園がかなり存在します(このことは別の記事で書きます)
公立よりは私立、そして幼稚園よりは保育園に多い傾向があります。
この時代にまだ寿退職や出産退職を打診されるということもあります。
ただ、幼稚園は先に記述したようにまとまった休日を取れるということもあり励みに頑張れるということはあるかもしれません。
いずれ幼保を一緒にするならどっちに就職しても同じじゃないの?
この先も絶対に幼保は一本化しません(できません)
なぜなのか。はじめに書いた様に
幼稚園教諭は文部科学省の管轄で 保育園は厚生労働省の管轄です。
仕事内容は共通化されてきているものの、幼稚園教諭はあくまで学校教員と同様に教職員なのです。
保育士はあくまで福祉従事者であり、サービスを提供する労働者なのです。
国によって幼保を一本化されることから幼稚園教諭を守っているもの、まずひとつは
教職員の労働組合です
昔ほど強くはありませんが、幼稚園は小中学校、高等学校とがっちり組んで守られています。
市の職員を採用している公立園が多いにも関わらず、給料表が教職員と合わせられているケースが多いのもこのためです。
また、部活や時間外が学校の職員のようになくても調整手当てがついている市町村がるのもこのためです。
幼稚園を守っているもうひとつのものは、
文科省に呼ばれる有識者がつよい
有識者とは、簡単に言うとその道に詳しい大学の先生などのことです。
国は何か大きいことをする度に有識者より議論を行い意見をまとめたうえで検討します。
なので、新卒の人が退職するまでにといえば微妙ですが、
幼稚園がいきなり保育園になってしまうことはありえない話なので大丈夫です。
うちの自治体では、こども園になってるんだけど・・
若い労働世代が流出し、いわゆる過疎がすすむエリアでは幼稚園の定数が割れている自治体があります。
そういった地域は管理上や人件費の問題を解消するためにこども園へ移行するケースもあります。
道路などのインフラの問題や立地が悪く過疎化していく地域は基本的に自治体の財政も悪化していくため
正直、入庁されるのはお勧めできません。自治体が倒産することはありませんが、財政が破綻すると
はっきり言ってより良い労働条件はのぞめません。
あなたにもし実力があって公立を希望するなら、所得の多い労働世代人口をしっかりと確保している自治体をお勧めします。
労働人口が多い市は住民税などの税収も多く福祉や教育に回せる財源にゆとりがあります。
地方で労働世代が流出してしまうことにはやむ得ない事情もありますが、小手先の票稼ぎで高齢者福祉ばかりに
税を投入している自治体はやがて困窮し過疎化がすすみます。
若者にとっての魅力ある街づくりをしている自治体や労働世代を支える子育て支援が充実している自治体には
税収という活力が自然に沸いてきます。
晴れて公立の幼稚園に就職したのに・・・こども園!?ってことにならないよう見極めてください
幼児教育・保育専門の大学生はみんなその道に就職してるの?
ぶっちゃけしてません
教育実習や保育実習で疲弊しギスギスした現場の事実を知った学生は、現場を目指しません。
幼児用教材の大手メーカーや幼児向けのテーマパーク、教室など関連したジャンルに就職している人もいます。
全く方向性が違う企業を目指す人もいるでしょう。
しかし、これはある意味正解です。
それほどまでに幼児を取り巻く現場は凄惨なのです。これが事実です。
ここで気をつけなければいけないこと・・・
それは、私立に多いのですが、インターンシップもどきです。詐欺というべきか・・・。
実習の際、ものすごく好待遇を受けたうえ「うちに就職しない?」「試験も顔パスしてあげるから」と言われます。
餌に食いついて就職してみるととんでもない労働環境の「ブラック園」だったという罠。
そういう園は正規採用されても辞める人が多く、常に新しい人材で穴をカバーしているのです。
職員の顔が数年でほぼ入れ替わるような私立園は要注意でしょう。
まずは、就職した先輩の意見を聞く機会をもてるような良識ある大学に入学しておくべきですね。
結論として何が一番良いの?
あなたがもし、「幼稚園教諭免許」と「保育士」両方の免許・資格をもっているとして
上に書いたようなメリットを得られる順に並べてみましたので参考にしてみてください。
上に行くほど競争率は激しくなります。下に行くほど仕事がきつくなります。
① 財政が豊かな自治体(市町村)の 公立幼稚園教諭
② 財政の苦しい自治体(市町村)の 公立幼稚園教諭
③ 財政が豊かな自治体(市町村)の 公立幼稚園教諭(幼稚園型こども園)
④ 財政の苦しい自治体(市町村)の 公立幼稚園教諭(幼稚園型こども園)
⑤ 財政が豊かな自治体(市町村)の 公立 保育士
⑥ 財政が豊かな自治体(市町村)の 公立 保育士 (保育園型こども園)
⑦ 財政の苦しい自治体(市町村)の 公立 保育士
⑧ 財政の苦しい自治体(市町村)の 公立 保育士 (保育園型こども園)
⑨ 地域で息の長い幼稚園 の 私立幼稚園教諭
⑩ 信頼ある学校法人 の 私立幼稚園教諭
⑪ 新設された幼稚園 の 私立幼稚園教諭
⑫ 私立の幼稚園型こども園 の 私立幼稚園教諭(幼稚園型こども園)
⑬ 地域で息の長い保育園 の 私立 保育士
⑭ 信頼ある福祉法人 の 私立 保育士
⑮ 新設された保育園 の 私立 保育士
⑯ 私立の幼稚園型こども園 の 私立 保育士 (保育園型こども園)
⑰ 託児所(認可)夜勤有り の 保育士
⑱ 託児所(無認可)夜勤有り の 保育士
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