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没【DF】没1話

ダークファンタジーの没書き出し。
没理由:しっくりこない
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_女の涙に弱かった。姉の涙に、特に弱い。紅蜘蛛(ササガニ)も女の身であった。だが姉よりも背丈があった。姉よりも声が低く、姉よりも気が強かった。姉だけではない。周りの女たちよりそうであった。
『誰よりも優しくおありなさい、―……』
_ササガニは薄い目蓋を持ち上げた。懐かしい家族の夢をみた。ふと窓を見遣る。市街地が見下ろせた。呆けている場合ではなかった。今日は大きな拾い物をした。ベッドに少女が寝ている。褐色の肌に銀色の髪をした華奢な少女で、歳の頃は10代の後半だろう。半裸に近い服装をして、近くの駐車場で泣いていた。一目でこの娘が何をされたのか、ササガニは理解した。厭な夢をみたのはそのためだ。
_溜息を吐いた。自身の人の好さが急に嫌になってしまった。然るべきところに通報し、保護してもらうこともできたはずなのだ。
_―涙、か……
_涙であろう。


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2024.5.10

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