詩や音楽や小説など

自分が大切だと思ったこと(仮)

孤独なシュプール

2015-03-13 13:11:55 | 
孤独なシュプール

森の深淵へと遠ざかっていく
一筋の孤独なシュプール、
丘や谷を越えて曲がっていく
一筋の孤独なシュプール、
湿地の上には粉雪が舞い
そして低くまばらに松が立っている――
遠く遠くへと静寂の中に遠ざかっていく
私の想い。

森の寂寥の中へと消えていく
一筋の凍ったシュプール、
人の生き様は
誰も知らない道の上で戸惑い――
人の心に生じる疑問の答えは
遥か彼方に残されたまま――
凍った雪の上の曲がったシュプールようだった
私の曲折した生涯。

突然の急斜面のところで止まる
一筋の孤独なシュプール
そこには風に倒された松が
崖の縁の上から外へと傾いている――
星は何と冷たく輝いていることか、
森は何と鬱蒼と佇んでいることか、
雪に覆われたシュプールに降ってくる
雪片の何と軽いことか!


ベルテル・グリペンベルイ タヴァストランド(ハメ)の夕方(1918)より


Ett ensamt skidspår

Ett ensamt skidspår som söker
sig bort i skogarnas djup,
ett ensamt skidspår som kröker
sig fram öfver åsar och stup,
öfver myrar där yrsnön flyger
och martall står gles och kort -
det är min tanke som smyger
allt längre och längre bort.

Ett fruset skidspår som svinner
i skogarnas ensamhet,
ett mänskolif som förrinner
på vägar som ingen vet -
i fjärran förblefvo svaren
på frågor som hjärtat bar -
ett slingrande spår på skaren
min irrande vandring var.

Ett ensamt skidspår som slutar
vid plötsligt svikande brant
där vindsliten fura lutar
sig ut öfver klippans kant -
hvad stjärnorna blinka kalla,
hur skymmande skogen står,
hur lätta flingorna falla
på öfversnöade spår!



今月初め、日光にあるペンション「トロールの森」に泊まって奥日光でのクロスカントリースキーを楽しんだのですが、その前日の夜にキャンドルを灯しお酒を飲みながらフィンランド音楽を楽しむ「フィンランドの夜」という企画がありました。

森と湿原と遠くに見える山々しかない広大で清冽な雪景色のなかを、冬を耐える鹿や鳥や春を待つ木々の芽など見ながらスキーで奥日光の雪原を走るのは、他に代えられない心地良さがあります。森の中で新雪の上を自在に滑り、同時に人のいない森の静寂を体感するのも奥日光でのクロスカントリースキーならではの大きな魅力の一つです。丘を滑り降り、そして振り返ると、森の木々と雪、そして自分のスキーの跡だけが見えます。

そんな景色を題材にした「孤独なシュプール」という詩があります。スウェーデン系フィンランド人の詩人ベルテル・グリペンベルイが1918年に出版した詩集に収められていて、フィンランド系の詩人ウルヨ・ユルハもそのフィンランド語訳を作っていたりします。
またこの詩を用いて作曲家ジャン・シベリウスはメロドラマ「孤独なシュプール」を作曲しています。メロドラマとは詩の朗読を伴う音楽のことです。1925年にピアノ伴奏版が作曲され、グリペンベルイが亡くなった翌年の1948年に弦楽合奏とハープのための版が作られました。シベリウス最晩年の希少な仕事です。


コメントを投稿