建築家のヤカン

個人的覚え書き。UPは順不同!(汗)(ワタシは建築家でないです。。。)

『ツーリスト』~走れ、

2011-03-09 | cinema f.s-u
パジャママン!

こんなんアリか?
夢オチならぬ、「整形顔オチ」。
イージーというならば、余りもイージーな。
エリーズさんの正体が「潜入捜査官」というのも、映画としては相当にイージーな成り行きである。

にもかかわらず、こんなんでもまあいいか、と、見終わった後結局許せてしまうのは、ひたすら映画の時間の間中現れる「ヴェニス」という場所の持つ特別の感覚のせいだろう。
水に沈みゆく都市。独特の赤いレンガ色した屋根の色。
「ヴェニス」という場所の力がなかったら、この映画は成り立たないだろう。
例えばアクションひとつとっても、ストーリーの展開の面でも、登場するキャラクターの映画としても、その魅力は『ナイト&デイ』などには大きく及ばない。
とにかく「場所」の力。それに尽きるだろうと。

何と言っても一番見応えあるアクション・シーンは、ダサい縞柄パジャマ着たフランク氏がヴェニスの美しく統一された赤色の瓦屋根の上を走り回って逃走するところだろう。文字通り懸命になって屋根を伝い行くフランク氏が、ダボダボの、全く冴えないパジャマ姿だというのが、周囲の洗練された光景との対比で非常に良い。
脇キャラ的にはスコットランド・ヤードの(?)警部、アチソン氏がなかなか良い味。

さて、結果的にはどっちがどっちをひっかけた、と言えるのか?
列車内でそれと知って声を掛けたのがエリーズさんだったのか?
それともそしらぬ顔で、「他人」として声を掛けられたのがフランク氏だったのか?
あるいは互いにどの辺りで相手をそれとして認識していたのか?
例えばホテルの部屋でのキスで、フランク氏=ピアース氏が認識されていたりしないか?
「このキスはピアースだわ」と。
エリーズさんが、映画中どこでフランク氏をピアース氏として認識しているか?
それを考えながら見るのが、『ツーリスト』を一番面白く見られる見方かもしれない。


(THE TOURIST/2010/FlorianHenckelVonDONNERSMARCK/USA)