中国天津市で発生した爆発事故は死者百人超の大惨事となった。住民は有毒物質の拡散におびえ、抗議行動を激化させている。中国当局は命を守り信頼を回復する情報開示の徹底に努めるべきだ。
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事故発生から一週間となるのを前に、李克強首相が現場に入り、空気、水、土壌などの汚染状況について、透明性をもって迅速に住民らに情報公開するよう命じた。李首相は「報告漏れやごまかしは許さない」とも厳命した。
事故翌日の十三日から天津市は断続的に記者会見を開いてきた。だがその実態は、被害者の救出や消火活動に全力を挙げていると強調するばかりで、周辺住民の不安を解消するものではなかった。
住民が最も知りたい事故原因や有毒物質の拡散状況などは明らかにされず、安全部門の責任者である副市長が会見に姿を見せたのは事故から六日目と後手に回った。
副市長の会見で、現場には毒性が強く吸引すれば命にもかかわる七百トンものシアン化ナトリウムが保管され、爆発現場の地表では最大で基準値の二十七倍に達していたことが明らかにされた。
安全対策を徹底して悲惨な事故を繰り返さないのは当然である。今回の事故対応では、命や健康への二次被害を防ぐための情報公開の透明性のなさが周辺住民の不安を募らせ、大規模な抗議行動を招いたといえる。
一方、中国当局はネットで「デマを拡散させた」として新聞社を処分するなど、当局にとって都合の悪い情報の統制にばかり力を入れてきた。これでは本末転倒と言わざるをえない。
事故原因はまだ不明だが、危険な化学物質の管理がずさんであったことは疑いない。消防隊の放水が大きな爆発を招いた可能性もあるという。市政府や爆発した倉庫を管理する企業が危険物の存在や対処方法をきちんと消防隊に伝えていなかったとすれば、多くの消防隊員の犠牲は人災ともいえる。
天津港は二〇一四年の貨物取扱量が世界四位の物流拠点である。中国は人民元の切り下げで景気テコ入れをしたばかりだが、港のマヒによる輸出減少は経済を減速させかねない。
現場付近にはトヨタ自動車をはじめ多くの日系企業も進出している。社員が負傷し製品の車が焼け焦げる被害が出た会社もある。
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安全管理と情報開示の徹底がなければ、進出企業の信頼は揺らぎ中国経済への打撃ともなろう。