なんじゃもんじゃの木

つたない文章ですが、お付き合いいただければ幸いです。

ネコの目(13)

2016-06-21 19:25:50 | 小説
見えない人達も怖がりな人は怖がりだし、結構面白いこともある。



ある日のこと。

TVで心霊番組をやっていた。

本当にあった話として、VTRを作ってある。

役者さんが演技してるから、実際に映るわけでも無いんだけど。

それを私の隣でこわごわ見に来た見えない人。

(あんたが本物だろうに。)

思わずツッコミを入れたくなった。

怖いなら見なきゃいいのにねぇ。

思わず嚇かしたくなるくらいだが、私にしか見えてないから止めておいた。

(いきなり声を上げたら変な人に なっちゃう。)

私に掴まるのも止めてくれないかなぁと呆れてしまう。




見えない人達には時間があり過ぎるからなぁ。

たまには付き合ってTVでも見ますか。






ネコの目(12)

2016-06-18 17:53:48 | 小説
 道からはぐれて、他の悪いものに取り込まれないように上にあがれるまで

幼い魂を保護したことがある。

 何らかの事故で傷だらけだったが、依代にしたぬいぐるみを宿にして徐々に

回復していった。

 こういう小さい子(3~4歳くらい)の魂を餌食にする悪い霊がいる。

 たまたま出会ったのも何かの縁だろう。

 放っておくわけにもいかないし、家に連れて帰った。




 初めはおどおどしていて、怖がって依代の中から出たがらなかったが、私が

いるときは出てきて遊ぶようになった。

 上にあがるのに耐えられるほどに回復するように、その時が来るのを待った。

 少しずつ少しずつ、ゆっくりと1年くらいかかって、その姿がはっきりするほどに

なり、魂の光が見えるようになった。

 (もう大丈夫だね。)

 お別れの時が来た。

 無事に光の道に入って行けるまで見送った。

 依代にしたぬいぐるみは、しばらく彼の記憶が残ったらしく、棚の上に置くと、

よく私の足元まで転げ落ちてきていた。

 

 

 

 

 



 

ネコの目(11)

2016-06-16 17:07:08 | 小説
 人が歩けば道ができる。

 通行量が多ければ、それだけ大きな道ができる。

 何本もの細い道が大きな道に繋がっていく。




 路地から大通りに出るように緩やかに合流する道は、ゆっくりと上に

向かっていき、光の方へ向かってゆく。

 随分とゆっくり流れる大河のような道もあれば、まるで首都高かという

激しい流れの道もある。

 激しい流れの道には、入りたくないなぁと思う。

 人は生きていた時のようにしか、死んで行けないのだと、つくづく思う。

 死んで終わりではないのだ。

 苦しんで死んだから、死んでからも苦しいのではない。

 肉体的な苦しみは、そこには無いように見える。

 あるのは精神的な苦しみ。

 心に穢れがある分だけ苦しいのだろう。

 表面的なものではなく、根本的なもの。

 「仁義礼智」の「仁」。

 他者への思いやりや、真心は死んでも魂から離れていかない。

 生きているときのオ-ラそのままで、肉体から離れていく魂は、存命中の

そのヒトトナリをあからさまに見せてくれる。

 誤魔化しようが無い分、ちゃんと生きなきゃダメだなと思わせられる。

 


 目立った功績があるとか無いとか、全く関係ない。

 魂には、社会的地位もお金も関係ない。

 死んでもまた生まれ変わるから、正しく生きて善い魂にしていかなきゃね。




ネコの目(10)

2016-06-15 12:49:34 | 小説
 見えない人達の通り道。

 細い道だったり、大通りだったり。

 普通はそこを通る人達は、同じ方向に向かってゆっくり進んでいる。

 細い道が上の方で大きな道に合流したりしている。

   

 ところが、たまにその道の途中に建物があったりする。

 平屋だとは限らない。

 マンションの中を通っていることもある。

 なるべくなら、そんな道の無いところに住む方がいいに決まっているが、

そうもいかないだろう。

 見えれば避けられるが、見えないのだから仕方がない。

 

 ある日、友人に頼まれてマンションの一室を訪ねた。

 そこの住人、C子さんは心霊現象に憧れて自分にも見えるようになる

と信じていた。

 そういう力が、何か奇跡のような特別な力だと思っている人だった。

 (危ない人だなぁ。)

 正直、そう思った。

 そういう人は、善からぬものを惹きつけやすい。

 あまりに見たいという思いが強かったのだろう。

 近くを通っていた道がずれて、C子さんの部屋を通っている。

 ポルターガイスト現象が起こるというが、私に言わせれば当たり前だった。

 (よくここに住んでいられるな。)

 見える人間がここにいたら、絶対住まないと思うような状態だった。

 もちろん物理的には何の変哲もない部屋だが、壁や障子、いたるところに

薄黒い大きな穴が開いている。

 (道をずらすしかないな。)

 まず、C子さんに霊を見たいなどと思わないこと、力が欲しいと思わないこと

を納得するまで話した。

 すでにC子さんに憑りつこうとしているものが、ウヨウヨしている部屋だった

ので、結界を張りながら話をしていた。

 憑りつこうとしていたのに私が邪魔だと攻撃的に近づく物には、初めから容赦

するつもりなどない。

 強制的に浄化させてもらう。

 向こうも分かっているから遠巻きに見ている。

 道があると、いつまでたってもキリがないので、マンション上空まで軌道を修正

した。

 すぐ近くに、もっと大きい流れの道があったので、その辺りまで戻してやれば、

いずれ1本の道になるだろう。

 ただ、こういうことをやるときは、また元に戻りかねないので、C子さんの部屋

を訪ねず、外から道の様子をしばらく見に通った。

 動かした道が戻らず安定するまで通ったが、そのことはC子さんは知らない。

 私の友人には、その後C子さんから、また私に来て欲しいと要望があったが、

私は彼女に会わなかった。

 C子さんの欲しがる力を持って生まれたことで、どれだけ大変か彼女は分かって

いない。

 自分が持たないものを欲するのは人間の性かもしれないが、必要以上に欲しがると

身を滅ぼしかねない。

 善いものばかりが集まるわけではないのだから。

ネコの目(9)

2016-06-11 10:20:37 | 小説
望む望まざるに関わらず見えると言うのは厄介だ。

 ただ、あまりひどい状態のスプラッター状態のものは、どうも自分で制御しているらしく

血だらけというのは見ずに済んでいる。

 私が制御しているのもあるが、私がそういう状態のものに拒絶反応をするから、あまり

ひどい状態で現れないようにしているのかもしれない。

見えてしまう人達の通り道があって、私の家の敷地内にも道があった。

毎日決まって青い外套を着たカップルがその道に入らず、家の玄関に向かって歩いて来るのを

「はーい。」と応対に出てしまい、またやってしまったと自己嫌悪していた。

道から外れると同じ場所をぐるぐる回ってしまうのかもしれない。

そのあたりは、よく分からないが現世から離れて行けないのは哀れだと思う。

気が遠くなるほどの長い時間、彷徨い続ける。

彷徨っている間は、生まれ変わることも他へ行くこともできない。

道に戻ることができたなら、少しは早く先に進めるだろうに。