なんじゃもんじゃの木

つたない文章ですが、お付き合いいただければ幸いです。

ネコの目(15)

2016-07-16 17:20:32 | 小説
 見えないけれど感じるというYちゃんの隣にはいつも、亡くなった彼女のおじいさんがいる。

 このおじいさんがお茶目な人で、彼女とは話せないものだから私に通訳を要求してくる。

 正直、面倒くさいなぁと思うこともしばしばなのだが、このおじいさんが憎めない性格で、

生前、かなりオシャレというか気に入っていたのであろう帽子をかぶっている。

 そしてとても甘党だったらしく、彼女に豆大福を買って欲しいとか伝えるように言われる。

 Yちゃんもそれは感じるらしく、買い物で豆大福に目が行ったりするそうだが、あえて

買わずに帰ってきたりするのだ。

 そのあとのおじいさんの「買ってくれない!」という訴えの被害は私に来る。

 「豆大福、食べたかったって言ってるよ。」

 「うん。なぜか見せられたけど買わなかった。」

 おーい。買ってあげてくれ。

 おじいさん、私は買わないからね。

 念のため。。。
 

ネコの目(14)

2016-07-01 12:54:19 | 小説
 見えるわけではないけれど、感じる人がいる。

 そういう人は、見える人の話を否定しない。

 私の友達の話をしようと思う。




 彼女は見えないと断言するが、私からすると本当に見えてないのか

疑問に思うほど、感じ方が正確なのだ。

 私が見えているものを正確に言い当てたりするから、見えているんじゃ

ないかと聞くが、見えていないという。

 彼女は、どうやら連れてきやすい、若しくは向こうが付いてきやすい人

らしく、時々、ヘンなものまで連れてくる。

 Yちゃんは社交的な性格もあって、生きていようが死んでいようが、

そこに差異がないのは、ある意味、賞賛に値する。。。かもしれない。




 だいたいYちゃんが、引き連れてくるときは旅行に行ってきたと、お土産

をくれたりするときなのだが、嬉しくないお土産も一緒なのだ。

 私に会いたかったと言うときは、決まって山盛りに余計なものが付いている。

 私に会うと、取り払えると知っているので、会うなり「取って。」と言う

のも日常茶飯事。

 彼女とのエピソードには事欠かないな。




 その中でもちょっと変わったものの話。

 Yちゃんが前日に大きな屋敷に行ったのは聞いていた。

 また連れて来なきゃいいなと思いつつ、彼女に会った。

 彼女が窓を背に座っていたのだが、窓一面に大木がいた。

 実際には木なんか無い場所なので、樹齢を重ねたご神木レベルの樹なのだろう。

 こういうものまで連れてくるのかと、呆れたが当の本人は見えてないので、

不思議そうな顔をしている。

 「今度は何?」

 私がYちゃんの後ろを見ているので、そう聞いてきた。

 「樹。」

 「樹?」

 「うん。樹。でかいよ。」

 「何?」

 「昨日、大きい樹のそば通ったでしょ。」

 「うん。」

 「その樹が来てるよ。」

 「は?なんで?」

 「私に来いってさ。」

 「なんで私について来るん?」

 「さあね。断った。帰ってもらったよ。」

 そこからは、Yちゃんの質問攻めにあったが、連れてきた本人(Yちゃん)曰く、

その樹に呼ばれたような気がしたのだと。

 見えなくてよかったね。

 話せたりしようものなら、帰れなかったかもね。