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タクシー運転手の独り言

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タクシー業界の現状は・・・

2008-08-30 22:22:01 | Weblog


 
働く現場が変化を続けている。不安定な非正規雇用が全国の労働者の三分の一に達し、正規雇用でも名ばかり管理職などが問題化。雇用形態による格差が拡大し、働きづらさが募ると同時に仕事への誇りも揺らいでいる。五月十一日から新潟市で開催されるG8労働相会合を機に、働く現場の問題点を探りたい。最初のシリーズは、自由化のひずみで、過当競争と労働環境悪化に苦悩するタクシー乗務員の実態に迫る。
「不条理な厳しい労働環境を改善していこう」
桜が散り始めた新潟市で十四・十五の両日、連合新潟とタクシー業界の労組で結成した「新潟地区タクシー労働者連絡会」が、組合未組織の会社で働くタクシー乗務員に連絡会加入を呼び掛けるチラシを配った。
労働環境が放置できないほど悪化していることを受けた初の試みだった。厚生労働省の調査によると、県内の乗務員は他産業よりも長時間働きながら平均年収が約二百五十万円にとどまる。


業界も行政も、問題の根っこが供給過剰にあるとする点で異論はない。しかし、利用者が減り続ける新潟交通圏では二00七年度、新たに二社の営業許可が下りた。総車両数は一年間で計五十二台も増えた。本来は需要と供給が連動するべき市場原理が働かない。どうしてなのか。
その背景には、タクシー業界の特殊事情がある。新規参入が比較的しやすい上、乗務員給与が歩合制のため車両を増やせば会社の総収入を確保できるからだ。
さらに年金支給を受ける高齢者が収入を補うため働くケースがある一方、リストラされるなどした中高年の求職者の受け皿になっている現実が浮かび上がる。
新潟市内の乗務員からつぶやきが漏れる。ある男性(四四)は「七年前に会社が倒産し、再就職で二十社ほど受けたが全部駄目で、この商売に入った」と語る。別の男性(五十)も「二十年勤めた会社を辞めて四十五歳で再就職を目指したが、正規雇用のほかの仕事は、求人がせいぜい三十五歳までだった」と打ち明ける。
ハローワーク新潟の飯田薫職業紹介部長は「タクシーの求人は常時あるが応募は少ない。経歴に縛られず、やる気があれば就職できる。競争率からいえばほかの職業とは少し事情が違う」と話す。
供給過剰が生じる仕組みに対し、公共経済学に詳しい神戸大の小塩隆士教授は「タクシー業界だけで解決できるものではなく、労働政策全体の問題として考える必要がある」と指摘する。
「三十年近くタクシーに乗って今年還暦を迎えるが、月給の手取りは十万円程度。会社は辞めるならどうぞってなもんだが、ほかに仕事がないからやめられずにいる。情けないね」。夫婦の年金支給が始まる二年後の退職を決めている新潟市のある男性乗務員(五九)はつらい胸の内を語った。
                               新潟日報 20年4月16日掲載


タクシー業界の過当競争が、熾烈を極めている。県内で特に深刻なのは、新潟市の市街地を中心に、旧豊栄市、旧亀田町などを営業圏とする新潟交通圏(県A地区)だ。
過当競争を引き起こしている最大の要因は、需要と供給のバランスが大きく崩れていることである。
タクシーは、二00二年の改正道路運送法施行による規制緩和がもたらした過当競争の典型例ともいわれる。業界の活性化とサービス向上が期待されたが、現実は労働条件を過酷なまでに悪化させた。こうした実情を、自由競争の結果と見過ごして良いのか。規制緩和の弊害に目を向ける必要がある。
                                新潟日報 20年4月16日(社説)

新潟市はハイヤータクシー協会によると、規制緩和直前の法人、個人合計台数は千六百六十四台だったが、今年三月末では新規参入や増車で千七百八十五台に増えている。一方、需要はこの二十年で半減した。平日に客を乗せている車の割合は20%程度に過ぎない。
売り上げの減少で、ピーク時に年平均四百万円ほどだった乗務員の年収は約二百五十万円と四割も低下している。手取り額を上げようと長時間労働が常態化し、年間労働時間は全国平均を上回る。労働基準法違反で改善指導を受けた会社もある。
さらに運賃の二極化と燃料費高騰が競争を一層激化させている。緩和策後、県内でタクシーが当事者となる人身事故は約一・五倍に増えた。安全を犠牲にした競争は本末転倒である。
国土交通省は昨年十一月、規制緩和後に台数が五割近く増え、著しく過剰となった仙台市を緊急調整地域に指定した。新規参入や既存業者による増車を一定期間禁止としたのだ。
労働条件悪化や安全性低下が懸念される札幌、長野など六地域は特定特別監視地域とした。だが、新潟圏はいずれも該当しないと判断された。
これらの指定要件は、緩和策が取られて以降の数字で判断される。新潟圏は仙台市ほどではない。しかし、2000年八月一日付の新潟運輸局長公示では、新潟圏は三百四十七台の過剰だと指摘している。
規制緩和前から著しく過剰な状態であったことを示す証左である。現在はその時点よりさらに百台以上多い。なぜ監視地域に該当しないのか。
今年に入り、業界は労使一体で県に供給過剰の解消を要望、泉田裕彦知事は国土交通省の作業部会で国に対策を求めた。議員立法の動きも出始めている。
市場原理の下で経営努力を行い、利益を上げることはもちろん大切だ。だが、自由競争の基盤が崩れていては元も子もない。タクシーは公共交通の一翼を担っている。国は地域の実情に即した対策に乗り出すべきだ。
                               新潟日報 20年4月16日掲載

「稼ぐドライバーは自分で開拓した固定客を持っていて、携帯電話に呼び出しが来る。固定客にはサービスで、降車前にメーターを早めに止めるんですよ」。新潟市の男性乗務員(52)はさらりと打ち明ける。やり手の乗務員は百人を超える固定客を持つという。
国の認可が必要なタクシー運賃が、深夜帯は一部で形骸化している。客との「契約」や交渉で決める違法ダンピング。新潟市から新発田市まで深夜料金で七千円以上かかるが、五千円や六千円で乗せると複数の運転手が証言する。名刺を渡して継続的な関係を築けば、お互いの利益になる。
供給過剰がパイの奪い合いに拍車をかけ、無秩序な営業が横行する。
「固定客を持たずにとても生活設計できない。交渉するお客さんも賢くなっている」。この男性乗務員は長距離乗車の上客を優先的に紹介してもらうため、なじみのスナックに通うなど営業努力も続けている。
低賃金を補う長時間運転も深刻化するが、最大拘束時間(一ヶ月二百九十九時間)違反に行政指導が入るのは氷山の一角とされる。
労働時間など一日の運行はタコグラフに記録されるが、「記録紙を途中で換えて長時間運転をごまかしていた」とある乗務員(三六)。さらに、運行をコンピューター管理するデジタルタコグラフや自動日報などの最新機器にも、裏技はある。
機器を採用する新潟市東区の会社の乗務員は「正規のメモリーカードで勤務した後、アルバイト用の裏カードに差し替える。超過営業部分は正規の日報に記録が残らない」と説明。元社員ら複数の乗務員も認める。
歩合給の同社では、強制はしないが希望者は黙認するという。昨年末、この社で深夜勤務中の乗務員(五七)が脳梗塞で倒れた。今年の年明けに運輸局の監査が入り、現在は裏カード使用は会社が止めているという。
ルール違反も辞さない一部業者の乗務員は高い稼ぎを上げる。一方で個人的な客取りや運賃サービス、最大拘束時間破りなどは一切禁じ、違反によっては解雇に踏み切る厳格な業者もある。
未明の新潟市古町。最大拘束時間には縛られず、運賃収入を上げているという男性乗務員(56)は言う。「われわれは会社員であっても基本は個人タクシーですよ。自分次第で給料を増やせるから面白い」
                 新潟日報 20年4月17日掲載

四十代でタクシー業界に転職してきたという新潟市の男性乗務員(五十)は、自らを「壊れた潜水艦」に例えた。「沈んでいくだけだから。世捨て人みたいなもんですよ」。苦笑いしながら言葉を吐く。
「兼業農家か髪結いの亭主でもなければ、まともな家庭生活なんて営めない。休みの日は寝て飯食って、せいぜい一円パチンコするくらい」。淡々とハンドルを切り、街路をすり抜けた。
タクシーの市場構造を変える方策を探ろうと、国土交通省が二月末に発足させた交通政策審議会の作業部会。三月末に東京で開かれた会合に泉田裕彦知事が出向いた。
新潟のタクシー事情を報告し「公共交通の補完や高齢化などから、地方でタクシーが果たす役割は極めて大きい。ドライバーが人間らしい生活を送り、誇りを持って働ける事業となるよう仕組み作りが必要」と力説。タクシーの供給過剰解消へ国政の対応を求めた。
需給の不均衡を正し、市場原理を機能させることが消費者利益になり、乗務員の労働環境も改善させる。作業部会ではこうした議論が続く。
部会の佐々木常夫委員(東レ経営研究所社長)は「基本的に規制緩和は推進すべきだが、タクシーの場合は需要が減って各地で運賃は上がった。誤りだった」と言い切る。「タクシーは暮らしにどうしても必要なものだ」と、規制を元に戻すことも選択肢と考える。
一方で、ただ単に再規制するだけではタクシーの構造的な問題は解決しないとする見方もある。
神戸大教授の小塩隆士委員は、法令順守できない業者を市場から退出させる仕組みが有効だと指摘。「市場メカニズムを機能させるための社会的規制(監査)の強化は、もともとの規制緩和の趣旨にも反しない。悪徳業者に厳しく対処した上で競争が図られればいい」と主張する。
ほかにも、業界労働組合は、タクシー運転免許制度や国家資格制度の導入など、乗務員の入り口を絞って台数抑制を図る手法を提案している。
運賃収入総体が年間百億円近くに上る新潟交通圏には、約二千五百人のタクシー乗務員が働いており、それぞれに家族がいる。乗客の命を預かる乗務員が誇りを持って働くことが出来る労働条件を保つことは、消費者利益にもつながる。
作業部会は現状改善への方向性を年内にまとめ、国交相に答申する。
新潟日報 20年4月18日掲載


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