3月4日 月曜日 のち
普通の人には見えないものが見えるわけではなく、霊感があるとは思っていないが、一度だけ「これは…」と思う体験をした。
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20代の終わりに母方の祖母が亡くなった。
血液のガンと呼ばれる白血病だった。
入院してしばらくは何で入院しているのか不思議なくらいに元気そうだったのが、抗がん剤治療を始めてから徐々に弱っていったように見えた。
そのうちに意識がなくなり、いよいよ危なくなって母や叔母たちと寝ずの番のため病室に泊まり込みをした。
その二度目か三度目の深夜、一瞬のうちに脈拍が下がって僕らが見守るなか、旅立ってしまった。
そのあと、ひと足先に病院からお祖父様の待つ家に戻ってきた。
確か、午前1時半頃だったと記憶しているが、近くに住む親戚や従兄弟たちも続々集まってきた。
危篤の報を受けて姉も東京から帰ってくることになっていたが、ひと足遅かった。
大人たちが御通夜や葬儀の準備に着手するのを何もできずに眺めていた、その僕の右斜め後ろのあたりに熱量というか、あたたかな気配を感じた。
祖母の誕生日から2日目だったか、雪のない年だったが2月の深夜で広い室内はヒンヤリしていた。
(もしかしてお祖母ちゃん、付いてきて傍にいる?)
そう直感した。
入院中に一度ポツリと「家に帰りたい…」と呟いたのを思いだした。
しばらくして病院から棺に入った(ここ記憶曖昧)祖母の亡骸が到着した。
(お祖母ちゃん、死んでしまったがけ…)
そう聴こえたような気がした。
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これが唯一、そうではないかと思う体験だ。