雨だった。
京浜急行の線路にこびり付いた血痕を洗い流すような、
雨だった。
―――――ガタァン!!!!
雷雨が、火葬場の天窓を穿つ。
光は射し込まなかった。
俺は床に倒れ込んだ。
「てめぇがもっとちゃんと診てやってりゃあいつは死ななかった!!!!」
「やめろ玲二!!」
俺の襟首に掴み掛かった玲二を、古瀬さんが必死に止めた。
「てめぇの所為だ!!!!人殺し!!!!」
「玲二!!聖先生の所為じゃ無い!!誰の所為でも無いんだよッ…!!」
玲二は狂ったように泣き崩れた。
俺への憎悪を剥き出しにした玲二の両眼は、怒りに血走っていた。
…治った筈の心臓発作が再発するんじゃないかと、
俺は虫の沸いた頭で、皆目見当外れな心配をしていた。
殴られた頬は痛まなかった。
感覚を拒絶するかのように、麻痺して。
「畜生!!厭だ!!直ちゃん!!!!!」
雨の…水の匂いと、
「うわあああああああああッッッ!!!!!!」
玲二の悲鳴と、
ほんの僅か残ったナオの骨の、白さ。
あの日覚えているのは、それだけだ。
それだけなんだ。
………それ以外は、
どうしても思い出せないんだ、ナオ。
京浜急行の線路にこびり付いた血痕を洗い流すような、
雨だった。
―――――ガタァン!!!!
雷雨が、火葬場の天窓を穿つ。
光は射し込まなかった。
俺は床に倒れ込んだ。
「てめぇがもっとちゃんと診てやってりゃあいつは死ななかった!!!!」
「やめろ玲二!!」
俺の襟首に掴み掛かった玲二を、古瀬さんが必死に止めた。
「てめぇの所為だ!!!!人殺し!!!!」
「玲二!!聖先生の所為じゃ無い!!誰の所為でも無いんだよッ…!!」
玲二は狂ったように泣き崩れた。
俺への憎悪を剥き出しにした玲二の両眼は、怒りに血走っていた。
…治った筈の心臓発作が再発するんじゃないかと、
俺は虫の沸いた頭で、皆目見当外れな心配をしていた。
殴られた頬は痛まなかった。
感覚を拒絶するかのように、麻痺して。
「畜生!!厭だ!!直ちゃん!!!!!」
雨の…水の匂いと、
「うわあああああああああッッッ!!!!!!」
玲二の悲鳴と、
ほんの僅か残ったナオの骨の、白さ。
あの日覚えているのは、それだけだ。
それだけなんだ。
………それ以外は、
どうしても思い出せないんだ、ナオ。