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おもちゃ病院さど Doctor_Rの治療カルテです。

ソーラーまねき猫が来院しました。

【申告】

 まねき猫の腕が動かなくなりました。

【診察】

 ソーラーパネルの電力で左腕を招き動作をする猫です。ソーラーパネルは剥きだしで配線が出ています。おそらく購入時には、右手には小判を持ち座布団に座っていたのでは?と確認しましたが、この状態とのことでした。

 ソーラーパネルのガラス表面には割れがあり、ソーラーパネル裏面のガラス面電極も剥がれていますので、同等のソーラーパネルを探す必要がありますが調達ができるか調査が必要です。

 

 まず、ソーラーパネル発電電圧も2本の配線の極性もわかりませんので、内部を開けてヒントを探します。

  

 左腕は、振り子になっています。コイルを挟むようにマグネットが配置されています。

 

 コイルの線経は、おそらく数十ミクロンと思われ、数千回は巻かれているように思われます。基板には、1000μF、33μFのコンデンサの他トランジスタと抵抗器で構成されています。近頃見ることのない made in japan 製です。

 ソーラーパネルからの配線の極性は基板のコンデンサから判明し、コンデンサの耐圧値が6.3Vなので発電電圧は2V~3Vと予想しました。

 ソーラーパネルは、おもちゃ用に作られたものなので入手することが出来ませんでした。持主さまに相談をしたところ、何としても動くようにして欲しいとの希望があり乾電池駆動に改造することになりました。

 そこで、入力電圧がいくつにしたら良いのか実験をしました。ユニバーサル電源を接続してピーク電流値と腕の振りの状態を観測しました。

 

 結果として、1.8V~2.0Vが適正値である事がわかりました。

 基板の回路は次のようになっていました。

 乾電池の電圧値は使用するにつれて電圧値は下がって行きますが、1.8V~2.0V出力の定電圧回路が必要です。乾電池駆動なので高い電圧は望めませんし消費電流は出来るだけ押さえる必要があります。LDOリニアレギュレータは、入出力電圧差は1V程で済みます。手元にあるのは、出力電圧が2.5Vのものです。必要な最低入力電圧は

2.5V+1V=3.5V

となります。

 他方乾電池は、1.1Vまで使用できるとして

3.5V/1.1V≒3.2(本)

となり、厳密には3本では不足しますが効率を考えて3本とします。

 手元にあったLDOシリーズレギュレータは2.5V出力なので1.8V~2.0V程度にさらに降圧する必要があり、ダイオードの順方向電圧降下を利用して降圧することにしました。結果的に整流ダイオードとショットキーバリアダイオードを組み合わせて2.0Vにすることが出来ました。

 定電圧回路基板、電池ボックスと電源スイッチをケースに組み込みまねき猫からの配線を2芯ケーブルに替えて接続しました。

 

 この時の出力電圧の変化の様子です。やや下がっている時が1000μFのコンデンサが放電してコイルに電流が流れるときです。

 これで、まねき動作を継続動作することが出来ました。乾電池は、12秒毎にピーク値で4mA弱流れるだけです。コンデンサに充電している時以外は、LDOレギュレータの消費電流はほぼないと言って良い状態です。

 

 最後に整形治療です。化粧直しをしました。

【治療後記】

 初めてのソーラーパネルを利用したおもちゃの治療でした。

断続的にコンデンサに貯まった電荷からコイルに電流が流れ電磁石となり、コイルを挟むような位置関係にあるマグネットを引っ張る?(反発する?)で腕振りに力を加えます。その後は、腕は振り子として前後に動いているだけです。ブランコにのっている小さい子の背中を時々押す親のように。

 

【おまけ】

LDOレギュレータ:Low Drop out レギュレータとは入出力電圧差が小さくても動作できるリニアレギュレータを指します。

リニアレギュレータとは、変動する入力電圧源や入力電圧より低い一定の電圧を出力することができます。LDOレギュレータは、入出力電圧差が小さいため発熱を抑えられたり、エネルギー効率を上げることができます。

 

右まねきと左まねき猫

 一般的に、右手をあげたものは金運を呼び込み、左手をあげたものはお客を呼び込むとされています。

 

我が家の猫と記念撮影です。

  

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